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【祝1万PV】私を人間界へ連れてって ~シンギュラリティな美少女  作者: よっちゃ


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第17話 リアル柿太郎電鉄

 第17話


「年末のゲームといえばこれ、大人気シリーズの、

 ―新幹線で行く新柿太郎電鉄―です! 」



「……あれ?」

 レンがゲーム機の電源を入れる。

 しかし画面は真っ暗なまま、うんともすんとも言わない。

「おかしいな、さっきまで普通に――」


『フラグ』『始まったな』『壊れてるやつだこれ』

『年末あるある』


「どうやら完全に壊れているようですね」

 メイドが淡々と告げる。


「ええええ!? このために用意したのに!?」


 こたつの向こうで、少女が黙ってソフトを手に取った。

 表情はいつも通り穏やかだが、その瞳の奥が、ほんのわずかに光る。


「…このゲームの世界は、すでに存在している」


 少女はそう言って、何やら呟いた。


 次の瞬間――


 空間が軋んだ。

 こたつの下から、カチ、カチ、と規則正しい音が響く。

 畳にうっすらと線が浮かび上がり、それは次第にマス目へと変わっていく。


「え、ちょ、床が――」


 視界が反転する。

 上下の感覚が失われ、次に目を開けた時、そこは――

 巨大な駅だった。


『!?』『え?』『駅!?』『リアルだと!?』

『現実っぽいけどゲームの中? 』


 頭上には青空。

 目の前には、実際のサイズと同じ大きさの日本列島を模した巨大な盤面。


 線路が縦横無尽に走り、その上に――新幹線が並んでいる。


「……あっちの世界と繋げた」


 リアル―新幹線で行く柿太郎電鉄スタート―


 ―――


 ■ チーム分け

「チームは、こちらで決定します」

 AI追尾型配信ドローンが、いつの間にか流暢に喋っている。


「え、配信ドローン!? 喋れたの!?」

「はい、ある高次元のお方のご好意で、特別仕様にアップデートしました。本日は私が進行を担当させていただきます。」


『雑に便利』『仕事増えすぎ』『俺たちも参加してえ』

『リアル柿鉄ワロタw』『ドローン先輩すげえ』


「視聴者様方も参加ご希望ですので、参加してもらいましょう、ではこちらが私が独断で決めたチーム分けです」


 Aチーム : レン様・一般視聴者様チーム


 Bチーム : 女神様チーム(女神こずえ様+同僚女神メタス様)


 Cチーム : 転生視聴者様チーム( 元魔王様・元勇者様・元聖女様 )


