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時季外れのサンタ。

《マンション7階》


「…俺はこんな変死体、刑事になって初めて見ました。」


刑事の男性が呆れるように呟く。


この部屋で死んでいる三人の家族。無職の旦那に浮気の激しい妻と小学生の子供だ。家族同士あまり仲が良いとはいわず挨拶をする交友関係もなかったので死体の発見に遅れてしまった。


「しかし、今は5月だぞ?なのになんでまだツリーが飾られてるんだよ。」


季節的にも蒸し暑くなってきた。死体発見の原因も異臭を訴えられてだ。だが、この部屋は5月とはとても思えない光景だった。クリスマスツリーが飾られ周りには装飾が施されて三人の家族はテーブルを囲うように椅子に座り、その上には豪勢な食事が並んでいた。


「…おそらく殺されたのが12月だからですよ。」


もう一人の刑事が言う。


「…おいおい。それはいくらなんでもないだろう。5か月も放置されてたら死体はもっと腐ってるはずだろ?見ろよ、この死体の綺麗さを。ついさっきまで生きてても不思議じゃない。」


刑事の言う通りこの死体はまだ腐りもしていない。異臭も実は料理から出ているものだった。


「…そうですね。綺麗すぎます。……お腹の中も(・・・・・)


「あ?……げっ!」


三人の死体の腹の中は臓器が抜き取られていた。…キレイすっきり。


「この家族は腐らないように腐りやすい臓器を全て抜き取られまるでミイラのようにされています。おまけにエアコンをつけっぱなしにしてドアも閉められていました。そうそう、臭いも出なかったんでしょう。」


「じゃ、じゃあ犯人は臓器を盗んで行ったって事か。」


これだけのことをして臓器だけを。


「…いえ、犯人は何も盗んでません。」


「いや、だってないだろ?」


「ありますよ。…そこに。」



刑事が指を指す。








テーブルの真ん中の料理を。…全てが肉料理だ(・・・・・・・)



「……ハンニバルかよ。この犯人はどんだけ気が狂ってるんだ?どんな奴か見当もつかねぇ。」


「どんな奴……きっとサンタクロースですよ。」


「…お前も何を言ってんだ?」


「だってそうでしょう?12月にこんなプレゼントを贈っていく奴なんてサンタくらいなもんですよ。」


「馬鹿なこと言ってんじゃねぇ!ふざけてんのか!そもそもまだ12月と決まったわけじゃないだろ!」


「…別にふざけてませんよ。ほら、これ見てください。」


刑事が一枚の画用紙を渡す。


「あ?これが何だよ。」


「これ、子供が持ってたんですけど。どうやらサンタクロースへのお願い事だったみたいですよ。」


見ると、そこには子供の描いた父と母と子供の3人が笑ってご飯を食べている絵だった。


「きっと、いつも一人でご飯を食べている子供がクリスマスくらいみんなで食べたいと描いたやつなんだと思います。」


…絵と今の光景を見比べる。……確かにそっくりだ。



「だからって何か?わざわざ子供のためにこの絵の通りに願いを叶えに来たってのか?その狂ったサンタは?」


「はい。」


「そんなわけないだろ。それとも何か?証拠でもあるのか?」


「ありますよ。その裏に。」


「あ?」


刑事は紙を裏返す。


「……。」


確かにあった。


血文字で。


画用紙の裏にデカデカと書いてあった。



















メリークリスマス



と。
















《探偵部》




「はぁ、平和だね〜。」


俺は探偵部のソファーでゴロゴロしなから呟いた。


「…それは川の頭の中だけだ。」


圓城が資料を作りながら言う。今は二人きりだ。


「…なんだよ。口悪いな。」


「川がアホなことを言うからだ。この忙しい時に、暇な自分を恥じて死ね!」


「言い過ぎだろ!もっとオブラートに包めないのか!」


「川の頭の中にミツバチをぶち込んだら美味しいハチミツができそうだな。」


「遠回しに言えってわけじゃない!」


そんなにお花畑じゃないし!


「…資料を作ることも出来ないくせに暇そうにしてるからだ。」


「…うっ、悪い。……肩でも揉もうか?」


俺は圓城の肩に手を乗せる。


「ふん。そんなに凝ってないし、川にされたらエッチな事しそうだから大丈夫だひぃややああ〜ん⁉︎」



圓城が机に突っ伏した。


「あ、あん♪……ってなんだ!その上手さは!」


だが、すぐに起き上がり俺の方に顔を向ける。若干、顔が赤い。


「あ?いや、毎日ハゴ姉にマッサージしてるからこれくらいは嫌でも覚えるよ。」


「ま、毎日だと⁉︎……羨ましい。」


「ハゴ姉はめちゃくちゃ凝ってるからな。圓城は、確かに全然凝ってないな。」


「…姉御は最近家に帰ってきてるのか?」


「ん?ああ、今は色々落ち着いたみたいで、だいたい6時には帰ってくるよ。」


「そうか。……久しぶりに姉御に挨拶をしに行くか。」


「そうしろ。きっと喜ぶぞ。」


「そして、少しばかりお知恵を拝借させてもらうか。」


「なんだ?事件か?」


「まぁな。今回ばかりは……少しどう動くか迷ってな。」


「…お前が困るなんて大概だな。」


「あぁ、学校全体を巻き込んでいいかわからなくてな。」


「いったい何する気だ⁉︎」


「今はまだ言えない。」


「……。」


「…ちなみになんだが、川。」


「なんだ。」


「毎日とは言わないが私にも……マッサージをしてくれないか?週6くらいで。」


「断る。」









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