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あの最強の

《必殺技愛好会部室》



必殺技愛好会。部員数4名。技の探求、発見が主な活動内容。



「私たち4人の必殺技に声を出さずに耐えられたら、あなた達の勝ちです。」


なるほど、痛みに耐える事が重要と。…卯月の出番だな。


部室内を見渡すと壁に貼ってある紙に様々な必殺技が書いてある。




初級


デンプシーロール ○


昇竜拳 ○


竜巻旋風脚 △


千年殺し ◎





…中々、本格的だ!


これはマズイ、耐えられる自信がない。



「…卯月。」


「…さっき失態を見せてしまったからな。ここは任せろ!」


頼もしい!もうここは何があろうと全てこいつにしてもらおう。俺や姫じゃ無理だ。


「では、この部室内に書いてある必殺技をあなた達に選んでもらいます。ただし、選ぶのは中級以上の○つきのみです。」


そういえば、さっき見てたのは初級って書いてたな。…あれ以上かよ⁉


俺は急いで中級の必殺技を探す。




中級


かめはめ波 ○






「卯月にかめはめ波で!」


「おい!まて川!よりによってなぜそれだ!」


「バカ!卯月、かめはめ波だぞ!仙人から習った孫家の秘伝のあの技だぞ⁉ここで見ないなんてないだろ!」


「受ける俺はもっとない!下手したら死ぬぞ!」


「悪い、ちゃんと動画に撮っとくから、お前の最後のシーンは永久保存版だ。…生きてたら一緒に見よう。」



「そういう気遣いはいらねぇ!」



卯月の命であの感動が見れるなら、逃す手はない!



オラ、ワクワクすっぞ!





「では、1番手いきます!」


「………。」



急に部室内が静かになった。そこに佇む1人の男から目に見えないオーラを纏っているような錯覚に陥る。その前に立たされる卯月。


……滑稽だ。


大気が震えていると思うほど俺の心臓は脈打ち、今か今かと技を待つ。


ゆっくりと両手が円を描くように動き出す。その動きがまるでスローモーションのように感じるが恐らく、時間にしたら数秒にも満たないのだろう。その動作があまりにも綺麗で息をするのを忘れ、目を離す事ができない。


円の大きさが少しずつ小さくなりソフトボールくらいの大きさになった時、いつの間にかあの構えになっていた。



「……。」


男が卯月を見据える。そのまま小さく息を吸い、口を開く。




「か〜め〜」



「「ホンモノだー!!」」


やばい!マジでホンモノだ!あの声だ!俺と卯月は騒ぎ出す。


「こ、ここでこれが聞けるなんて!」


「ああ!正直、死を覚悟していたせいでこの感動がうまく口に出せない!」


「いや!分かる。凄すぎたもんな!」


「ああ!」


「ありがとう。でも、この技はさらに空、飯、天と変化をつけれるんだ。」


「ま、まさかそこまで⁉」


「いったいどんな修行をおこなえば⁉」



俺達の興奮は加速する。


「あ、だけど君たち2人は声を出したから失格ね。」



「「……あっ!!」」


男の言葉に一瞬で我に帰る。


「な、なんて事だ。こんなとこで失敗してしまうとは。」


「残念だったね。」


そうか声を出さずに耐えるっていうのは痛みに耐える事ではなくて、感動のあまり声を出すのを耐えるほうだったのか。



…正直、無理だろう。


「…クソ、圓城に何て言おう。」


「あの、天野君。私はまだ大丈夫なんだけど。」


俺は勢いよく姫のほうを向く


「…嘘だろ。何故耐えられる?」


「いや、正直何が?って感じなんだけど。」


「……は、鋼の自制心。いや、これが嘘を見抜く力って奴か!」


「たぶん違うから。」




まさか姫が叫ばないでいられるとは思わなかった。…おかげでまだ可能性が残されているが


「ふっ、たった一度耐えられたからといって次も大丈夫とは限らないよ。」


…そう、まだあと3人も残っている。










10分後、





「「「「参りました!」」」」


「……。」


耐えきった⁉



「えっ?何で耐えられるの?ねぇ、」



残りの3人、余裕ぶっていたにもかかわらずもう俺達に必殺技を選ばせる事もせず怒涛のラッシュ。天翔る龍の閃き、螺旋丸、バオウザケルガ。もう俺と卯月は大フィーバー!勝負も忘れて叫び続けた。



…だが姫は何事もなかったかのように耐えきった。むしろ、本当に何も無かったんじゃないかと思うほどの冷静振りだった。


本当はこの時点で俺達の勝ちなのだが、負けを認めたくないのか4人はさらに姫に必殺技を出し続けた。…止める気もさらさらなかった。


そこから出るわ出るわのオンパレード。身を削った必殺技(丸坊主にして太陽拳)から学園生活を捨てた必殺技セクシーコマンドーまでなんとか姫を倒そうと必死で途中からはほぼ挑発と大差なかったが…それでも止める気はなかった。




だが、果てしない攻防にも終わりが訪れてしまった。声も枯れ果て、立っているのもやっとの4人に姫はたった一言、言ってはならない事を口にした。


「…これ、ただのモノマネよね。」


情け容赦なかった。


その言葉を聞いた4人はなす術もなく倒れ伏した。全てを否定され、冷静に返されてしまった。彼らはもう立ち上がれないだろう。今日、様々な技を見てその凄さに驚いたがこの状況を見て思ってしまった。


…これこそが必殺技だと。






「行きましょうか。」


「ああ、」


やる事やったしもう用はない。といった感じで姫は部室をあとにする。俺も録画したビデオテープを一本手にしてホクホク顔で帰ろうとして後ろを見ると、倒れた4人に卯月が一言呟く。


「べホイミ。」


その言葉を聞いて足を震わせながらも何事もなかったように立ち上がろうとする4人。


俺は目から熱い何かが溢れ出す事を予感して壁のほうを向いた。



「……。」


その時、見つけてしまった。


…彼等からは聞かなければならない。まだ見ぬ必殺技を。俺は誓う。明日必ずまた、この部室に足を踏み入れると。たとえ明日、世界が滅びる事になろうとも!










最強タッグ技



バルス ◎















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