吸血鬼2
しばらくして帰ってきた蒼夜が持ってきたのは何百冊ものノートだった。
「圓城、お前の言った通りだった。あそこが犯人の誕生した場所で間違いない。」
「他に誰かいましたか?」
「いや、あそこには…人はいなかった。」
「そうですか。…見つけるのはこのノートの主か、それとも犯人か。どちらが早いですかね?」
圓城はノートを読みながら何やら黙ってしまった。俺も読んでみる。…日記か?
「……。」
なんだよこれ?
「…おい、圓城。これを書いてる奴は正気か?夏休みの虫の自由研究を書いてるノリだぞこれ。」
「…うまいこと言いますね。まぁ、狂ってますね。聞くまでもなく。」
何百冊あるだろうノートの半分は攫った事と死んだ事しか書いてない。…これをただ繰り返したのか。いったいどんな気持ちでやってたんだ。そして、いったい何人が犠牲になったんだ。
「日記によればこの攫われた子供達は少しずつではありますけど変化が起きてきてますね。…この変化が現れるまでに5〜6年といったところでしょうか。」
「その5〜6年間ずっと死に続けてきたのか。」
「いえ、逆です。5〜6年間生き残った子供達が変化したんです。」
「…は?だって、死んでたんだろ?そもそも生きられるはずがないだろ?…だって、」
「…環境がそうさせたんですよ。音のない真っ暗な部屋で、食べ物もなく、いるのは自分以外にもう一人だけ。心の拠り所になるのに時間はいりません。そして、どちらか片方が死ねばドアが開くんです。まだ年端もいかない子供にいったい何が起きると思います?」
「……。」
「蠱毒、巌窟王、そして、吸血鬼ってとこですか。…悪趣味すぎますね。」
「この日記に書いてあることが本当に起こったと思うか?ありえないだろ。」
「…それはわかりません。ですが、吸血鬼事件が起こりこのノートがあります。…あり得てしまう可能性はなくはないんです。」
「……。」
「…今回はかなり危険です。すでに、人じゃない可能性があり。怪我じゃ済まないと思います。」
「いや、調査する気満々だが、この犯人を見つけられるのか?」
こんな奴放って置けない。
「…襲う人数が多すぎなんです。捕まえてくださいと見つけてくださいと言ってるようなものです。恐らくわざと、…待ってるんですよ誰かを。」
「じゃあ、見つけることは。」
「出来ます。そして、今夜…この学校で。」
…気合を入れないと。……ん?
「え?この学校で?」
「はい。」
「な、なんで?」
「今夜、新月の日に生徒会のイベントで肝試しがあります。…自主参加の。」