002 伯爵家三男 前世を思いだす
最初は2話投稿です
現在9話まで下書きができているので残りの7話は1週間スパンで投稿いたします。
ナビス伯爵家の三男、レンリーは五歳の誕生日を迎えていた。この国では五歳になると、教会の神官から「スキル」を授かる儀式がある。
「レンリー、緊張しなくていいわ。あなたがどんな力を授かっても、私たちの自慢の息子よ」
若く美しい母が優しく背中を撫でてくれる。厳格だが子煩悩な父と、僕を可愛がってくれる二人の兄も、温かい眼差しで僕を見守っていた。
その瞬間だった。
「……っ!?」
神官の掲げる魔道具が淡く光り、僕の脳内に濁流のような情報が流れ込んできた。
積み上がった書類、光るパソコン、業務中に意識を失った、冷たいアスファルトの感触。
(……そうか。僕は、働きすぎて死んだんだ)
前世の記憶。それはあまりにも過酷な「社畜」としての人生だった。
呆然とする僕に、神官が告げる。
「ナビス様のスキルは……【テイム】です。
魔物を使役する力です」
周囲がざわつく。貴族としては剣技や魔法が好まれるが、テイムは地味なスキルとされていた。
しかし、父様は即座に僕を抱き上げた。
「素晴らしいじゃないか! 命を慈しむお前にぴったりの力だ」
家族の無条件の愛。それが、前世で孤独に死んだ僕の心に深く染み渡った。
決めた。
この人生は、この人たちのために使おう。でも、前世みたいにボロボロになるまで働くのはもう終わりだ。
僕は僕のスキルを使って、「みんなが楽をして、豊かになれる場所」をこの領地に作ってみせる。




