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【祝1万PV】私を人間界へ連れてって ~シンギュラリティな美少女  作者: よっちゃ


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第14話 日常と七次元的美少女

第14話


 朝の光が、屋敷と呼ぶにはあまりにも大きすぎる、ほとんど宮殿のような建物――その一階にある食堂をやさしく照らしていた。


 長いテーブルの中央で、十代半ばに見える美少女が壮年の男性と向かい合って朝食を取っている。

 背後には静かに控える老執事と、整然と並ぶメイドたち。しかし、その光景のすべてが、どこか地球のそれとは違っていた。


「——あちらは、楽しいかね?」

 男性が、穏やかな声で尋ねる。


「はい、お父様。今日も行く予定です」

 少女はそう答え、柔らかく微笑んだ。


「本日のご予定は、地球時間で昼にファミリーレストランにて昼食。その後、秋葉原散策となっております」

 執事が一歩前に出て、淡々と予定を読み上げる。


 テーブルの上には、人間界――特に日本から取り寄せた料理が並んでいた。

 白いご飯、味噌汁、焼き魚、そして――

「この……刺身? のりたま、だったか。それに、納豆?」

 男は興味深そうにナイフとフォークを進める。


「なかなか悪くない。人間、特に日本人は食に対する執着が凄いな」

 超常の存在である彼らにとって、食事は必須ではない。

 だが人間は違う。味、香り、組み合わせ、季節。

 そこに注がれる情熱を、男は素直に評価していた。


「……お父様は、なぜあちらのことを私にお隠しに?」


「い、いや……それはだね」

 男は一瞬、明らかに動揺した。


「元々、どの時間軸でも人間というのは野蛮でね。隠していたわけでは……」


「でも、人間のみなさんはとても親切ですわ」


「うん―今回―の人間は特別だね。実に素晴らしい」


 話題をそっと切り替え、男は微笑む。


「今日も気をつけて行ってくるんだよ」


「はい、お父様。それでは失礼します」


 父に一礼し、部屋へ戻る少女の背を見送りながら、父親は執事とメイドたちに視線を向けた。


「——あの子のこと、頼んだよ」


「は、御館様」


「あの子の力は強い。あの惑星は、

――霊的に生まれ変わってからまだ日が浅い。あの子が力を使いすぎれば、星そのものが耐えられん」


 男は静かに続ける。


「……あちらの管理者にも、改めて話を通しておいてくれ」


 それは命令ではなく、父としての当然の配慮だった。


 食後、少女は屋敷内にある巨大な図書室へ向かう。

 無限に近い蔵書を誇るその空間で、禁書庫の番人が静かに佇んでいた。


「お嬢様、本日は何をお読みになりますか」


「おすすめは?」


「では……こちらはいかがでしょう。執事があちらの世界から取り寄せた、少女漫画です」


「うん。それにする」


 結果、少女は時間も忘れて一気読みする。

 ――とはいえ、三十年間分の量だが。


 お気に入りは『ガラスのマスク』だった。


「お嬢様、そろそろ」


 出かける時間が近づき、少女は部屋へ戻る。


 メイドたちが手際よく支度を始めた。

 クローゼットには、数え切れぬほどの格式あるドレスのほか、日本で買った服や温泉旅館の浴衣まで並んでいる。


「お嬢様、本日のお召し物はいかがなさいますか」


「……あちらで買った服にする」


「かしこまりました」


 十代の少女らしい、少しカジュアルな装い。

 あまりの可憐さに、メイドたちも思わず頬を赤らめる。


……

 少女自身にとっては慣れたことだが、彼女には常に護衛が付いている。

 少女専用の女性騎士団が次元の狭間から地球を監視し、見えぬ形で周囲を固めていた。

 一人一人が、S級モンスターを単独で軽く討伐できる存在。

 万が一があれば、時空と次元を越えて即座に全戦力が介入する。

 ほぼすべての戦力は、少女のためだけにある。

 娘を溺愛する親バカは、どの世界でも共通だった。


「行ってきます」


「行ってらっしゃいませ」


……

 駅前。


 私服姿の少女が現れた瞬間、こずえと視聴者から黄色い悲鳴が上がる。

 少し大人っぽいベージュ系のジャケット。

 プリーツスカートは歩くたびに軽く揺れ、足元はスニーカーではなく、歩きやすさを優先したブーツ。

 高価な素材でも、特別な仕立てでもない。

 だが少女が着ると、それだけで淡く光を放っているように見えた。


「きゃあ、それイオニで試着したやつね! 可愛い、すごく素敵!」


『普段のドレスも素敵だけど、こっちも似合う!』

『可愛いは正義』『今日も楽しみ!』


「……すごく、いいです」

 レンはそう言って、恥ずかしそうに視線を落とした。


 昼食は、ついに東京に初出店した東海限定ハンバーグ店――さわやら。

 朝から整理券を取りに行っていたのは、もちろんレンである。


「ここ、一度食べてみたかったのよねー」


「おいしい」


レンが朝早くから並んだ甲斐があった。


……

 午後、秋葉原。


「おかえりなさいませお嬢様」「きゃー可愛い」「角度によって瞳の色が違うの、可愛すぎ」


 メイドカフェでは、メイドさんたちが少女の可愛さに騒然となり、

 こずえ、そして今日も同行しているリアルメイドを交えた写真撮影大会が始まった。


「おいしくなーれ♪」


 配信ドローンのカメラに向かって、

少女もメイドさんの真似をして、少し照れながらポーズを取る。


『もうね、今日死んでもいい』『今の拡散して』

『今日生きていることに感謝』


……

メイドカフェを後にし、通り沿いのショーケースを眺めていた少女が、ふと足を止めた。

 ガラス越しに並ぶフィギュアの中、その巨大な怪獣に、じっと視線を向ける。


「……あれ」


 怪獣ゴヂラのフィギュアだった。


「あの人形が、どうかしましたか?」


 レンが不思議そうに尋ねる。


「うん。お父様や、爺やが、あれ好きなの」


「へえ……そうなんですね。なんだか意外です」


 少女は少し考えるように首を傾げてから、可愛らしく答えた。


「お屋敷に、――()()()()()()がたくさんあるから」


 隣に立っていたメイドの表情が、ほんの一瞬だけ、硬直した。



……

そんな一行を遠巻きに見守るオタクたち。


「拙者、三次には興味なかったでござるが……

 本日からは、あの七次元的美少女一筋でござる」


 眼鏡のオタクが、ぼそりと呟いた。



 ――七次元的美少女。


意味はよくわからないが、SNSでバズった。


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