出来るわけがない!
《占い愛好会部室》
俺は大久先輩とのクイズを終えてさっき別れた月宮の所に来ていた。
「……。」
月宮は机の上で占いでもしているのかじっと水晶のような丸い玉を見つめていた。
「何を見てるんだ?」
「…別に、考え事よ。」
「…判の事か。」
「…そんなとこ。親にとっても私にとっても家族が1人、家からいなくなるんだから。」
…当たり前か、圓城たちの前ではあんな捻くれた事を言っててもやはり、態度に出さないが相当辛いーー
「…その分、お小遣いが増えたりしないかとか溺愛して色々買ってくれないかとか。そんな事を、」
「ことじゃ無かった⁉︎」
そこは家族が減ってしまう事による悲しみとか何気ない事で弟がいない事に気づく寂しさとかに浸ってろよ!何でそんなに自分にとって理想的な未来を思い描いてんだよ!
「現実主義だから。」
「心を読むな!」
まったく!おちおち会話も出来ない。
「……何しに来たの?」
「ん?お前に会いにきた。」
「…そうじゃなくて用件は?」
「…判から頼まれたんだ。」
あの夜、判から二つ依頼を受けた。
一つは彼女の家族に、大久伊沙との関係と過去を。
そして、もう一つが自分の家族に、月宮円に心を読まない関係と先の見えない未来を、
頼まれた。
「…ふーん。あのバカはやっぱり私が読めること知ってたんだ。」
「だから読むなって、…月宮にとっては大きなお背はかもしれないけどさ、」
「まったくもって。」
「でも、そんな関係じゃ、お前だってつまらないだろ?」
世の中には知らないほうが面白い事や気付かないほうが幸せな事だってあるんだぞ?…テストの点数だったり、寝坊した朝の起きた時の時間だったり
「…はぁ、天野。悪いけど、あんた勘違いしてる。判になんて言われたか知らないけど、私にはちゃんと夢があって目標もあるの。」
「え?」
「私はね、この学校を卒業したらアメリカに行くの。」
「は?」
「そこでカジノで億万長者になるの。そのためにポーカーなんかのカードゲームはそれなりに練習してほぼ負けなし。…このサトリの力ならそれが出来るし、後は豪邸でも買って素敵な遊んで暮らせる人生を歩むつもりなの。お金集めもそのための資金源。ね?ちゃんと考えてるでしょ?」
夢がでかすぎる!
「それでも現実的よ。…あなたの言う戯言よりね。」
「……。」
「わかったなら、もう帰ってくれる?正直、あなたといてもメリットがないの。」
…厳しい。確かにその通りであるのは間違いない。…だけど、
「…メリットがあればいいのか?」
「…はっきり言うわ。天野、私はあんたみたいなのが一番嫌いなの。何も持ってないくせに何も知らないくせに普通のくせに人に頼らないと何も出来ないくせに…そんなあなたが私、…いいえ圓城さんや姫星君のような人間に関わってほしくない。そうやって口だけの人間には、…それとも私達にあなたは何か出来るのかしら?」
ブチッ!
…何かが弾ける音がした。
「…あるぞ、お前の語る夢が叶わないと教えてやれる。」
「は?」
つまり、トランプだったら負けないと思い込んでる。…自分は特別だと勘違いしてる残念な人間を俺は負かせると言ってるんだ。
な?充分メリットがあるだろう?
「…口だけも大概にしてほしいわね。」
「まだ何も言ってないけど?」
「…ちっ!…じゃあ、勝負しなさい。あの時と同じ、ゲームはあなたに選ばせてあげる。…ただし、もし負けたら、私に払う金を倍で今すぐに払い二度と私に近づくな!」
「…クラス同じで一個前の席なのに?大丈夫か、頭ちゃんと働いてるか?」
「…あなた、そんな性格だったのね。」
「心を読めるからって全て分かるなんて思うなよ。…ゲームは俺が決めていいんだな?」
「ええ、あなたが私に勝つなんて100%無理だから。」
「じゃあ、負けたら金はなしで探偵部に入部しろ。」
「いいわ。で、ゲームは?それだけ言うならかなり自信があるのよね?」
「……じゃあ、神経ポーカー。」