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異世界スタンド 連載版  作者: 汐琉
第一章
8/11

申し訳ありません、暑くて投稿するのど忘れしてました!

「結局全部食べちゃったな……」



 弁当を半分残すか悩んだけど、腐っても嫌なので残さず食べた。

 もうちょっと大きい弁当箱にしておけば良かったなんて、どうしょうもない事を今さら悔やみながら自動販売機で買ったペットボトルの緑茶を飲む。

 まだ朝晩は肌寒い時期なので温かい緑茶があって良かった。



 休憩室のキッチンのシンクで空にした弁当箱を洗っていると水音に混ざって聞き慣れた電子音が聞こえ、その瞬間ど忘れしていた存在を思い出した僕は、洗いかけの弁当箱を放り出してリュックサックへ駆け寄る。

 リュックサックを抱え込み、震える手で開けて取り出したのは少しボロボロになっている青い手帳型のケースに包まれたスマホ。

 充電はしてきているし、最悪の場合充電ケーブルも持ち歩いてるので充電も可能だ。

 何ですぐに思い出さなかったんだろうと自分を責めながら、震える手でスマホを操作する。

 魔法的な何かでもしかしたら誰かにれんらくできるかも



「そんなに甘くないかぁ……」



 動くには動いたが、上部に表示されていたのは無情な『圏外』の二文字。

 ほんの僅かな期待を打ち砕かれた僕は、スマホをしまおうとして、そこではたと手を止める。


 僕が何故急にスマホの存在を思い出せたのか。


 先ほど聞こえたのは確かにメールの着信音だった。

 再度スマホの画面に目を落とすと、圏外だという事に気を取られていて気付けなかったが、メールが来ている事を表すアイコンが光っている。

 僕に連絡してくるのは、数少ない友人と両親ぐらいで。どちらも主な連絡は某通信アプリだ。

 オーナーのおじいさんは、直電のみ。

 メールなんて、広告か何かのどうでも良いメッセージ的なやつしか来ない。

 誰かと繋がってるのではいう希望は、一気に萎んでしまい、僕はため息を吐きながらメールマークを消すためにメール画面を開く。



 そして、目に入って来た文字を見て目を疑う。



「は?」


 差出人を確認するが、文字化けしていて読めない。


 タイトルの部分は『この世界へようこそ』だ。

 この時点でかなりの?マークが脳内に飛び交うが、本文にはさらに大混乱だ。



『今野紺様

 

 この度は挨拶もなく、突然のお誘いとなり、申し訳ありません。

 


 紺様はまだほとんど確認されていないようですが、このガソリンスタンドはこちらへ転移するにあたって、かなりの特異で優れた存在へと変わっております。


 敷地内にいる限り、紺様の身の安全は保証いたします。

 ドラゴンが束で攻めて来ようが、このスタンドの結界はびくともしないでしょう。


 本題となりますが、紺様にお願いしたいのは、このダンジョンでのスタンドの営業です。

 例えどんな相手だろうと王侯貴族に接するようになんて事はなく、紺様の普段通りの接客でお客様へ対応していただければ問題ありません。


 スタンドに関する取扱説明書はレジの下の棚にございます。



追伸


 この点に関しては、早くお知らせしたいので直接メールにてお知らせしておきます。

 レジにてポーションを含めた各種商品の発注が可能ですので、在庫は気にせず販売を行い、お気軽に発注してください。

 スタンドの運用金として金貨十枚を入金済みですので、無駄遣いをされなければしばらくは紺様の生活にも支障はないと思われます。



 こちらのメールは特例でして、返信不可ですのであしからず。



 帰れるかという点を気にしていらっしゃるとは思いますが、大変申し訳ございません。そちらは叶えて差し上げる事が出来ません。

 その代わりに生活に不便がないようスタンドには色々な能力を付加してあります。

 上下水道完備なので、飲水もトイレやお風呂も気にせずお使いください。

 もちろん、光熱費やガス水道料金などは請求しませんので。

 どうぞ、この世界で楽しく過ごしていただけますように、お祈りしております』



「…………えぇと、つまりは、帰れない、のか?」



 色々突っ込みたい所はあったが、まず一番の衝撃はそこだろう。

 いつかは帰れるのではないかという微かな希望は木っ端微塵に砕けてしまった。

 さっき奥の部屋を見て、ここで生活しろって事かと思ったのは、あながち間違いではなかったらしい。


「うあぁーー……っ……!」


 一気に体の力が抜けた僕は、その場にしゃがみ込んで口元を手で覆う。堪えきれず大きな声が洩れ、ポロポロと涙が溢れてくる。

 悔しいのか、悲しいのか、よくわからない感情のまま叫び続けたが、何も変わらない。


 どれくらい泣き続けたか、大声を上げて泣き喚いて、少しは落ち着いた……気がする。


 よろよろと向かうのは新設された方の洗面台だ。冷たい水で顔を洗うとさらにスッキリした。

 顔を上げて鏡を見ると、いつもと変わらない僕が、泣き腫れた情けない顔をしてこちらを見ている。

 とりあえず、無理矢理にでも笑顔を作る。

 やせ我慢だろうが、もう笑うしかない。


「僕は『俺つえー』なんて言って喜べないし……」


 異世界に転移だか転生したなら、特殊な力を貰って「俺つえー」と喜ぶものらしいが、僕にはよくわからない。

 きっとその思考に到れる人は、とても向上心があり、変化に強いんだろう。

 平穏無事を座右の銘にしたいぐらいなタイプの僕とはわかり合えそうもないけど、否定するつもりもない。




 ──そもそもの話として、特殊な力を得たのは、僕じゃなく職場だからなぁ。




 何となく心の中で呟いたら、妙にウケてしまって、僕はしばらくベッドの上で一人笑い転げる事になった。





 笑い過ぎて浮いた涙を拭いながら、僕はゆっくりと体を起こす。



 こうなったら開き直って異世界(ここ)で生きていくしかないんだろう。

 いつかここに来た事も笑い飛ばせるようになるまで。



 けれど、もしも我儘を言えるなら。



「せめて、父さんと母さんには別れの挨拶ぐらいしたかったなぁ」



 僕は失踪した事になってるのか、それとも知らない内に向こうでは死んでしまったのか。



 僕には知る術もない。



 開き直ってと気合を入れたそばから後ろ向きになってしまった事に気付いた僕は、余計な事を考えないようにパンッと両手で頬を軽く叩いて気持ちを切り替え、謎のメールに書かれていた内容の確認をすると決めて部屋を出る。

 やるべき事がある方が余計な事を考えないで済むから。



「……ここは宿直室とでも呼ぶか」




 一歩前進するために、部屋の呼び名を決めてみた。





 特に深い意味はない。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想ありがとうございます(*´∀`*)


主人公も手探りですが、私も手探りです←

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