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異世界スタンド 連載版  作者: 汐琉
第一章
6/11

このままだと、ヒロインがスタンド……。


本日1話目更新です。

「マジでスタンドが主役の異世界転移か。さしずめ、僕はスタンドの付属品かな」


 どれだけこのガソリンスタンドが変わっているか不明だが、自力で給油……というかはわからないが、その作業は出来ないだろうから。

 これは巻き込まれたという認識で良いのか。

 そんな誰へ文句を言えば良いのかわからない不毛な事を考えながら、僕はレジの画面に表示されたスタンドのステータスを眺める。

 建造物のステータスだからか、よくゲームで見るような数値で表されている体力知力みたいなのはない。あるのはレベルと設備に関する事みたいだ。

 色々と書いてあるみたいだが、細かくて今は読む気がしない。

 そんな文字の羅列の中、一つの項目がアピールするように明滅を繰り返していて、どうしても読めという圧力を感じてしまう。

 どうやらここの所有者を示す欄らしいが、そこに書かれていたのは……。


「は? 僕の名前?」


 白い背景に細かい文字の並ぶ中、僕の名前である『今野紺』がでかでかと書かれていて、驚きから声が出てしまう。

 僕はただのガソリンスタンドの店員で、オーナーはおじいさんだ。

 そのはずなのだが、ポーションスタンドとなったガソリンスタンドのステータスには、所有者は僕と書かれている。

 まるで、先ほどの僕の呟きに応えて、巻き込まれじゃなくて僕が所有者だと教えようとしているようなタイミングなんだが……。


「そんな訳無いか。たまたまだよな」


 頭に浮かんだ馬鹿げた考えを振り払った僕は、もう一度ステータスの画面へと視線をやる。

 ここで生きていくために、このスタンドが何を出来るかぐらいは知る必要がある。

「えぇと、まずは地下タンクの残量……だよな、これ? 地下タンクも持ってきちゃってるのか?」


・レギュラー魔力ポーション(ノズル1)

 三七〇〇リットル/六〇〇〇リットル

・ハイポーション(ノズル2)

 一五〇〇リットル/二〇〇〇リットル

・回復ポーション(ノズル3)

 二五〇〇リットル/四〇〇〇リットル

・聖水(ノズル4)

 たくさん



「もう何から突っ込めば良いかわからないんだが……」


 レギュラー魔力ポーションというのは、僕がリアムさんへぶっかけて、上質の魔力回復ポーションだとわかってる。

 ノズルの番号からすると、ハイポーションはハイオクガソリンからの変化だな。

 名前的には、上位のポーションなんだろうか。

 回復ポーションは、体力とか回復するポーションって事か?

 ノズル番号的に、元は軽油みたいだけど。かけるのか、まさか飲むのか?



「色々突っ込みたいけど、一番意味不明なのは、たくさんな聖水だよ……。もう、何が何だか……」



 はぁとため息を吐いて、思わず聖水という文字の部分を指でトントンと叩く。

 すると、吹き出しが出て来て『浄化が出来ます。飲用可。呪い対策にもどうぞ』と説明文が表示される。

 どうやらタップすると説明してくれるようだ。

 僕は次に気になっていたハイポーションを指でタップする。

 魔力でも回復でもなく、ハイが付くポーション。


 嫌な予感しかない。


 出て来た吹き出しには『最高品質のポーション。味はオロ○ミンC。魔力体力気力共に回復。古傷や欠損部分も治癒可能。即死する毒でも死にたてなら治るかも?』との二度見必須な説明文が。

「マジでヤバイやつだ、これ」

 あまりの性能に、ただでさえ少ない語彙が大脱走してこれだけしか言えない。

「…………まぁ、誰もここで売ってるなんてしらないんだし、ここまで買いに来る人もいないか」

 そういう結論でひとまず落ち着いた。



 そんな事より優先して気にすべきものが僕にはある。

 ここがダンジョンの中であり、モンスターという単語からしてヤバさしか感じない存在がいるという事だ。

 今のところ、ここへやって来たのはリアムさんだけだが、いつモンスターが来るかわからない。

 愛らしいポケットに入る系なモンスターでさえ、現実世界で生身で対面なんてしたくないぞ?

 それに考えたくもないが、盗賊的な人間もいるかもしれない。

 何かこのスタンドを守る術が必要だと思う。

 監視カメラだけじゃ心許ない。


 特に、僕は全く戦ったり出来ないので、僕の身が一番ヤバいかも。



 そんな感じで見ていくと、ファンタジーな地下タンク(?)の容量の下には、ファンタジーなスタンドの能力が表示されている。


・結界


 そこには、まさに今欲しいドンピシャな能力があった。

 詳細を知りたくてタップすると、結界の説明も出て来る。


『スタンドの敷地内を安全に保つ不可視の壁。

 悪意や危険のある存在を認識し、スタンド敷地内への侵入を阻む。


 あらゆる攻撃も防ぐ。

 中にいる相手を、所有者が任意で弾き出す事も可能。

 現在のレベルでは結界範囲はスタンド敷地内のみとなる。』


 僕の想像したような結界とは少し違うが、とりあえずこの中にいれば安全らしいので、気が楽になる。

 ずっと外を警戒しているなんて、気がおかしくなりそうだったから助かる。

 気が抜けたら、何だか急にお腹が空いてきてしまった。


 とりあえず今日は朝作ってきたお弁当があるから、それを食べよう。


 ちらりと時計を見ると、ちょうどお昼時だ。


 この世界がまず二十四時間で一日な世界なのか……そもそも一時間が六十分、一分が六十秒なのかもわからないな。

 もし次来店した人が話が通じるタイプなら、色々聞かせてもらおう。

 異世界から来た案件は上手く濁して、リアムさんの言っていた『大魔法使い』様を絡めて質問すれば……。

 そんな事を考えながら、休憩室を兼ねている奥の事務室の扉のノブを掴んで捻る。

 扉を押して部屋の中を見た僕は、開けたばかりの扉をゆっくりと閉める。

 なんとなく周囲を見渡してから、深呼吸する。

 それぐらい目の前の光景が信じられなかったのだ。



「こう来たかぁ……」



 脱力しながらもう一度扉を開ける。


 たぶん危険はない。


 僕は恐る恐る休憩室兼事務室の中へと入る。


 ここには元々小さなキッチンと冷蔵庫、それと売り上げ金を入れておく金庫、休憩用にローテーブルとソファが一つ、それとオーナーのおじいさんが書類仕事をするための事務机があった……はずだった。



「金庫だけはそのままだけど、キッチンは少し大きくなってるし、冷蔵庫も大きくなってる。事務机は無くなってる。なんかソファも増えてるし、そもそも部屋が明らかに広くなってるし!」



 最終的には叫んでしまったけど、僕は悪くないよな?



 今口に出しただけで、かなり劇的な変化だと思うが、僕があえて見なかったフリをしてしまった『変化』がまだ残っている。




「…………なんで中にも扉があるんだよ」



 もう声を張り上げる元気もない。



 背後でレジがピコンピコンと音をさせて主張してきているけど、どちらの確認を優先すべきなんだろうか。



 僕はいつでも逃げ出せるように弁当箱の入ったリュックサックを掴みながら、新たに増えている謎の扉と主張激しいレジを交互に見やって頭を悩ませるのだった。

いつもありがとうございますm(_ _)m


感想ありがとうございます! 油種(?)はこうしました!


全体的にスタンドさんはコンに優しい仕様となっております。

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