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通り魔

《???》



仕事の残業のせいで帰りが遅くなり辺りは真っ暗。もう心も体も疲れていた。…おまけに急な大雨。


途中まで晴れていたのにいきなりだった。場所も悪くトンネルの真下、人通りも無ければ街灯すらない。…いや、辛うじて点滅はしている。


彼女は通り雨だと信じて暫く待っていたが、期待は虚しく雨はこのまま降り続けた。10分ほど経ち観念してこのまま濡れて帰ろうとすると偶然にも1人の青年が傘を差してこちらに歩いてきた。


青年はわたしを見て驚き私に向かって走ってきた。


「こんなところにいたのか、…探したよ。」


私の記憶が正しければ初対面だ。ここが暗いせいで勘違いしているのかもしれない。私は青年の誤解を解こうと違うと言った。


「…こんな所にいたんじゃ風邪をひくよ。家まで送るから入って。」


だが、青年は不敵に笑って傘に私を入れるように勧めてくる。…これはナンパなのか?それとも本当に知り合いなのか?そう思ってしまうほどこの年下の青年はわたしに好意的に接してくる。疲れていたのもあるのだろう。私は彼の傘の中に入ってしまった。

…そこから先の記憶はなく。気づいたらベットの上だった。


「えっ?」


辺りはまだ暗い。雨の音だけが聞こえる。体が湿っていることから服も着替えていないのだろう。周りを見渡すが本当に何も見えない。というより青年は?…よくよく触るとこのベットは私のじゃない。…青年の家まで連れて帰られたんじゃ。…年下にお持ち帰りされた⁉︎


「大丈夫ですか。」


「は、はいっ!」


どこからか声がして私は咄嗟に返事をしてしまった。だけど、青年の声じゃなかった。


「覚えていますか?」


「えっと?何がですか?」


なんだろう?また人違いされているんだろうか?というより誰だろう。


「あなたがここに来る前です。」


「え?ここに?私はたぶん、青年に連れて来られたんだと思うんですけど、あなたは彼の家族か何かですか?」


「……。」


「それよりもここって凄く暗いですよね?電気はつけないんですか?」


「ここは、……です。」


「え?なんですか?あ、それと今何時くらいですか?私どれくらい寝てました。」


「……1時です。あなたは、」


「夜中の1時か、てことは1時間近く寝てたのか。…すみません、私ご迷惑をかけてしまったみたいで。」


「…落ち着いて聞いてください。貴方は道で倒れていました。」


「…?すみません。よくわかりません。えっと青年は?」


「混乱するのはわかりますがまずは落ち着いて、貴方は丸一日のあいだ目を……いや、眠っていました。」


「1日!」


「命に別状もなく、外傷もありませんでしたから心配していなかったのですが、…申し訳ありません。」


驚いた。私はそんなに眠っていたのか。…だけど、それよりなんでこの人はこんなに悲しそうなんだろう。


「今から警察を呼びます。詳しい話はその時に。」


「えっ!なんで警察?私何もしてません!」


「…その青年の事も話して下さい。あなたは、」


「いったいなんなんですか!訳がわかりません!とりあえず電気をつけて下さい!これじゃ何も見えません!」


「…つける必要はありません。」


「なんで!真っ暗じゃないですか!」


「…今は、お昼です。」


「…………………え?」


「…まったく気づきませんでした。あなたが目を開けていなかったから、ここは病院です。」


「…え?」


「あなたの目はえぐり取られています。」










《探偵部部室》






「通り魔?」


「そうです。この数ヶ月の間に4人の人が襲われて体の一部を奪われています。」


「な、なんだよ。奪われるってその人達もしかして死んで…」


「いえ、幸いにも被害者は全員生きています。」


「なんだ、よかった。あ、だけど生きてるなら犯人が捕まるのも時間の問題だな。」


流石にそれだけいれば、見ている人もいるだろうし。


「…最初の人は髪を、二人目は右手を、三人目は耳を、彼女らは後ろから襲われて気絶している間に奪われて捨てられたそうです。四人目は一応見たそうですが…目を奪われていたそうです。」


「は?」


なんだよそれ、四人とも生きてるからってそれはあまりにもーー


「酷すぎるだろ!」


「ええ、私もそう思います。そんな、女性を襲い人の人生に一生の傷を残すような残忍な犯人を許せません。…ですから捕まえましょう。」


圓城の言葉に俺は息をのむ。


「この凶悪な犯人を月宮さんと川君達に捕まえてもらいます。」


「ちょっと待てよ圓城!捕まえるっていきなりそれは無理だろう?」


だいたい誰で何処にいるのかもわからない犯人を捕まえるなんて不可能だ⁉︎


「…おそらく、犯人はこの学校の生徒です。」


「は?根拠は?」


俺がそう聞くと圓城はテーブルの上に地図と数枚の写真を置いた。


「この地図に印がついている部分は女性が襲われた地点です。」


両手をおいて地図を凝視すると確かに四つの星印がかなり離れた地点についていた。…特に接点が見られるようなところはない。バラバラだ。


「かなり広範囲で襲われていますが他県にいくほどではありません。場所は人通りが少ない事と駅からさほど離れていない事ぐらいしか共通点はありません。」


なるほど、


「三人目までは後ろから気づかれずに襲われてます。…かなり慎重に下調べをして狙っていたんでしょう。三人ともいつもの帰宅ルートで最も人がいない場所で襲われてますから。」


なるほど、


「ですが、四人目の被害者の時は別です。人のいない場所であったのは変わりありませんが、被害者に顔を見られています。しかも、話までしています。…かなり突発的だったみたいですね。」


「でも、四人目の人は確か目を奪われているんだろ?なら、そのつもりだったからという可能性はないか?」


「その可能性も否定はしません。ですが、犯人が襲っている女性は無差別ではありません。…おそらく部位も。そんな犯人が今まで気づかれずに襲っていたのにいきなり姿を現しますかね?…たぶん、四人目は偶然にも犯人のターゲットにされる部位が目だったんでしょう。そして、偶然犯人と出会った彼女はひと気がない事でその場で襲われた。…目じゃ無ければ殺されていたかもしれません。」


……。


「被害者の話では突然の雨で雨宿りをしている所に私服で年下の青年が傘を持って通りかかったそうです。おそらく中学生か高校生くらいで時間は11〜12時くらいの真夜中だったそうです。」


「…なあ、話を聞いた限りじゃそいつが男だってことくらいしかわからないじゃないか?なんでそれでうちの学校の生徒って事に結びつけられるんだ?」


「…彼女が襲われた地点は人通りがありませんが少し行けばコンビニがありますよね?」


「ん?そうだな?」


というかこの道は俺たち学生ならだれでも知ってる裏道だ。普通なら大通りを歩くんだが、この道は人通りが少なく駅から学校に一番近い。



「犯人は突然(・・)の雨で傘を持っていた(・・・・・・・・・・)んだそうです。何かをコンビニに買いにいく予定だったのかもしれません。…そんな夜中に偶然にも彼女とあってしまった。意味、わかります?」


…なるほどね、


「そして、この周辺に住む学生のほとんどはうちの学校に通っている生徒です。」


「…つまり、学生でその場所を通るとしたら俺たちの学校くらいって事か。」


「その通りです。」


圓城はにこやかに笑った。




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