第20話 RPGと勇者パーティー
第20話―――異世界編③
地球人召喚で、建設系のスキルを持つ者たちが次々と呼び出され、獣人国の王都の復興は驚くほど順調に進んでいった。
壁は一瞬で組み上がり、崩れ落ちていた塔も次々と再建される。
瓦礫に覆われていた街に、再び生活の匂いが戻っていく。
――とはいえ、かかった時間はほんの二時間弱だった。
一方、王都が元の姿を取り戻すころ、郊外には巨大な建物や不思議な店がいくつも出現していた。
スズキさんのスキル《イオニモール召喚》。
ヤマダさんのコンビニ召喚スキル《ローソニ》。
ダイチさんのスキル《ヤマシタ電気召喚》。
初めて見る異世界の品々に、貴族も王も庶民も関係なく、エルフもドワーフも獣人も人間も、皆が心を躍らせていた。
そこには、生きることの喜びが確かにあった。
――だが、ひとつだけ大きな問題が残っていた。
それが食料問題だった。
農業系スキルを持つ者たちが畑に立つが、
土はまるで応えない。
―――
「星の力が……ほとんど残っていません」
ほぼ修復された王城の一室で、サマンサが悔しそうに言った。
「星の精霊が、死にかけているのです」
ハイエルフが苦痛の表情で続ける。
かつてサマンサが語った「邪神を倒しても滅びは免れない」という言葉の意味が、ようやく皆に理解された。
「何か、方法はないものか……」
人間の王が頭を抱える。
「当初は手を貸すつもりはありませんでしたが……」
そう言ってメイドは、コンビニで買ってきた抹茶味ロールケーキを皿に盛り、お嬢様の前へ配膳した。
「お嬢様が、この星をお気に召されておりますゆえ」
メイドはそう言うと、メイド服の内側から何かを取り出し、それを床に放った。
王城が、わずかに揺れる。
次の瞬間、床の中から――星の精霊が姿を現した。
見た目は、完全に衰弱した老人のようだった。
「……うう? どこじゃここは?
ワシはもう力が出ぬ……ハイエルフ? 人間?
そして……な、なんと!?」
「貴女様は――!」
星の精霊は少女を見るなり、驚愕し、禿げ上がった頭を床にこすりつける。
少女は、精霊に優しく微笑みかけ、手を差し出した。
「精霊さんも、これを召し上がって?」
「こうすると、美味しくなるのよ」
そう言って少女は、抹茶味ロールケーキに、
メイドカフェで教わった――「おいしくなーれ」をかける。
「おお……麗しきレディー……では、ありがたく。
しかしワシは歯がなくてですな……どれ、もぐもぐ……」
「かあああああああああっ!!!!!」
突如、星の精霊の体が金色に輝き出す。
禿げていたはずの頭髪が逆立ち、大地が震え、空気が一変した。
光が収まった時、そこに立っていたのは――
筋骨隆々の老人だった。
精霊は筋肉を震わせ、満面の笑みでポージングを取る。
「ありがとうございます……麗しきレディー。
これで、この星は――二十四時間、十億年は戦えますぞ」
土は蘇り、作物は芽吹く。
この星に、再び生命が満ち溢れた。
―――
星の精霊は、ひとつの真実を告げた。
「邪神の城は異空間にあります。
そこへ行くには、四天王すべてを倒し、鍵を集めねばなりません」
土呂野勇者は、静かに剣を握った。
「……行こう」
―――
だが、戦いは思ったよりもあっけなく終わった。
転移系スキルを持つムラヤマたちによって、一瞬で現地へ到達。
数多の罠を張り巡らせた難攻不落の四天王の一人――
ダグラマスの居城は、
ヤスダダイキくん(7歳)の
《ちょうめつきょくだいせんめつまほう・あばどん》によって、
城の外から一方的に攻撃され、廃墟と化した。
他の四天王も、地球人、土呂野勇者、レンによって次々と討ち取られる。
すべて順調に進むかに思えた――が。
肝心の「鍵」が、どこにもなかった。
「愚かなり、人間どもよ……
鍵は……ここにはない。
この地にある、火・水・土・風、四つのダンジョンの最深部に……隠されている」
まるでゲームのように次の目的地を告げ、四天王は息絶えた。
―――
「邪神の居城は異空間。
さすがに、私の転移では届きません」
「火のダンジョンは死の大地にある」
「戦力を分け同時に攻略を」
「水のダンジョンは海の底、一体どうやって」
王城の会議室で話し合いが続く中――
「お嬢様、お迎えに上がりました」
どこからともなく、執事が現れた。
そして一通り事情を聞いた執事は、穏やかに微笑む。
