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隠密〜あやかしの警察官〜  作者: 梅雨


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9/15

緊急任務終結

緊急任務も終盤。

朝陽にとっては、ある意味忘れられない1日でしたね。

「……すまない」


 昇栄はそれだけを告げると、迷いなく弦の首筋に正確な一撃を入れる。

 弦は身体から力が抜け、崩れ落ちるように気を失った。

 

 その光景に、朝陽以外の3人が一斉に顔をしかめた。

 暁斗は肩をすくめ、明日香は思わず目を逸らす。昴は背筋を震わせた。


 一方で朝陽は、まだ現実感のない目をして立ち尽くしている。


 昇栄は弦の呼吸を確認し、静かに立ち上がった。


 「日和」

 『……はぁい?』


 通信の向こうから、気の抜けた声が返る。


 「忘術の例外が出た。本部へ連れて帰る。回収班を向かわせてほしい」

 『……はぁ!?』


 裏返った声と、一瞬の沈黙。


 『……分かった。私も向かうよ。ちょっと気を抜いてた』


 通信が切れる。


 *


 それほど時間を置かず、日和と回収班が到着した。


 「日和。この青年なんだけど、リストにいるかい?」


 弦の姿を確認した日和は、首を傾げる。


 「いないなぁ」


 リストとは、これまで忘術を受けた者の詳細が記された極秘資料。

 管理しているのはサーチ班だ。


 「霊力反応もなし。見た目も、どう見ても人間……」


 日和は眉をひそめる。


 「とりあえず本部へ持ち帰ろう。長の判断を仰ぐよ」


 昇栄はそう言ってから、振り返った。


 「暁斗、明日香。今回は任務失敗として記録を頼んだよ」

 「了解でth」

 「承知しましたっ」


 2人は即座に応じた。


 「日和、昴、朝陽。君たちは私と一緒に長のところへ向かう」


 「……はい」

 「は、はい……」

 「……」


 返事をしながらも、3人の顔色は冴えない。


 昇栄はふっと息を吐き、淡々と続けた。


 「金鎖を人間に見られた者たち。指揮を取っていた隠密の指示を無視した者。任務外だった部下を危険に晒した者」


 一拍置いて。


 「さて。どんな未来が待っているかな」


 冗談めかした口調とは裏腹に、昇栄の目は死んでいた。


 日和は遠くを見るように視線を逸らし、

 昴は目に見えてガタガタと震え始める。


 「oh……」


 暁斗が小さく呟いた。


 2人は長のもとへ行かずに済む安堵と、残された者たちへの申し訳なさが入り混じった何とも言えない表情をしていた。


 数秒遅れて、朝陽の思考が現実に追いつく。


 「……え?」


 そして全てを理解した次の瞬間。


 「いやぁあああぁぁーーー!!」


 路地裏に悲鳴が響いた。


 *


 ――ひとけのない離島。


 荒波が岸を叩き、人の侵入を拒むかのように唸りを上げている。


 島の奥、人の手が一切入らない樹海の中に、歪んだ空間が存在した。


 そこを抜けると、巨大な屋敷が姿を現す。

 寝殿造りを思わせる異様な建築。


 大広間の奥、一段高くなった場所には、月の満ち欠けが描かれた大きな幕。


 その中央、屋敷の造りには不釣り合いな玉座に、スーツ姿の男が肘をつき腰掛けていた。


 渦巻く風の中から、先ほどの男が片膝をついて現れる。


 「どうだ」


 低い声。


 「例のガキは見つかりました。ただ……邪魔が入りました」


 「それ、言い訳?」


 どこからともなく、短い銀髪を揺らした美女が現れ、玉座の隣に立っていた。


 「!!い、いえ……言い訳ではありません。相手は複数人の天道、1人は隠密だと思われます」

 「今回はガキの外見、例のものは確認できています。現在は天道の敷地内にいる可能性が高いかと……」


 男は焦った様子で報告する。


 「……あぁ」


 スーツの男は淡々と話す。


 「人間界よりは面倒になるが、回収はできる」

 「引き続き、桂の末端を対応しておけ」


 「はっ!」


 その言葉を最後に、男は風に乗って姿を消した。


 「ねぇ、甘くない?」


 銀髪の女が、静かに問いかける。


 「計画に遅れが出なければ、それでいい」

 「オマエこそどうなんだ?」


 男の問いに女が怪しく微笑む。


 「こっちはいつでもオッケーよ」


 「ふっ」

 スーツの男も不敵に笑った。

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