 Dチーム : 七次元的超越美少女お嬢様・メイド様チーム


「なお、参加者がこの場にいない場合――転移」


 配信ドローン先輩が術式を展開する。


 空が歪み、次々と人影が落ちてくる。


「うわああああ!?」

「研究室から一瞬で!?」

「今日も仕事なのに!」

「ええ!?女神の私も ? 」


『召喚雑すぎる』『このドローン先輩S級なんかより強いんじゃ? 』『大魔法を軽々と使った!? 』


 そして空中に巨大なスクリーンとサイコロが現れる。


「なお、配信は空中の画面をご覧下さい」

「ゲーム開始前に確認事項があります」


 ドローン先輩が、いつになく司会者然とした声で告げる。


「本企画は年末特別配信につき、勝利チームには賞品が授与されます。ご厚意でお嬢様や女神様、レン様からご提出された賞品はこちらです」


 お嬢様。

 賞品――お嬢様のお屋敷への正式招待」


『うおおお』『それが一番やばい』『次元違うはずだけど行ける仕様? 』『勝ちに行くぞお』


 女神こずえ様。

 賞品――希望する異世界への往復航空券」


『どういうこと? 』『女神様って本当の女神? 』『これ絶対欲しい』『かつての友に会ってみたい』『やるぞ』


 レン様。

 賞品――一日限定、お嬢様の案内役の同行券」


『本気で勝ちに行くぞー』『プロ呼んでこいプロ』

『柿鉄なら俺らが有利だって』


「それでは参加者の皆さま、各自の新幹線にお乗り下さい」


 ―――

 新幹線―お嬢様メイドチーム


 まず少女チームが乗り込んだのは、

 白と淡いピンクの車体。

 先頭には小さなリボン、窓は丸く、車内にはぬいぐるみ。


「……きてぃさんのだ」


『かわいい』『これ実際にあるよね』『癒されるわ』


 ―――

 続いて、レン・視聴者チーム。


 無駄を削ぎ落とした最速型新幹線が、低い唸り音を上げる。


「レン、速度最優先だ。最短ルートで行くぞ」

「いいですね、合理的です」

 視聴者を代表してご足労いただいた高下名人(本人)が作戦を指揮する。


『これ本気で勝ちに行くぜ』『攻略班準備はいいか』

『俺たちの代表だ、頼むぞレン、そして名人』


 ―――

 女神チームは、金と白に輝く豪華絢爛仕様。


「絶対あの子の部屋に行きたいわ、協力してメタス」

「なんで私まで付き合わされるのよ」


 同僚の女神メタス様が愚痴る。


『女神様達の新幹線すげー』『女神様って本当にいるんだ』『女神様応援してますー』『綺麗な人』


 ―――

 転生者チームは実用型。

 地味だが、安定感がある車両だ。


「派手さは不要だ、勝ちに行く」

「異世界往復航空券は魅力だ」

「私これけっこう得意だよ」


 元魔王 : 現教授 元勇者 : 現ハンター

 元聖女 : 現キャバ嬢


『この人達は異世界から来たの? 』『こっちからも毎日のように転生してるけど、あっちからも来てるらしい』『ここには勝てるな』『優勝チームが総取り? 』


 ―――


「視聴者の皆様はどのチームを応援してくださっても構いませんが、一応皆様はレンチーム所属となっておりますので」


「さあそれではゲームスタート」


 ―――


 空中にある巨大なサイコロが振られ( 物理的に )

