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被害者×加害者。

俺たちは姫星をベットに寝かせてから隣のリビングで座らせてもらう事にした。山下さんは辺りをキョロキョロ見回して落ち着かない。実際、自分もそうだがそう見られないよう平静を装っている。


「怖いですね。いつからつけられていたんでしょうか?今も見られているんでしょうか?」


「落ち着け、山下さん。心配ないって。」


「そんな何を根拠に心配ないなんて言えるんですか⁉わからないじゃないですか!」


「今は家の中だし、このストーカーは姿を見せないんだ。何も出来ないよ。」


「でも!」


「ほら、隣で姫星も寝てる事だし少し落ち着こう。」


俺は隣を指差しながら話しかける。


「あ、……すみません。」


山下さんは姫星の事を思い出したのか声を下げて俯いてしまった。


「…すみません。私、ダメなんです。自分が誰かに見られていると思ってしまうと。胸のあたりが…苦しくなるんです。」


よく見ると山下さんの体は微かに震えている。


「だ、大丈夫か⁈」


失敗した!山下さんは連れて来るべきじゃなかった。ストーカーがダメなのを知っていたのに。何をやっているんだ俺は!俺は山下さんのもとに近づく。


「は、はい。私は大丈夫です。天野君に助けていただきましたし、このくらいの不安は耐えられます、…でも、姫星君は今もこんな思いをしているのだと思うと。…申し訳なくて。やっぱり苦しいんです。」


そう言って悲しそうに微笑む。…そうか、山下さんも同じ経験をしてるんだもんな。怖いし、そんな目にあっている人がいたら辛いよな。


「何か落ち着く方法とかはないのか?」


「落ち着く方法ですか?」


「そう、何かをしていると落ち着くとか、これをすると嫌な事も忘れられるとか。」


「…えっと、怖さを紛らわす為に寝る時によくやってた事ならありますけど…」


「それだよ!何だよあるんだ。」


「いえ、その、あるにはあるんですけど、恥ずかしいというか。できないというか…」


山下さんはなにやらうつ向いてごにょごにょと口を動かす。…恥ずかしい?、指を口にくわえるとかラマーズ法とかか?そんなの俺は気にしないぞ。


「山下さん、落ち着くならやった方がいいぞ。大丈夫だ。恥ずかしくても。」


「でも、」


「そんなに気にする必要はないさ。笑ったりしないし俺にできる事なら手伝うぞ?、見られるのが嫌なら俺はどっかいっとくから。」


「そ!そんな事しなくていいです!大丈夫ですから⁉」


「そうか?」


「はい!大丈夫です。やります!…ですが、ちょっと後ろを向いてくれませんか?」


「ん?後ろか。分かった。」



やっぱり恥ずかしいのかな。無理言いすぎたか。だが、それで山下さんが少しでも落ち着くのならーー



ぎゅむ!



ーーやった方が、ん?背中に衝撃が?


「………。」


pkwgtjgng@t@mjhuj'♪☆2+53」〒々〒!!?!?


山下さんに抱きつかれている⁉


「あ、あの、私はこうやって何かを抱き締めると落ち着くんです。いつもはぬいぐるみを抱き締めてるんですけど…」


いや、何故俺を代用しようと考えた⁉


「あ、天野君が大丈夫だっていってくれましたから。…その…勇気を出しました。」


俺のせいか⁈、この状況!やばい、ヤバイ胸が背中に当たってる。しかも女の子からだと⁈くそっ!落ち着け!!指をくわえる、いや!ラマーズ法、イヤイヤ⁉……素数を数えるんだ!



…1.2.3.4.5.6.7.……はっ、0を忘れた⁉いや違う!これただの正数じゃん!?



混乱しているのはわかっている。でも、どうすれば落ち着くのかわからない。今尚、強くなる締め付けに自分の心臓と脳みそは異常な加速を見せていた。


「ド、ドキドキしますけど落ち着きます…


「そ、それは良かった。」


…1428.1429.1430.1431.…くそっ!数字って無限に続いているのか⁈、このまま数え続けても落ち着く素振りが全然ない!


「え、圓城さん遅いですね?」


「あ、あぁ、おそらく蒼夜と連絡を取っているんだろ。」


…7248.7249.7250…


「そうなんですか。…このままーーー。」


山下さんが何か小さく呟いたがうまく聞き取れなかった。


「えっ?今何て?『そんな事は私が許しません!』」


突然、俺の質問を遮り、勢いよく扉が開けて叫んできた。…圓城だ。


「まったく!私が事件解決に動いてる間にあなた達は何をやっているんですか⁉いちゃつきですか⁉あてつけですか⁉」


何やらえらいご立腹のようだ。別に遊んでたわけじゃないのだが。


「ち、ちちちがうんです!これには訳が⁉」


そう言って山下さんは俺から慌てて離れ後ろに下がっていく。


「訳ですか?それがあれば川君を抱き締めてあんなこと囁いてもいいと⁉」


…あんな事?…まさか圓城、隣にいた俺が聞き取れなかった山下さんの声をドア越しで聞こえてただと⁈


「ふわぁぁあ!!!違います!誤解です⁉」


山下さんが壊れ始めたな。そろそろ止めないと。俺は山下さんのフォローに回る事にした。

「そうだぞ圓城、山下さんが落ち着く方法を聞いたらぬいぐるみを抱くことだっていったから俺が代わりになったんだよ。別にやましい気持ちなんてないぞ?俺はずっと正数を数えていたからな。」


「…何やら色々ツッコミたいですが、とりあえず…とうっ!」


圓城が俺の胸にめがけて飛び込んできた。


「…何がしたいんだお前は。」


「私も少し動揺してるみたいだから落ち着こうかなと。…えへっ♪」


俺の胸の上ではにかんだ。 … アホだ。



「ところで圓城、いままで何やってたんだ?」


俺は圓城を引き離し質問する。


「もう!…蒼夜に住宅街のカメラのビデオを見てもらっていた…んですよ。」


どうやら本当に捜査していたみたいだ。あと、


「…もういいんじゃね?」


山下さんの前だから隠しているみたいだが、若干素がで始めている。幸い山下さんもパニック状態なので気付いてないが。


「?何がですか?」


…こいつは。まぁいいか。話が進みそうにないのでスルーする。


「それで映ってたのか?」


「それが私達以外は誰もだそうです。」


「…マジか。それじゃあ俺たちを一体何処から。」


「…川君はもうわかっているでしょ?」


…俺はその問いには答えない。まだ確証がないから、そして…


「あの、いったい何の話をしているんですか?それにさっきの話って犯罪なのでは?」


落ち着きを取り戻したのかおずおずと尋ねてきた。そういえば山下さんがいたんだった。俺と圓城は顔を見合わせて即答した。



「「企業秘密で。」」







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