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第二話

はぁ………。


すっかり明宏にやられてしまって財布がすっからかんになってしまった。

賭けボーリングなんて、そうそうするもんじゃない。

今僕はゲームセンターから自宅に向かう途中。

しかし…。

「あの…大丈夫?白崎君。」

「えっ!?」


そう本来は一人で帰るはずだったのだが。

「白崎君も帰り道がこっちなんだ。奇遇だね。」


僕の隣には鳳来寺はつりと藍原小蒔がいる。



「わーるいねぇ閃理くん。あんなに勝たせてもらっちゃって。」

そして前方からは缶ジュースを持ってきた明宏が。

僕にコーラ。鳳来寺と藍原にはココアを差し出す明宏。

「負けたのは負けだから。仕方ない。」

ここで明宏に文句を言ったとしても、あとで何を言われるかわかったもんじゃない。

「今日はオレが奢らせてもらうぜ!」

「何言ってんだよ!このジュース代って閃理君のお金だろ?」

藍原が喰ってかかるが明宏は聞く一切耳を持たない。


「負けたんだから、仕方ないよ。みんな飲もう。」

プシュッとコーラの缶を開ける。明宏も僕の言うとおりだと言わんばかりに頷いて見せた。



「いただきます。」

「白崎君!ありがとね。」

4人でジュースを飲みながら下校する。

これを青春と言うんだろうか。

中学生の時は部活もやっていなかったし、三年生の時は受験に追われ勉強に明け暮れる毎日だった。

この三人はどうだったんだろう。

明宏は大体想像がつくが、鳳来寺と藍原は何をしてたんだろうか。

明宏のおかげで二人と話す機会があったので、藍原は弓道部に入部することがわかり、鳳来寺はクラス委員で一年生代表に選ばれたということを知った。


あまり同年代の女子と話すことがなかったので、いささか緊張もしたし、何より手汗などの変な汗が出て、顔色が悪くなっていると藍原に心配された。


「ねぇ白崎君。」

突然鳳来寺が僕を呼んだ。

「あ。うん。どうしたの?」

「うぅん。なんでもない。ジュースご馳走様でした。」

首を振って訂正する鳳来寺、どことなく顔を赤らめているのが不思議だが、夕日のせいだろう。



午後7時―――白崎家





なんの変鉄のない我が家。


お金持ちでも貧乏でもない白崎家では、今日もいつもと変わらずこの時間は夕食の支度をする時間だ。




「閃理学校楽しかった?」


僕がテーブルに食器と茶碗を並べている時に、後ろから柔らかな声がした。


「うん。友達もできたよ。」


声の主は、僕の妹の庵理(あんり)だった。今年幼稚園に入園して、入園祝いにさくらんぼの形をしたヘアゴムを買ってもらってサイドアップのポニーテールがお気に入りの女の子だ。


とりあえず、簡単に言えば聞き分けのできる元気っ子といったところだろう。



「あんりもお友達できたよ!こーんなくらい!」


肩が外れんばかりに手を広げて友達の…



えっと。これってなんの大きさ?




「やったじゃん。」


パチン。とハイタッチを交わし、(庵理はピョンと跳ねながら)僕は上手く庵理を誘導して夕食の支度に取り掛かった。









同時刻―――バスターミナル付近。鳳来寺はつりは帰宅途中であった。


親友の藍原小蒔とバスターミナルで別れて、ここからは十分歩いて自宅につく。


今日はクラスメイトの指宿明宏に誘われて、いつもより帰りが遅いようだ。


季節は冬を越して陽気な春だが、夕方になるとまだ冬の残り香が漂う寒さを感じる。



春なのに寒い。




息を吹き掛け手を温めながら帰宅するはつりの目に、ある一点の流れ星が見えた。



流れ星といっても、空からビー玉が落ちて来た。と思っても過言ではない程のモノだった。





何かが落ちてきた。




夕暮れを過ぎ、空はすでに薄暗い闇に覆われる時間に線香花火のような小さな光のビー玉が、彼女の瞳に映った。


―――――――たったったったっ。



光はこの辺りに落ちたはず。



バスターミナルから二キロ程離れた人気のない小さな公園。


市の管理が行き届いてないせいか、草木が伸び放題のこの公園。


そのせいか、町中よりも公園は一際暗かった。



「たしか、この…辺りに」






あった。



草むらの中で小さく輝く光。


ざくざく草むらを掻き分けて進むと、はつりは一匹の動物を発見した。



「やっぱり…」


鳥。だと思った。



彼女は昔、鳥を飼っていた。




大切に飼育していたが、ある日籠から逃げてしまって、それ以来彼女はペットと呼べる生き物を飼っていない。

勘とも言えるのだろう。直感的に彼女は落ちてくる光を探していた。


無意識に、その光を昔飼っていた鳥と投影させていた。



彼女の心の拠り所が、ペットにしかなかったのだった。



「鳥が…光ってる…」




そっと、優しくその光を両手で包み込んだ。







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