馬鹿と天才は紙一重
《電話》
「圓城、月宮が入部することになった。」
「…うん?なにがあったの?」
「トランプで勝った。」
「…なにがあったの⁉︎」
《探偵部部室》
「…隠しカメラの映像だと確かに川が勝っているな。」
「いや待て。何故そんなものがある?」
「こっそり付けた。」
…この様子だと他の部室にもあるな。
「…プライバシーって知ってるか?」
「大丈夫、使う所は心得ている。」
「頼むから悪用しないことの方を誓ってくれ。」
「大丈夫。」
「…大丈夫の意味は肯定でも否定でもないからな。」
「それより川。お前、月宮のサトリを封じたのか?」
「それよりじゃ……分かるか?」
「当たり前だ。じゃなきゃ、お前のイカサマに月宮が気付かないはずがない。」
そう言って圓城はビデオの一部分を指差す……バレバレか。
「月宮のサトリを封じるなら私だったら並列思考を4つ同時に使って読ませなくすればいい。姫星なら人格2つを交互に切り替えて読めなくする方法もある。」
…こいつら、やっぱり凄え。
「それ以外の方法で月宮のサトリを掻い潜るなんて、いったいどうやって?」
「…そんな難しい方法じゃないぞ?月宮のサトリは相手の思考を読めるってだけだろ。ようは今考えていることしか読めない。だから、…怒ってみた。」
「…なるほどな。人間は喜怒哀楽の感情を出している時は基本的に物事を深く考えない。意識から無意識に変える。…そういうことか?」
「うーん?そこまで難しくしなくてもいいんだけど。ほら、カンニングする時とか浮気する時とかイカサマする時とかさ、隠そうとしても不安とか焦りとかそういうのが出ると色々考えてしまうだろ。俺なんかすぐに顔に出るから心を読めなくてもバレそうだし。」
「月宮相手には一瞬だろうな。」
「ああ、だから不安とか焦りとかが出ないように思考自体を怒りで固定したんだ。…幸い怒る理由はわんさかあったから。」
ほら、怒りで周りが見えてないとかよく言うだろ。ようは怒りで視野や思考が狭くなるって事だ。だからそれを逆に利用して怒りで視野や思考を一点に纏めたんだ。…余計な事を考えないように。」
「物事を深く考えないって事か。…普段からしてる川の得意分野じゃないか。」
「普段からしてねぇよ。まぁ、それで月宮に対して怒っている時にカードをすり替えたりしてみたわけ。」
「…確かに一定レベルまで感情を高めれば心を読まれない可能性が出るかもしれないが。読まれる可能性だってあるだろう?月宮のサトリは3人まで同時に読めるという前提なら川の怒り程度で誤魔化せるとは思えないが。」
「それは大丈夫。…ちゃんと確認してしたから。」
「…どうやって。」
「…月宮判に。」
「…なるほど。」
判の月宮と今まで過ごした中で考えを読まれなかった状況、感情、人数、思考。何も考えずテレビを見ている時、姉の食べ物を無意識で食べた時、彼女の事を考えている時。あらゆる可能性を聞いて月宮のサトリはそこまで完璧じゃないと知った。
「だから、対月宮用にやり混んでいたこのゲームを今作ったと言った言葉を信じ。だから、初めてのゲームだと言ったのに何も考えずに慣れでカードをめくる俺を不審がらない。だから、ポケットから出してめくったように見せたJOKERやめくったカードに何のカードか分かる目印を付けるイカサマを考えなくても当たり前のように行なう俺に気付かない。だから、絶対に負けのないクソゲーだと知ってる俺に勝負を挑んだ。…ま、つまり月宮は俺の勝負を受けた時点で負けてたわけだ。」
「流石は川だな。」
「褒めてないよね?」
「人類のボソボソごにょごにょ天才だ。」
「間に何を入れた⁉︎」