犯人は?
「川君が言わないなら私が言います。犯人は姫星君自身です。」
「えっ?」
「……。」
「彼はどんな理由でこんな事をしたのかわかりません。ですが、彼以外に実行出来る人がいません。」
「そんな…自作自演って事ですか?」
「そうだと思います。最初から違和感があったんですよ。姫星君の持ってきた手紙はどう見ても家族のように常に一緒じゃなければ知り得ない事ばかりです。」
「た、たしかに」
「最後にきた手紙もよく考えるとあれは私と川君の事を言っているんですよ。偶然、山下さんが一緒になりましたから女性二人を指していると勘違いしましたけどね。つまり、元からあの手紙は書いてあったんですよ。昼休みに私達と帰ると約束したあとに…。」
「そ、そんな⁉」
「違います!」
突然、ドアが開き涙目の姫星がそこに立っていた。
「違います!僕は何も知らないんです⁉」
「…ですが、どんなに考えてもあなた以外に手紙を入れるのは不可能なんですよ。」
「違う!本当に僕は知らないんだ」
姫星は必死に首を横に降る。だが、圓城は言葉を止めない。
「…実は証拠もあります。」
「えっ!!!」
圓城は今さっき見た手紙を出した。
「昼休みに読ませて頂いた手紙もですけど、全部手書きでしたよね。」
「う、うん。」
「筆跡鑑定なんてすごい物ではないですが、あなたの部屋のノートの字とこの手紙の字はほぼ一致しました。」
「そんな馬鹿な⁉」
「……。」
「…あなたが心の奥底で誰かに見られていたいと思っているからかもしれません。これに関しては私はどうする事もできません。ただ一つ言える事はあなたのまわりにはストーカーは存在しないという事だけです。」
「……。」
その後、姫星はなにも喋らずただ下を向いて震えていた。
俺たちは姫星を残して帰る事にした。
「本当に姫星君が犯人だったんですかね?」
「それは間違いないですね。私はあんな嫌な事を確信もなく言ったりしません。」
「……。」
確かに間違いじゃない、…だけど言葉が足りない、周りにストーカーがいないだけでストーカーがいないわけじゃない。
「…悪い圓城、山下さん。ちょっと姫星の家に忘れ物したみたいだ。とってくるから先に帰っててくれ。」
俺は踵を返しきた道を戻り始めた。忘れ物?ストーカーに決まってるだろ。
《姫星家》
家には鍵がかかってない。おそらくリビングから未だに動いてないのかもしれない。
…恐ろしく足が重い。何を話せばいいのか、そもそも会ってどうするのかわからない。まだ辛そうな顔しているかもしれない。…でも、
俺は玄関を入りリビングに向かう。
あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!、
そこには限界を超えたであろう姫星が天井を見上げ笑っていた。
「…おい。」
「はははは、何だよ天野君、僕にまだ何か用かい。」
姫星の表情は笑顔だ、楽しそうに愉快に喜んでいるようにすら見えた。
「姫星にな…ストーカーの依頼がまだだろ?…まだ解決してない。」
「はっ!何をいうんだい?圓城さんが言ったとおり犯人は僕なんだろ。ならば、事件は解決じゃないか⁈」
「お前はまだストーカーに狙われているだろ。」
「…同情のつもりかい?圓城さんが言った事は正しいよ。」
「…何故?」
「…誰にも言ったことないけど僕はね人の嘘が分かるんだ。人が嘘をつこうとしている時の声、表情、仕草が変化するのを見逃さない。何でできるかなんてわからないけどむかしからそうだったから。…だから、圓城が言った事は本当なんだよ。」
「何で?」
「だから、圓城さんは嘘をついてないから、僕がーー」
「いつ姫星が嘘をついたなんて言ったよ⁈」
「!!!」
「なめんなよ!お前のように全ての嘘を見抜けるわけじゃないが、姫星が嘘をついてないことくらい分かるんだよ!辛い思いをしてるのだってわかるさ!」
「……何でそう思うのさ。」
「山下さんが言ってたよ、姫星を見てると自分の事を思い出して辛いって。同じ思いをした山下さんは感じたんだよ。姫星が本当に苦しんでるのを。」
…それにもう一つ理由がある。
「だから、俺は言ったろ?ストーカーを見つけて事件を解決させるって。」
「…大丈夫だよ。これは僕自身の問題だから」
姫星は笑いながら答える、
…その顔を見て俺の予想は確信に変わる。
「…だから、お前にじゃなく俺は姫星に言っているんだよ!」
「えっ?な、何を言ってるんだい?」
これがもう一つの理由。
「…お前は二重人格で女の子なんだろ。…そして、お前が姫星のストーカーだ!」