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第1章 19節 「平野の天王山」

 秋もすぐに冷え込んでしまった。氷点下を行ったり来たりする。しかし内陸の平野こそ冬らしい景色が見えるのは遅く、青空と草原の間に風が通る程度である。

 ロシアの遊撃隊は主軍の元へ戻った。ワルシャワを徹底的に破壊し、東へ行っている間に軍が創設できないよう抑え込んだ。前の冬に攻めあぐねた町があっけなく崩れる。

 サルナはオルシャの町を出た。ドニエプルの北側を進み、スモレンスクに向かう。

 行軍を止めた。

 「お前ら、渡るぞ」

 工兵に指示を出し、ドニエプルを南に越える橋を架けた。

 そこからはスモレンスクに行くのではなく、南下する。

 ポーランド軍と会敵した。

 こちらの手勢は22000だが、相手は29000まで増強している。ドニエプルと森に囲まれた狭いスペースには丘があった。そこに陣取っている。

 サルナは両翼に歩兵を並べ、自らの騎兵を中央に置いた。ウサギをポンチョに入れてやる。

 右と左を見渡した。

 「ここ、前も通ったっけ。こんなに大きい森なんて見なかったよね」

 ウサギたちを揺さぶる。

 「通ってないや。もうちょい北か」

 後ろに振り向いて川を見ようとしたが、騎兵で溢れていた。

 その1人が指をさす。

 「サルナ殿」

 ベルカを回らせて右を向くと、森が伐採されていた。奥の方だがそれでもはっきり分かる。

 改めて丘を見上げる。柵が築かれていた。

 「建築資材が足りなかったか。よほど急ぎ足で来たのだろう」

 それ以上に、丘の上に柵を築く過剰な防衛意識が気になる。

 「ドイツの傭兵か。全く鈍間だ。自分から攻撃する度胸もないらしい」

 小隊長たちを集め、作戦を伝える。

 「騎兵で森に突撃する。相手は木材を確保するために兵を引き抜いて断固譲ろうとしないだろう。その間に一挙に前進し、大砲で柵を壊してから敵を押し込む」

 会議が解散すると、ポンチョを開いた。そのまま脇腹を蹴る。

 「お前ら、森だ。森で戦うぞ。存分に馬を遊ばせてやれ」

 騎兵が戦列の前を走り、森を目指す。奥から倒壊の音が響いた。

 木々に突入する。

 砲兵が構えていた。

 「はっ?」


 サルナは避けたが後続が薙ぎ払われる。

 ポーランド軍は森を切って道を開き、2方向から攻撃を仕掛けるつもりだったのだ。

 サルナは一旦離脱して丘を見る。不完全な柵の間から敵兵が駆け下りていた。総攻撃である。

 「持ちこたえろっ」

 そう叫び、森に入る。

 サルナは俊敏に木々を避け敵陣に突撃した。全方位から迫るロシア騎兵と順番に貫通して攪乱してやり、森の深いところへ追い回す。騎兵とかち合うと剣を飛ばして木に刺した。そのひびを小銃で広げ、剣で叩き折る。砲兵たちを潰した。

 大爆発で火災が起こり、立て続けに木が燃え落ちる。ウサギを回収しポンチョを閉じた。切り株を踏み切り、火の中を突っ切る。

 丘への道に飛び出すとポンチョを開いて歩兵を轢いた。突かれる槍から先端を切って肘打ちで目を潰し、木に隠れる兵をカーブの連続で斬り回す。斜める体を正すと騎兵が3騎、ばらけて迫ってきた。

 小銃を向ける。


 急旋回すると木を一回転し、剣で倒して飛び出した。丸太に沿うと死体を通過し、踏み切って空からかち合う。剣を宙に回り飛ばすと反転して掴んだ。振り向いてもう1騎に投げ刺し、丸太を飛び越えて手ぶらになった彼の背中を斬る。

 やがてこの周囲が激戦区となった。双方の騎兵が集まって森を駆け、陰から飛び出しては殺し合う。

 上空を跳び回る者があった。

 「ロシア軍指揮官サルナ、お覚悟!」

 飛び降りる彼を加速でやり過ごし、反転する。両側の木を蹴って高度を上げてきた。

 左に逃げるが彼も木の壁を走り曲がってしまう。サルナは小銃を構えた。

 「2度と姿を見せるな」


 しかし飛び降りて剣を振ってきた。銃でかち合うと、撃った木が倒れた。また砲兵を潰す。2人の戦場が火事場と化した。

 サルナはかち合いながらベルカの前足を上げた。ウサギをポンチョに入れ、反転して逃げる。彼が小銃を構えた。


 燃え盛る方へ飛び込み、切り株を跳び回る。

 木を蹴って壁を走り出した。彼が追ってきている。

 剣を額の前に構えた。


 思い切り真横に振り、燃える木の樹冠を背後に切り飛ばした。猛烈な回転で滞空し、やがて落下して轟音が響く。森を飛び出ると、もう彼は追ってこなかった。

 もはや森全体が燃えていた。ポーランド軍は丘へ、ロシア騎兵は平野へ脱出していく。

 麓に迫ると、ロシア軍は丘を駆け下りるポーランド軍に押されていた。崩壊寸前である。

 サルナは戦列を横切り、小隊長たちに命令を出す。

 「全軍撤退、騎兵で追撃を防ぐ!」

 それから騎兵を集め、ポーランド軍に突撃を敢行する。強力な一撃で敵はひるみ、その隙にロシア軍は後退に転じた。陣形の秩序を保ったまま、ドニエプルを渡っていく。

 最後の兵が渡るとサルナは騎兵にも撤退の指示を出した。乱戦から飛び出し、平野を駆ける。

 赤紫の軍服がやってきた。

 「来るな!」

 小銃を撃つが防具に当たる。彼は急加速した。ポーランド騎兵が橋の前に立ちはだかる。

 「押し切るぞっ」

 ロシア騎兵も突進した。

 目的は勝利をではなく通過であるから、かち合うだけで去っていく。スピードを第一に、防御の剣を振る。

 サルナはつきまとわれていた。

 どんなに加速しても並走され、かち合う。別の騎兵が来ると素早い一振りで両側を弾き、彼を背負い投げして赤紫を叩いた。

 何とか川を渡ることに成功し、東へ退却していく。

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