「そのような攻略は時間がかかります。
もう夕方ですし、お父様もご心配なさいます」
「よい案がございます。
皆様、あちらに見える闘技場へ参りましょう」
一行は、言われるがまま修復された闘技場へと移動した。
―――
三分後。
闘技場の中央に――
白く整った顔立ちと、神像のように均整の取れた体躯。その影は不自然に揺らぎ、瞳の奥には底知れぬ悪意が渦巻いている。
神そのもの、邪なる神、それが邪神。
その邪神が、執事によって引きずり出されていた。
「ほ、本当に……貴殿は手を出さないのでありますな?」
邪神は、重要な取引先の社長に接するかのような態度で、恐る恐る確認する。
「ええ。
お嬢様は最近、アニメ『ヴァルキレアポカリポス』をご覧になりましてね。
神と人間による闘技場でのバトルに、ご興味をお持ちのご様子なのです」
「ここで、邪神の貴方と、この星の精鋭が戦うという催しを開催しようと、お嬢様のために愚考しましてね」
「邪神殿、もし貴方が勝てばこの星に関して我々は干渉しないと検討しましょう。御館様もご覧のご様子」
「恐れ入ります。そう約束していただけるなら、こちらとしても助かります」
―――あまりの怒涛の急展開に全員が唖然として声も出せない。
―――
急遽決まった邪神 VS 人類の戦い。
既に四天王を失っている邪神からの強い要望で、地球人召喚は、あまりに不公平だという事で無しとされ た。
なお、この戦いの様子はパワーアップした配信ドローンによって、地球はもちろん、この星の各地の上空に現れた謎のスクリーンによっても中継される。
―――
1時間後
闘技場には、配信ドローンの転移魔法によって、地球から、この星の各地から、溢れんばかりの観客が詰めかけていた。
屋台も出ており、たこ焼き、焼きそばや、飲み物等が売られ、完全にお祭りの雰囲気。
「赤コーナー、数々の星を喰らってきた――星喰い――の異名を持つ悪しき邪神―――ポカポリイイティアスウウ!!!
星を終わらせる、まさに究極の悪、そして全生物の敵。
こいつに勝てるやつは、果たして存在するのかああ!」
――マイクを持った、プロレスリングアナウンサー兼実況の、ヤマシタさんが声を張り上げる。
「続きまして青コーナー、かつて破壊神シドなんとかを倒した伝説のパーティーが復活したぞ!
地球に転生し、生まれ変わった元勇者、土呂野ヨシヒトこと土呂野勇者、
そしてえええ、つい先程、記憶から蘇生され、再び勇者と共に戦うのは、
―――戦士ダレン、魔法使いニーシャ!そして僧侶サマンサああ! 」
最後に、地球からの助っ人として、ダンジョンハンター、レンが共に邪神に挑む!」
『やれやれー』『邪神なんてわからせてやれ』 『ぼくもあばどんしたかったなー』『おお、あれは伝説の勇者様とそのパーティーメンバー』『おお、神よ』 『オロカナリ、ジャシンサマガマケルハズナドナイ』 『やべえポテチがもう無い』 『人間が邪神に勝てるのか? 』
地球、そしてこの星の全てに生中継される戦い。
全世界が興奮の渦中にあった。
―――
「ニーシャさん、ダレン!まさか、まだ信じられない。私、ああ…こんな日が来るなんて…」
サマンサは泣き腫らした笑顔で、かつての仲間に声をかける。
「元気だった?サマンサ、もう泣きやんでよ。ってかさ、なんであんた若いままなの?私たちが死んでから二十五年経ってるんでしょ? 」
「さっきメイドの方が来て、みんなと歳が離れてるとバランスが悪いだろうからって、若返らせてくれたんです」
「よくわからんが、俺らが死んでる間、色々あったみたいだな、勇者も転生とか、なんだそれ? 」
「みんな、またよろしく頼むぞ、レン君も力を貸してくれ」
「へえ、キミ、レン君って言うのね、可愛い顔してるじゃない」
「もう、ニーシャさんの男好きは、相変わらずですね!」
「まーねー、死んでも治らなかったみたい、ま、生き返っちゃったけどさ」
「はは、皆さんよろしくお願いします」
「よし、みんな勝とう!」
またみんなと戦える。
今度は守られるだけじゃない。
サマンサは指で涙を拭い、戦いの構えをとる。
そして、戦いのゴングが鳴る。
人類の命運をかけた戦いが始まった。
―――もう1話だけ続く
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