吸血鬼セカンド
《使われない音楽室》
この音楽室は使われない。器材がないわけでもなく、防音などもしっかりしている。…なのに、使われない。噂もない、誰もいないのに音楽が鳴り響くこともなく、楽器が呪われてることもなく、バッハもモーツァルトも動かない。…だけど、使われない。
「…よかった。本当に普通の七不思議だ。」
「…そう。」
音楽室までの道を二人で歩く。
「まさか、番号の相手が山田さんとは思わなかった。」
「…私も。」
彼女は必殺技愛好会部長だ。…ちなみに轟からすごい目で睨まれながら何やら口を動かしていたがあいにく読唇術は会得してないのでわからなかった。
「少し意外だ。肝試しに参加するように見えなかったから。」
「…幽霊にも効くか試そうと思って。」
どこまでもらしい人だ。
「最強には勝てたか?」
「…今、特訓中…あの技はかなり難しい。」
「いや、楽勝だろ?」
縮地や無空波すら軽々使える奴が今更何を言ってるんだ。
「キスして押し倒しちまえ。…山田さんにされたら大抵の男はそのままされるがままだから。」
倒したら惚れてくれるなら、…問題ないだろう。
「…む、難しい。いざ、やろうとすると相手の目が見れない。」
「大丈夫です。基本的に目を閉じてするものだから。」
「…しょ、照準が…」
「経験でカバーしろ。」
「…初めて」
「…戦闘経験の方な。」
「……あぅ。」
どうやらまだらしい。山田さんと話しながら歩いていたらもう、音楽室の前まで来ていた。
「さて、着いたな。…確か音楽室に入って大声で叫べばいいんだよな。」
「……。」
返事はないが首をこくこくさせている。…まだ恥ずかしがっているみたいだ。
俺たちは扉を開ける。…そこには。
「やぁ、来たね。」
そこには、電気もついてないその部屋に幼いと言っていいほど小柄な小学生くらいの白髪の少年が1人立っていた。
「君たちかい?僕をここに呼んだのは?」
なんだこの子は?…白髪の少年?たしかノートにそんなこと書いてあったな。
「…吸血鬼か⁉︎」
こいつが、…てか呼ばれた?
「僕はあの男を殺さないといけない。そして、みんなを返してもらう。」
…何を言ってるんだ。
「君は僕を呼んだ奴と違うのか?あの男がどこにいるか知らないのか。」
…まったく話についていけない。圓城から何も聞いていない。
「しらない。」
「…ならいらない。」
そう言って白髪の少年は俺に近づいてきて
ゴシュ!
…俺の腹に風穴を開けた。
「あ、あぁ。……ゴフッ。」
俺はそのまま膝をつき倒れる。
「キャアアアアアアアア!!!!」
山田さんの悲鳴を聞きながらとりあえず大声で叫んだな。とか意味のわからないことを考えていた。