 出た数によって、リアルサイズの日本列島に描かれた線路を新幹線が進む。


 最初の目的地は鹿児島だった。


『新幹線速えーー』『ゲーム仕様で時速1400kmでてるぞ』『ひいい、怖い』『死ぬうー』



 ―――


 柿鉄ガチ勢、効率厨、そして名人を擁するレン視聴者チームは次々と資産とカードを増やしていく。攻略に全くの無駄がない。まさにプロ技。



 それに続くのは意外にも女神チーム。望み通りのサイコロの目が出るため、青マスや黄マスを踏みながら、目的地にも到着しやすい。



 転生者チームも元聖女の活躍で奮闘するが、なかなか上手く目的地にたどり着けない上に、相手が悪すぎる。



 一方、お嬢様チームは、


「お嬢様、次の目的地は仙台です」


 メイドが地図を指差す。


「でも、広島のお好み焼き食べに行きたい。」

「反対方向ですが構いませんか? 」

「うん、お好み焼き食べにいこ」


 そのまま反対方向へ進路変更。


『お嬢様そっち反対ー』『すみません、俺たち勝ちに行きます』『マイペースだなー』『でもゲームってこうやって楽しむものだよね』『たしかに』


 ―――


 ゲーム開始からすでに三時間が経過していた。


 そして――何か様子が変だ。


 空が暗転した。


 ドスン、ドスン、と地鳴りが響く。

 日本列島を横断するように、巨大な影が近づいてくる。


「ここからはお邪魔キャラが登場します」


 ドローン先輩が静かに告げる。


「初めは最下位のチーム、その後は目的地到着時、一番遠い位置にいたチームにお邪魔キャラが同行します」

「擦り付けもゲーム通りもちろん可能です」


「ウハハハハハハハハハハハハ」

「ダーーーーーイングボッチー」


『でかっー』『あれダイダラボッチ級!?』『デカすぎてくさああ』

『ゲームじゃ愛嬌あるけど、実物はトラウマもんだぞ』『顔がうちの街よりでかくね? 』『柿太郎ランドも捨ててくる仕様か? 』


 角を生やした異形。

 圧倒的な威圧感。

 積み上げてきた全てを一瞬で破壊する恐怖の象徴。


 仮にもしこの怪物にランクをつけるのなら


 SS級モンスター 《ダーイングボッチ》

 世界の絶望。

 全ての存在が畏怖するもの。

 喧嘩の原因。


 その視線が――哀れな最下位の少女チームへ向く。


 富士山並のサイズの化け物が、一歩二歩と近づき、


 少女チームの目の前で止まった。


「フハー、フハー、フハー」


「………」


「………」


「……あ、すみません間違えたかも」


 くるり、と方向転換。


「え?」


 次の瞬間、女神チームへ突進してきた。


「なんでこっちへ来るのよおおお!?」

「ウハハハハハ、次のターンから絶望を教えてやる」


 ―――


 そして始まる悪夢の数々。


 容赦や情けと言う言葉は、破壊王ダーイングボッチの辞書には無い。


「サイコロを振れ、出た目の数だけ」


空中に30個の巨大なサイコロが現れる。


 高い物から物件没収。

 レアなカードからカード没収。

 マイナスになろうが現金没収。


 奪った金とカードと物件は――


 すべて少女チームの前に置かれる。


「ウハハハ、これをどうぞお納めください」


「……?」


『献上してる』『お嬢様の下僕になった』

『転生者共に擦り付けろー』『ああ、それは捨てちゃダメー』『独占が潰された』


 ―――


 元転生者チーム


 元聖女のバフを受け、

 元勇者と元魔王が剣を抜く。


「聖なる光よ」

「これ以上やらせるか! くらえギガデ――」

「闇の力を持って」


「あふっ」


 デコピンでワンパンされた。


 ―――


 女神チーム


「お願い、こっちに来ないでよ」

「私たち女神なのに」


 女神が神力を解放する。


「これ以上させないわ、地上では禁じられているけど、勝つためには何だってする。女神の名において命ずる――」


「無駄だ、無駄だ、無駄だウハハハハハハ」


 ダメージほぼ無し。


 ―――


 レン・視聴者チーム


「名人、何かカードはないですか!? 」

「ダメだ、全部捨てられた 」

『理不尽すぎる』『こっち来るなあー!』

『ああ、奪われていく』『一撃で二兆円だと!? 』


 ―――


 少女、メイドチーム


「お嬢様、次は九州のきてぃさんランドですね」

「うん♪ 」


 少女は、ただ静かに新幹線の旅を楽しんでいた。



 ―――


 終盤


 少女以外のチームは、もう気力も残っていないほど、ボロ雑巾のようにされていた。


「もうみんなのHPは0よお」

「独占も全部やられた」

「まだ、まだ何か方法が」

「マイナス3ちょうえんー」


 その時、少女はダーイングボッチから献上された山のようなカードの中から、一枚に目が止まる。


「……はら、たいらーさんのまさかーど? 」


 伝説の、ハラ、タイラーさんのまさカード。


「お嬢様、それは全チームの全資産、現金などを――完全に平等にするカードですね」


「ふうん」


「使われますか? 」


「―――うん」


 カードが発動する。


 光。

 全チームの資産が、負債も含め均等に再配分される。


『ええええ!?』『全員復活!?』『お嬢様大好きー』

『日本人はみんなこのゲームで世の理不尽さと救いを学んだのよ』


 ―――


 そしてちょうどその時。


「皆さん終了時間です。お集まりください」

「時間も遅いですし、手短にお話します」

「勝負の結果ですが――全チーム同点ですので、引き分けといたします」


 ドローン先輩が宣言する。


「賞品は――全チーム獲得としましょう」



 大歓声。



 メイドはぼそりと言った。


「……ゲームというのは暇つぶしのためにあるのであって―――」

「ダーイングボッチさんありがとう」

「ウハハハ、また会える日を楽しみにしております」


 ―――


 空が戻る。

 駅が消える。

 気づけば、全員こたつの中にいた。


「……あれ、戻った?」



 かくして、リアル新幹線で行こう

 ―――柿太郎電鉄―――は無事に幕を閉じた。



リアル電鉄の話はずっと温めて来たんですが、もう少し手を加えたいかな。


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。 もし少しでも面白いと感じていただけたら、 ブックマークや評価で応援してもらえると嬉しいです。

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