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晴れ時々姉

《校門前》


俺と圓城は探偵部を出て家に帰っていた。



「じゃあ、週4!」


「却下。」


「ん〜、週3!」


「拒否。」


「週2!……少しならエッチな事していいから。」


「是非!…間違えた。駄目だ。」


「なんでですか!」


「俺も男なんだよ⁉︎」


女の子にマッサージなんて平静に出来るか!


「……少しは意識してくれてるのか。」


「あ?なんだって?」


「いえ、なんでもないです。」


そう言って圓城はずんずんと先に歩いていく。


「…たく。なんなんだよ。」


「天野くん。」


「お?」


急に後ろから声をかけられ振り向く。


「…山下さん。」


「偶然ですね。今、帰りですか?」


「ああ、山下さんもか。」


「はい!…あの、一緒に帰りませんか?」


「ん?いいよ。…あ、ついでに家に来いよ。」


「はい。え?えええ!!!」


「…なんで驚く。ほら、前に山下さんが読んでみたいって言ってたミステリー本があるだろ?」


「は、はい言いましたね。でもあれは出版数も少ない幻と言われている本で。オークションとかで200万とか値段がついてるんですよ。」


「あれ、家にあるから。」


「えええ!!!」


「姉さんが持ってるんだよ。前に聞いたら貸していいよって言ってたから今日、直接借りれば?」


「あ、あ、あ、ありがとうございます!」


「姉さんに言ってくれ。」


「はい!」












《自宅前》


「天野くん、お姉さんがいたんですね?名前はなんて言うんですか?」



「ん〜。羽衣。天野羽衣(あまの・はごろも)っていうぞ。俺はハゴ姉って呼ぶ。」


「私は姉御と呼ばせてもらってます。」


「な、なぜ圓城さんはそんな呼び方を、」


「え?何故って、それは姉御が私の尊敬する、憧れの人ですから!」


…圓城は実はハゴ姉の大ファンだ。


「そ、そんな凄い人なんですか?」


「もちろん!私を周りは天才と呼びますが、姉御に比べたらまだまだです。月とすっぽん、スライムと魔王です。」


「え、圓城さんでもそんなに離れてるんですか?……私なんかいったいどれくらい。」


「ハゴ姉と比べても仕方ないよ。…もう色々ぶっ飛んでいる人だから。」


「は、はぁ。」


「まぁ、会えばわかるよ。本好きだから山下さんとは気が合うかもしれないぞ。」


俺は玄関の鍵を開ける。



「そ、そうですか。… それにしても、天野くんのご両親って凄いネーミングセンスですね。」



天野川と天野羽衣



「そうか?あ、でも俺は違うぞ。俺は…」


「川。遅かったな。」


「おわ!」


玄関を開けたら目の前に姉が仁王立ちで立っていた。


「な、なんでドアの前で仁王立ちしてるんだよ⁉︎」


「川がそろそろくると思って。…マッサージしてくれ。」


「どんだけ待ち遠しくしてんだよ⁉︎」


後ろから小さな声で「わかる!」と聞こえてくるが無視だ。


「悪いけど今、人が来てんだ。後にしてくれ。」


「……陽奈か?」


「ああ、それとあと1人友達が来てる。……前に話した本を読みたいって言ってた人だ。」


俺は玄関のドアを広げる。


「おっ久しぶりです!姉御!」


そこから圓城がハゴ姉の胸に飛び込む。


「…久しいな、陽奈。」


「はい!……また、大きくなりました?」


胸に顔を埋めたまま圓城が尋ねる。


「少しな。」


「…何かコツとかありますか?」


「揉まれると大きくなるらしい。……こいつに。」


そう言って俺を指差す。



グワッ!


圓城の首が180度曲がり俺を見る。……恐ろしい目で。


「…川君?」


「待て!圓城落ち着け!首が凄い事なってる⁉︎」


「…その手は夢と希望が詰め込めるんですか?」


「何を言ってるかよく分かんないが!恐らく勘違いだ!」


「私には!私のは大きくしてくれないんですか⁉︎もう好きに触らせてあげますから!」


「だから勘違いだ!肩!肩しか揉んでないぞ!」


「嘘です!それだけでこんなには!……くぅ!」


圓城がハゴ姉の胸を指差しながら手で目を覆う。……眩しいのか?



「本当だ、陽奈。肩だけだ。」


「姉御が言うならそうなんですね。」


「俺も言ったよね⁉︎」


なんだこの違いは!


「……そういえば山下さんは?」


そう聞くと圓城がドアの向こうを指す。


「あそこで硬直してる。姉御を見て。」


見ると顔を真っ赤にしてハゴ姉を見る山下さんがいた。


「おーい。大丈夫か?」


「…………はっ。天野くん!天女がいました!」


「うん落ち着け。うちの姉だ。」


…ハゴ姉に会わせるとみんなこうなるな。



「あわわ、こんな綺麗な人がいるなんて!圓城さんを天使と呼ぶならお姉さんはまるで女神です!」


「どんだけ褒めてんだよ。普通だろ。」


確かに美人だと思うけど。


「……圓城さん。天野くんは見慣れてるからこんな事を言えるんですかね?100人いれば100人振り返る程だと思うんですけど。」


「言いたいことはわかります。川君の美的感覚がおかしいんです。美女と案山子です。」


二人で俺を馬鹿にするように囁く。


「失礼な。なぜ案山子だ?」


「姉御を前に野獣にならないなんて不能か案山子です。猿以下です。」


「本当失礼だな!」


俺だってドキドキくらいするわ!


「…ふぅ、あの、初めまして、山下杏奈と言います。天野くんのクラスメートでいつも仲良くさせてもらってます。」


やっと落ち着いたのか、山下さんがハゴ姉を見て挨拶をする。…膝は若干震えているが。


「……そうか。山下、私は天野羽衣と言う。本好きなのだったな。すぐに持ってこよう。」


「ありがとうございます。」


そう言ってハゴ姉は自分の部屋に向かう。…だが、途中で止まり俺を見る。



「…しかし、いい身分だな川。本で女を釣って家に誘い出すなんて。いつからそんなタラシになったんだ?」



「え?」


「……。」


山下さんが驚く。圓城は右手を頭に置いてなにやら悩みだした。


「ちょっ、ハゴ姉。いきなりなにを言ってるんだ。そんなわけないだろ。」


「ふん、どうだかな?…それと私を姉と呼ぶなと何度も言ってるだろう。忘れたのか?」


そう言ってハゴ姉が俺を強く睨む。



「…悪い、……羽衣さん。」


「え?なんで駄目なんですか?いいじゃないですか姉と呼んだって、兄妹なんですよね?」



「あ、山下さん。」


圓城が山下さんに近づく。


「……? 何ですか?」


「…そのですね。」


「川を兄妹と思った事は一度もない。」


「……。」


「川とは血が繋がってないからだ。……こいつは養子だ。」


「……え。」


「……。」


「私はこいつを家族として認めてない。父が勝手にやった事だ。最低限の行事には沿うがそれ以上深入りされても困る。」


「…まぁ、分かってるよ羽衣さん、こっちは親父さんのご好意に甘えてるだけだから。」


「そうか、なら一応確認しておくが憶えているか?…条件付きだぞ。」


「ああ、俺が18になったらこの家を出る。……籍からも外してもらう。」


「そうか、ちゃんと憶えているならいい。では本を……陽奈、お前も来い。話を聞こう。」


「…はい。」


そう言ってハゴ姉は本を取りに行った。その後を圓城も追っていく。





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