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さとり

「全く、何をしてるんですかね?」


「「……。」」


足を組み座っている圓城の前で2人の生徒が土下座をしていた。


勝負が終わり。占い愛好会の部室をあとにした俺たちは圓城のいる探偵部にきていた。


…そして、結果を報告して今にいたる。



「少し、期待をしていたんですがね?まさか、こんな事も出来ないとは…」


圓城は手で顔を押さえる。そのせいでどんな表情かわからないが、…いや、決まっているか。


「…約束は約束です。武鳥君、不合格!」


大歓喜!デビルエンジェルスマイルだ!一見普通の無表情だが、…腹で笑って心で嗤う。超ご機嫌の時しか見れない最悪の奴だ。…何故って、周りが必ず不幸な時しか見ないからだよ!


「待ってくれ!もう一度だけ!」


土下座していた卯月が顔を上げて叫ぶ!



「姫星君は二つの部に勝利、川君は一つ、…武鳥君、あなたは?」


そう、圓城は無表情で卯月を見据える。


「ぐぅ!」


「入りたい、入りたいと訴えるだけで全く結果を出していません。約束を守らず、結果も認めず、あなたは何のために入部したいんですか?」


「それは…」


「…私は武鳥君はもっと自分に厳しく約束は必ず守る芯の強い人だと思っていました。…恰好いい人だと。」


少し悲しそうに肩をおとす。


「……陽菜。」


「…いいですよ。今、武鳥君が入部を望むのであれば、入部させましょう。試験もなしで。」


「……え?」


「これから、放課後、毎日のようにあなたと会う事になりますね。見る事に、話すことにも。……カッコ悪いあなたと。」


圓城は少し唇を噛みながら卯月から目を逸らす。


「っ!!」


「武鳥君。…私にそんなあなたを見せるんですか?」


顔をそらしたまま今にも泣き出しそうな声で卯月に問う。


「っっ!!」


「…教えて下さい。あなたはどんな方ですか?」


すっと、顔を上げると目に涙が溜まっている。


「…俺は。」



…何度も言おう。圓城は今、超ご機嫌である!


「…今日はとても悲しいです。」


「…ふっ、俺もまだまだだな。惚れた女を悲しませるなんて。」


何度でも言おう!今、圓城は超ご機嫌だと!


「もう少し待っててくれ、陽菜の期待に答える男になって帰ってくるから。」


「…はい。約束ですよ?」


「ああ!もちろんだ。」


「…それまで帰ってきたら駄目ですよ?」


「あ、あぁ、も、もちろんだ?」


「わかりました。では、武鳥君の言う通り私が期待に答える男になったと思うまで入部はさせません。そして、立ち入りも許可しません!」


「えっ?陽菜?」


「約束ですからね?」


「…はい。」





少しして、土下座していた卯月は部室から出て行った。…あいつともうここで会う事はないだろう。


…さてと、


「圓城、」


「…何だ?川?」


卯月が入部できなかった。…それは、ーー


「あいつ、何者だ?」


ーー姫が勝てなかったという事だ。


「姫の嘘が分かる能力は本物だ。それでも勝てなかった。…圓城、お前絶対に勝てないと分かっていて俺たちに勝負させただろ?」


「…まあな。」


「何のために?あれなら卯月1人が試験を受ければいいだけだっただろ。」


わざわざ俺と姫が受けた意味がわからない。


「…川。私がテストに決して解けないように大学生用の問題をいれたと言ったのを覚えているか?」


「?いきなりなんだよ。ああ、覚えてるよ。」


「あれはな、本来、大学生でも解けない超難問なんだ。相当な学がない限り無理なんだ。なのに、それを解けた奴が全教科満点の4人と、あと1人いたんだ。」


「だからどうしたんだよ。4人もいたんだ、あと1人いたからってそれが、なんだってんだ?」


「言ったろ決して解けないはずなんだ。カンニングしたバカ2人と天才の私と完璧な生徒会長あいつ以外な。」


「ならどうして。」


「…姫星が負けた事で確信した。彼女は…月宮円つきみや・まどかは心が読める能力者だ。」


「…頭大丈夫か?」


いきなりすぎて意味がわからん。だが、圓城は真剣に言う。


「彼女には噂が結構あってな。彼女に占ってもらったカップル、または、相談事は100%当たるそうだ。」


そりゃ凄え。


「彼女が別れるといえばそのカップルは別れ、付き合うといえば一週間もしないうちに付き合うらしい。」


「まるで預言者だな。」


「周りからは魔女と呼ばれているらしい。」


また、すごい名前を、


「なるほどね、要は俺たちは実力を見るために行かされた訳か…何も知らないから。」


だからご機嫌なのな。…卯月の事とか全く興味なかった訳か。


「相手が何を考えているか分かる。事件が起きればすぐに犯人が分かる。好きな人が分かる。…欲しくないか、探偵部に?」


…やれやれ、蘭々と目を輝かせやがって。


「…どうするんだ?」


「無論、勧誘する!」


「心を読まれるんだろ?難しいんじゃないか?」


「蒼夜に調べて貰った情報と今日の話を聞くと恐らく、彼女の能力は半径1メートル…いや2メートル以内にいる人限定だ。そして、周りに4人以上いると使えないみたいだ。」


「…良くわかるな?」


「占いをする時はカップルで2人、修羅場で3人の時は占うが4人の時は別れて占いをしていたらしい。そして、蒼夜がいる事に気付かなかったという事を考えて2メートルだ。」


「あいつどんだけ近くで調べてんだよ!」


情報屋の実力は伊達じゃないな。


「まぁ、それを踏まえて彼女には話をしてみるさ。…もう、呼んでいるし。」


「はやっ!てか、あいつの用事ってお前かよ!…4人いなくて大丈夫なのか?」


心、読まれるじゃん。


「ん?勧誘するんだ。心を読んでもらった方が話が早くていいだろ?」


…情報の意味がない。


その時、コンコンと部室の扉をノックする音が聞こえて来た。


「さあ、来たぞ?心を読まれる準備は出来たか?スケベな事を考えるなよ。」


「待って!まだ出来てない!というかどうすれば⁉」


「自然体でいればいい。まぁ、私のように裏表のない人間じゃなければ大変かもな。」


「そんな嘘、俺でも分かるのになんて自信!お前の腹は黒過ぎて見えないとでもいうのか⁉」


「空いてますよ。入ってきてください♪」


「だから、何故今更エンジェルスマイルだ⁉無駄な小細工!」


「…失礼な川君。これが素ですよ?」


「10年来の付き合いで俺、殆どその素を見てないんですけど⁉」


「ツンデレってやつです。」


「使い勝手のいい言葉だな!…もういいや。今からくる月宮さん?がくればわかるしな?」


「そう、そこであなたは本当の私を知るのです!」


「…圓城の事で知らない事とかないから。」


…もうツッコミが面倒だ。


「……。」


ゲシッ!!


足を蹴られた。


「痛っ!何すんだ!」


「…もう来るんですから馬鹿な話は終わりです。」


「なっ、お前が…ああ、分かった。」


良くわからんがこれ以上言っても無駄みたいだ。顔を真っ赤にして怒ってるし。



俺たちは扉が開くのを待った。



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