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10話、男女男?女。

《放課後》



「………。」


嫌な予感が的中した。



「へ~、川君はそんな事言ってたんですか。」


今、俺たちは姫星と一緒に四人で帰っている。


「あの、やっぱり不味かったですか?」


「いえ、大丈夫ですよ♪問題ないです。ただ、川君が何も言わなかったので驚いただけです。」


「……。」


俺と圓城、それに姫星。そして…


「まさか、山下さんと一緒に下校の約束をしてたなんて知りませんでした。」


…そう、完全に忘れていたのだ。一緒に帰る約束を、これはどう見ても俺が悪い。まさか、放課後がまたボディーガードとは思ってなかった。なので理由を説明して山下さんに断りを入れるつもりだったのだが、圓城から


「女性との約束をないがしろにする奴はクソだ!」


との事で急遽、山下さんを入れた四人で下校する事になったのだ。この理由を知らない他の生徒たちは俺を美少女三人(一人は男。)に囲まれたハーレム野郎と勘違いをして、殺意の視線を浴びせ続けていた。…この四人の中の一人からも。


「でも、ストーカーにつけ狙われるのはとても怖いですよね。特に帰り道とか。」


「そうなんですよ。いるのかいないのかわからないからずっとビクビクしてしまって。」


流石は山下さん。経験者が語ると重みが違う。


「でも、大丈夫ですよ。天野君がいればすべて解決します。」


え?何で俺?そこは探偵部だろ。…圓城、いい加減睨むのをやめろ。


「そうなんですか?」


「はい!実際私も助けて頂いたんですよ。しかも、たった一日で。」


「すごいですね!」


「……。」


…おい、なんか変な方向に話が進んで来たな。


「天野君はとても頼りになるんですよ。だから姫星君のストーカーもきっと解決してくれますよ。ですよねっ!」


そう言って山下さんは俺にウインクをしてきた。


「いやいや!何だよその私、言ってやりましたよ。みたいな振りは!姫星もそんな眼で見るな!俺にそんなに期待しても無駄だぞ。」


ほとんど、圓城が解決するんだからな。


「まぁ、だけどそんなに不安になる事もないぞ。別に悪い事した訳じゃないんだ。もっと堂々としてていいくらいだ。」


「…うん。」


姫星は弱々しく微笑んだ。…まぁ、だからって不安がなくなるわけじゃないもんな。


俺はおもむろに姫星の頬を横に引っ張る。


「ほへ?」


「笑え。姫星。そんな顔してたんじゃ幸せになれねぇぞ。」


だからってそんな顔してて良い訳がない。俺は姫星に楽しく学校生活を送って欲しい。だから、もっと笑って欲しいんだ。


「それに、姫星はせっかく良いツラしてるんだから笑ってた方がいいぞ。そのほうがモテるし。」


「えっ!う、うん!」


「そうそう、じゃないと毎日が楽しめないからな。」


そう言って俺は姫星に笑顔を向ける、これはある人の受け売りだが、人を安心させたいなら自分が笑顔になって笑いかければ良いそうだ。…実際、俺もこれに救われた事がある。


「あ、ありがとう。」


だが、何故か姫星はさっきよりもあわあわと動揺している。…顔を赤らめて。


「…いいなぁ。」


「私にはあんな顔、向けてくれないのに。」


…失敗したか。二人の方からも何やら小声で愚痴のようなものを言っている。…上手くいかないものだ。


そんなどうでも良い話をしている間に姫星の家についてしまった。




「ここが僕の家です。」


「スゲぇ。」


「豪邸ですね。」


来る途中から高級住宅街だったから予想はしていたが、デカイな。


俺と山下さんが唖然としているなか、圓城だけが当たり前のように堂々としている。


「圓城は驚かないのか?」


「元から知ってましたから。…それに驚くよりも本当にストーカーがいるのか疑問に思えてきました。」


「?どういう意味だ?」


「それはこれから。…姫星君、ポストの中には手紙は入ってますか?」


「え?あ、はい。すぐ見てきます!」


姫星は慌てた様子でポストの中を確認している。何やらチラシや封筒なんかが入っているみたいで、一枚、一枚見ているようだ。そして、その中の一つを見てこちらに振り返る。



「圓城さん、天野君。…これ。」


そこには昼休みに見たのと同じ手紙が入っていた。


「姫星君、見てもいいかしら?」


「はい。」



圓城は姫星からそれを受け取り紙を開いた。

そこにはたった一行だけ書かれていた。








織彦、その二人はダアレ?




寒気がした。俺たちは慌てて後ろを振り返る。だが、全く人の姿はない。これでも人の気配には敏感な方だ。学校から帰る途中まであった生徒の視線は別にしてもそれ以外はまったく人に見られている事はなかったはずだ。


なのに、


「これは、私と山下さんの事を言っているのよね。」


「恐らくな。」


「じゃあ、学校から帰る間に誰かに見られてたって事ですか?」


「そういう事になるな。…正直、全く気付かなかった。…みんなは?」


「私は全然。」


「同じく。」


「姫星は?…って!姫星⁉」


俺が姫星の方に顔を向けると姫星は仰向けに倒れていた。俺たちは慌てて姫星に駆け寄った。


「だ、大丈夫ですか⁉」


圓城が脈をはかったり瞳孔を見たりしている。


「…心配ない。気絶してるだけみたい。」


「そうか。」


俺は安堵の息を吐いた。


「取り敢えず家に運ぼう。このままじゃ体にも悪い。」


「そ、そうですね。」


俺と山下さんは姫星を背負うと家の中に入っていった。


「……。」


俺たちが家に入った後も圓城は一人、何かを睨むようにしばらく家の外で佇んでいた。まるで見えないストーカーを探すように。
















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