神経ポーカー
「…何それ?初めて聞いたわ。」
「今作ったゲームだからな。姫にダウトで勝つお前に勝つなら少し捻らないとな。」
《神経ポーカーのルール》
最初は神経衰弱と一緒、バラバラにしたカードを裏にして広げる。ただし、そこからめくるカードは同じ数字2枚じゃなくポーカーの役5枚だ。ワンペアとかツーペアとか
裏にされた全てのカードの中から選ぶわけ、で5枚めくって役が出来なかったらめくった5枚をまた裏に戻して次は相手が5枚めくる。これを役が出来るまで繰り返しお互いが役が出来たらそのカードで勝負。
後の人は前の人が開いたカードを憶えていればその分強いカードの役を作りやすいってこと。
そして5枚取ってワンペアでも役が出来てしまったらそれで勝負になる。ポイントはいかに役を作らず強いカードを探すかが勝負になるわけ。ちなみにジョーカーはオールマイティ。…ジョーカーが出た時点で役が完成するから色んな意味でジョーカーだ。
「なるほどね、一応勝負するためのゲームは考えてきたわけね。」
「…お互いが知らないカードを知り合える。そして、心を読んでも意味がない。運と記憶力の勝負。…これならお前とでも勝負になるだろ?」
「…それでも私が勝つわ。」
「負けるつもりはない。」
「…一回勝負で?」
「いや、三回勝負。二勝したほうの勝ちだ。」
「わかった。」
「じゃあ、俺が先行で。」
5枚カードをめくる。わかりやすいように手前の横5列。
♥︎4 ♠︎10♥︎2♦︎7♦︎1
ノーペア
…良かったバラバラだ。
「運がいいわね。」
そう言って月宮もめくる。
♠︎5♥︎5♦︎5♠︎8♣︎8
フルハウス
「私も運が良いみたい。」
「馬鹿な⁉︎」
そんな事があるか?いきなりでフルハウスかよ。…だが、このゲームの良い所は役が揃わない限りカードを何度でも取り替えられることだ。
俺は新しくカードをめくる。
♣︎3♥︎8♦︎K♦︎J♥︎3
ワンペア
「くそ!」
「まずは一勝。」
そう言って開いたカード10枚を彼女が取った。残りカード43枚。
「今度は私が先行で」
月宮がカードをめくる。
♥︎9♥︎6♣︎A♠︎K♣︎7
「…嫌なカードをひいた。…確かにこれは難しいわね。」
「…俺もひくぞ。」
♠︎2♣︎4♠︎Q
…このゲームはフラッシュやツーペアくらいなら簡単に作れる。相手や自分のめくったカードを憶えていれば10枚以上の中から役を作れるのだから。
♦︎6♠︎7
ノーペア
…だからまずい。
「ふふ、ありがとう。」
月宮は自分の記憶と俺の記憶を共有出来る。
♦︎7♠︎7♣︎7♥︎6♦︎6
フルハウス
「これで二勝かしら?いえ、圧勝ね。」
…いちいち人を煽ってくる。
「…まだだよ。」
…汗がやばい。フルハウスより上って何だっけ。
「フォーカード、ストレートフラッシュ、ロイヤルストレートフラッシュね。」
「だから心を読むな!」
「これが私よ?何がいけないの?あなたはこれがつまらないと言うけど…何もわかってないじゃない。」
「……。」
「相手の心を読めればお互いが傷付かない方法も自分が不幸になる心配もなくなるじゃない?それを貴方が止めたい理由はただの嫉妬。…自分にない物を持つ周りをただ僻んでるだけなのよ。」
「……。」
「貴方の周りにはそういう人が多いものね?圓城、姫星、黒野…凡人にはとてもかないそうにない人ばかり。その中にいて貴方がキツイのは分かるわ。でも、貴方にはその人達の辛さはわからない。それなのに普通になれ。普通でいろとか本当に何様なの?」
「…べつに、そんなつもりは」
「貴方がしてることはそういうことよ。はっきり言って私達にとって貴方は…いないほうがましなのよ?」
凡人なら凡人と仲良くしなさい。
そう、言われてもいないのに心に響いた。
カードを一枚めくる。
JOKER
「……。」
「あら、これでこのターンで終わりね。」
……。
まだだ。
もうちょっとだけ、
俺はカードをめくる。
♣︎A♦︎A♠︎2♥︎2
フルハウス
「…たしか、同じ役なら数字が強い方の勝ちだよな。」
「そうね。…よく憶えてたわね。」
「…適当にめくった。」
俺はカードを10枚取り出す。残りカード34枚。
「…運が良いじゃない。…でも次は私が勝つわ。そして、貴方のような人間と関わるのもこれで最後にするわ。」
「…月宮はさ、人がなんでクイズをするか知ってるか?」
「…いきなり、何?」
「いや、なんでもない。俺が先行でいいか?」
「ええ、」
…俺はカードをめくる。
♠︎J♠︎A♦︎4♣︎6♠︎3
ノーペア
「…月宮の番だ。」
「……。」
「…月宮?」
「…くふっ!あははは!天野、貴方の負けよ。」
月宮はカードをめくる。
♠︎10♠︎J♠︎Q♠︎K♠︎A
ロイヤルストレートフラッシュ
「……。」
「言ったでしょ?私はカードゲームで負けないって!さあ、負けを認めて!」
「まだだ。」
カードをめくる。
♦︎Q
「ちょっと!もう勝てるわけないでしょ!」
♥︎9♦︎4♣︎6♠︎3
ノーペア
カードを裏に戻してまためくる。
♣︎K
「……。」
♥︎9♦︎4♣︎6♠︎3
ノーペア
またカードを裏に戻してめくる。
それを繰り返す。
一枚ずつ丁寧に。知らない白紙を塗りつぶすように。
ノーペア
ノーペア
ノーペア
ノーペア
ノーペア
「……。」
「ちょっとやめなさいよ!」
「流石、適当に考えたルールだ。これは絶対に負けないクソゲーだな。…どうした?」
「こんなの卑怯よ!」
「お前はルールをこちらに任せて納得した。なのに今更駄目だと?」
「だって!」
「カードなら絶対に負けないと言っただろ?なら、諦めろよ。」
「っ⁉︎」
「お前は人を信用しすぎだ。」
「な!誰が信用なんて!」
「自分の能力に自信があるせいで相手の心を疑わない。」
「そんなの当たり前じゃない!今までこれが間違ってたことなんてないんだから!」
「だからルールに対しても、俺に対しても深く考えず行動してんだよ。」
「くっ!」
「…わからないことを自分で調べないから知った時の喜びを知らないから、判は俺に言ってきたんだよ。特別になれない普通からも抜け出せない姉に出来ないことを教えてくれって。」
「…必要ないわよ!」
「その能力があればか?…月宮、悪いがお前のサトリって…」
「…意外と穴だらけだぞ。」
「なっ!」
カードをめくる。
JOKER
「…やっときたか。」
「…あ。」
「月宮、ロイヤルストレートフラッシュより上って」
知ってるか?
♥︎4♦︎4♣︎4♠︎4
ファイブカード
「俺の勝ちだ。」