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異世界スタンド 連載版  作者: 汐琉
第一章
5/11

本日2話目です、ご注意を。



「これは美味しい」


 自動販売機の飲み物を気に入ったリアムさんは、オレンジジュース、カフェオレ、炭酸飲料と立て続けに三本飲み干し、満足げな表情で呟いている。

「このシュワシュワする感じが良い」

 特に炭酸飲料が気に入ったらしい。

 ここの自販機は大手の赤色がイメージカラーのメーカーの物なので、入っている炭酸飲料といえば黒いアレだ。

 僕も好きな飲み物なので、気に入ってもらえて嬉しい。

 立ったまま飲ませるのもなんなので、ソファに腰かけて休んでもらっている。

 あの血が返り血だろうが、這うぐらいに疲れ果てて……。

 あれ、なんでリアムさん返り血なのに、這うまで疲れてたんだろう。

「……コン、重ね重ね図々しいお願いなんだが、何か食べ物は売っていないかな? 出来れば保存の効く物で……」

 抱きかけた疑問はリアムさんから困り顔でお願いをされた事により霧散する。

「そのまますぐ食べられる物の方が良いですよね」

 頼られると応えたくなってしまうタイプの僕は、大きく頷いてから張り切ってほぼ雑貨店な品揃えの棚へと向かう。

 ざっと見た感じだが、こちらにはレギュラーガソリンのような変化は起きている様子はなく、並んでいる品揃えはいつも通りだ。

「甘い物は苦手でしょうか?」

 まず保存の効く食べ物で思いついたのはカップラーメンと袋ラーメンだが、ダンジョンの中──つまり野営だろうからお湯の準備が面倒そうだし。

 ならばと手に取ってリアムさんを見せたのは、黄色い箱のブロックタイプのバランス栄養食だ。

「甘い物は、疲れた時に食べたくなるぐらいには好きかな」

「なら、こちらはどうですか? チーズの風味が嫌いでなければ……」

 包装を開けて見慣れた直方体をした中身を一本取り出して、リアムさんへ差し出す。チーズ味を勧めたのは、ただの僕の好みだ。

 これを試してみて駄目そうなら、一本で満足出来るようなチョコでナッツを固めたバーもある。

 さらに乾パンやおつまみ系な物もあるのは、オーナーのおじいさんの好みだ。

 少し異色なミニサイズの羊羹は、よく来るお客さんの年齢層を鑑みて用意されている。

 もちろんこちらも人気だ。

「……ん、少し喉が渇きそうだが、美味しいな。何より腹に溜まりそうだ」

 好感触を頂き、一食一箱として六箱のお買い上げだ。

 値段付けをどうしようかとレジを前にして悩んでいると、やたらと主張してくるアイコンがある事に気付く。

「取り扱い物品在庫管理・値段表……?」

 こんな機能はなかったはずだが、今さらもう驚かない。

 アイコンに触って開いてみると、表が出て来てズラズラと取り扱いしている雑貨などの名前と値段、ついでに在庫まで網羅してくれているようだ。

 もちろん値段付けはこちらの世界の貨幣でのもの。

 この表によるとあのバランス栄養食は一箱銅貨二枚。

 他の物も気になったが、今はお客さんを優先しないと。


 サービスルームの中へ入ったリアムさんだが、どうやら見た事もない建物の中で、実際は存在していない『大魔法使い』の存在を警戒しているらしく落ち着かない様子なのだ。


 冒険者というのは、僕は創作の世界でしか知らないが、きっと警戒心とかが強くないとやっていけないのだろう。


 甘い物だけなのも何なので、おつまみ系からビーフジャーキーを選んだリアムさんは、こんなに安くて良いのかと感心し、さらに空き瓶に魔力ポーション(レギュラーガソリン)を買って去っていった。


 無事にリアムさんがダンジョンから出られるように祈りながら見送ってしばらくしてから、僕は重大な事に気付いた。



「あれ……、これって、僕、ダンジョンに置き去りって事なんじゃ……?」



 何故、僕はここに残って、普通にスタンド業務続けられると思ったんだろう。

「過ぎた事は仕方ないけど……」

 次に誰かここへ来てくれたら、ここから一緒に外へ出てみる選択肢も忘れないようにしよう。

 そう心に誓いながら、一人になった僕はずいぶんと変わってしまった職場を見渡す。

 本当ならすぐ確認すべき事があったんだろうが、リアムさんの訪問で色々と吹っ飛んでしまった。

「まぁ、もし外へ出れたとしても、帰るべき場所はここだよな」

 ここにいれば元の世界へ帰れる可能性もあるかもしれない。

 そんな微かな期待もあるけれど、失礼な話、外の世界がそこまで生活環境が発展していると思えないせいもある。

 幸いにも選り好みしなければ食料はしばらくあるので、ゆっくり考えても大丈夫だろう。

 あと、リアムさんがサラッと口にしていたが、ダンジョンにはモンスターが出るそうだ。

 宝箱とかも出るらしいので、一獲千金を狙って冒険者という職業の方が潜っているのだろう。

「そういえば、こういう感じのファンタジー小説とかだと、お決まりの台詞を言うんだっけ」


 確か……。



「ステータス、オープン?」



 うん、わかってた。無反応だよ。何も起きない。


 自動販売機の動く微かな音だけが響く室内で、僕は気恥ずかしさからガシガシと頭を掻く。

 すると、ワンテンポ遅れてレジからピロンという気の抜ける音が響く。

 まるで僕の声が聞こえたかのようなタイミングに、驚いてビクッと肩が跳ねてしまう。

 警戒したがそれ以上の変化はなく、僕は恐る恐るレジへと近寄って画面を覗き込む。


 そこには──。



「ポーションスタンド……レベル1……?」



 まさかの僕のではなく、このスタンドのステータスが表示されていたのだった。


いつもありがとうございますm(_ _)m


感想ありがとうございます!少しでも楽しんでいただけたら幸いです。


少しうだうだ悩む主人公ですが、あくまでもエセシリアスなので病むことはない能天気な主人公なので……。

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入れるモノとしてレギュラー.ディーゼル.ハイオク. 灯油?と空気?
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