what?
《探偵部部室》
扉を開けて1人の女子生徒が入ってきた。すらっとした身体で肩くらいある黒髪を三つ編みにして眼鏡をかけている。顔は美人系で目つきが鋭い。…委員長だ。
「見た目で判断しないで。」
心読まれた!
入って来て早々にツッコマれた。馬鹿な!圓城の言ってた事が本当なのか?…いや、まだだ!ふ、フーアーユーネーム?俺は心の中で呟く。
「…月宮円よ。Your English is incomprehensible. Is it stupid?」
「…ざ、ザッツライト。」
「「……」」
なにを言ってるかわからんが本物だ!マジか、やばい心を無にしないと。…いや無理だ。
俺は目で圓城の方に助けを求める。凄い呆れた顔でこちらを見ている。だが、ちゃんと通じたのか溜息を吐いて俺の後ろから月宮さんに声をかける。
もちろん、心の読まれる範囲の一歩後ろで。
「初めまして月宮さん。わざわざ来ていただいてありがとうございます。」
「別にいいわよ。私も会ってみたかったし、天才と呼ばれるあなたに。」
「それは良かったです。どうですかあって見て?意外と普通でしょ?」
そう言って圓城は月宮さんに一歩近づく。
「…ッ!本当にね。あってみないとわからないものね。…想像以上の化け物だわ。」
「…隠したりしないんですね。てっきりシラを切るのかと思いましたが。」
「そっちの天野に色々バラしておいてよく言うわ。シラを切ってもある事前提で話進めるんでしょ?」
「もちろんです!」
2人で仲良く話し合っている。…それにしても月宮さんって、会うの2度めのはずだけど何か見覚えがある。…何処だ?
「…なぁ、俺と今日以外で何処かであった事あるか?」
「「は!?」」
圓城と月宮さんが驚き顔でこちらを見る。それから呆れ顔で圓城は月宮さんから一歩下がった。
「…当たり前よ。天野、あんたとは同じクラスじゃない。」
「うそ!」
「しかも、あんたの一個前の席。」
そう言ってフリフリと三つ編みを振る。
「…ああ!」
見た事ある!あの三つ編みは確かに俺の前の席の人のだ。てか、いつも後ろ姿しか見た事なかったから全然気付かなかった。
「…普通、クラスメートの顔くらい覚えておくものでしょ?」
「いや、……申し訳ない。」
「言い訳くらい考えなさいよ。…私の事本当に三つ編み以外記憶にないのね。」
「心読まないで!」
なんというか非常に申し訳ない。
「…えっと、月宮さん。」
「呼び捨てでいいわ。私もそうするし。」
「そうか、じゃあ月宮。お前、探偵部に入部する気あるか?」
「ないわね。」
…だよなぁ。俺は圓城の方を見る。
「…?わたしもないですよ。諦める気。」
「本人の意思を尊重しろよ。」
「もちろんです!必ず!」
「…お前の意思を言ったわけじゃないぞ。」
こいつのなかで否定されるということを考えてないのか?
「まったくその通りね。」
月宮が溜息を吐きながら呟く。…何も口にしてないのに会話が成立するのはもしかしたら意外と楽かもしれない。
「そうでもないわよ。人は自分の事をしられるのを嫌うものだから。」
あー、やっぱりそうだよな。人を信用出来ない。姫星もそれで苦労してるんだから、…月宮もやっぱり苦労とかしたのかな。
「いえ、特にないわね。というより周りの心の内が読めるのは便利よ。」
「心読むなよ。でも、親しくなった友達が酷いこと考えてたり笑顔で嘘ついてたりとか…分かるってきついと思うぜ?」
「…確かに、色々あったわね。でも人間なんてそんなもんでしょ、損得で態度を変えるものだし…分からなければ嘘でも何でも言うからね。」
…あったのか。こいつも実は辛いーー
「それを素知らぬ顔で騙してドン底に落とすのがたまらないわね。」
「思いをさせてたのはお前か⁉︎素知らぬ顔でって悪意100%じゃん!」
「違うわよ。されるだろう事を先に返しているだけよ。…証拠を残さず。」
「腹黒だー!!」
「現実主義者と言って。」
「話を戻しますけど月宮さん、あなたを勧誘したいと思ってます。」
「断るわ。」
「もちろんタダでとは言いません。貴方には入部して頂くなら毎月いくらかのお金をお支払いいたします。」
何っ⁉︎俺はそんなのもらったことないぞ!圓城、いくら月宮の心の読める力が欲しいからって金で買収なんて、てかいくらなんでものらないだろ。
「…いくらよ。」
のったああああ!!
「誘いにのっちゃうの⁉︎」
「値段次第ね。私は信頼や信用が必要ない分お金で全てが解決出来るの。」
心を読めるからか!なんか寂しい!金の亡者!
「…現実主義者と言って。」
「まったくです。」
圓城が月宮に同意する。そして、また一歩前に出る。
「それでですね、…これくらいでどうですか?」
「っ⁉︎なんでもありね、…でもそれじゃ駄目ね。」
「じゃあ、…。」
「……話にならないわね。」
「……。」
「……。」
「「……。」」
何を話してるかわからない。お互い無言で見つめあっている。
くそッ、なんか月宮って圓城に似てやがる。相手の裏を読むのとか、気持ちよりも損得で優先順位を決めるところとか。それに、
自分の心を見つめようとしないところとかそっくりだ。
しばらくして月宮のほうから口を開いた。
「わかったわそれでいい。でもいいの?」
圓城は後ろに下がる。
「はい。こちらが無理を言うのですからこれくらい。…それに探偵部を舐められても困りますから。」
「へえ、もちろんあなたは参加しないのよね。」
「はい。」
「ふーん。じゃあ、天野よろしくね。」
「いや、何がっ⁉︎」
「「聞いてなかったの?」」
「お前ら何も言ってないからな⁉︎」