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任務完了!そして…

 カマイタチの男は、朝陽の金鎖にぐるぐる巻きにされながら、白目を剥いて気絶している。

 

 その横には浮かない顔をした朝陽。


 「そんな顔すんなよ! 俺なんてデビュー戦は任務失敗だったんだぞ!」

 「それよりも、分かってあの作戦を立てたんだろ〜これからだよ! ()()()


 「その呼び方しないでよ。分かってるから伝えたんだもん。だけど、敵から言われるとかなり刺さった……」


 朝陽が提案した作戦とは、朝陽が先に男を金鎖で斬り、気絶しなかったことで調子に乗った男を昴が後ろから斬りつけるという内容だった。

 最初から男が気絶しない前提で進められたものであった。

  

 昴のおちゃらけた慰めを受け、弱音を吐きつつも少し笑みが戻った朝陽。


 (立場上、霊力低いのは余計ダメだって……)


 実は、朝陽は天道一族の長である燦燦(さんさん)の孫娘。

 一族を代々指揮してきた家系のため、朝陽は誰よりも霊力が強くなければならないと感じていた。


 「それよりも、隠密に近づけたんじゃない? ()()()()


 朝陽は空気を変えようと昴を茶化し出す。


 昴は朝陽の2歳年上の先輩。同年代の中では成績トップの隠密候補なのだ。


 “隠密(おんみつ)”は天道一族選りすぐりのエリート達の呼び名だ。

 彼らは族長の指示のもと最上位ランクの犯罪者の捕縛任務を遂行する。


 「お前もその呼び方昔からやめろよ!」


 隠密は数千人いるとされる天道一族の中で、現在は10人のみしか存在しない。かなりの狭き門である。

 しかし、昴は20歳という若さで最も隠密に近い者として声が上がっている。


 満更でもなさそうな表情をしている昴に、朝陽は追撃しようとしたその時。


 『はいはい。おつかれおつかれ』

 「!」

 「!」

 

 二人のワイヤレスイヤホンから声が聞こえた。


 「昇栄(しょうえい)さん!?」


 昴が声を裏返らせて驚いている。


 彼は隠密の一人であり、その中でもトップの存在である。昴が驚くのも無理はない。


 『私の管轄下で二人が任務すると聞いて、日和(ひより)が蟲で様子を見ていたんだよ』


 隠密の管轄地区は、東京・北海道・東北・関東・中部・近畿・中国・四国・九州沖縄と9つ存在し、それぞれ隠密が一人配属されている。

 昇栄は東京を管轄して動いている。


 「日和さんまで!?」

 『どうも〜』


 イヤホンから日和の声も聞こえ、昴がひっくり返りそうになっている。

 朝陽が周りを確認すると結界の端に黄金色に輝く小さな虫がいた。


 日和も隠密の一人だ。彼女の金鎖は蟲である。蟲は日和の脳内を通してその場の状況が確認できる。

 いわゆる、後方支援のエキスパートである。

 彼女の管轄は無く、犯罪者の捜索や時空の歪みを確認するサーチ班の一員として、全国に蟲を飛ばしてパトロールする役割を担っている。


 金鎖は武器だけではなく、術者の霊力の特性によっては生物にもなり得るのだ。


 『朝陽は初戦だし、昴くんは隠密候補だとしても、まだ任務期間2年と経験は浅い。リーダーとしての判断力に欠ける。私は大変心配したんだよ。誰だいこんなオーダーを出したのは?』


 昇栄にはっきり言われ、昴は肩を落とす。


 「おば……燦燦様……です」


 朝陽は気まずそうに答えた。


 『はは。そうか。長だったか。話しやすい幼馴染を初戦のバディにするとは、長はずいぶん孫に優しいようだ』


 「……なっ!」


 祖母を悪く言われたような気がして、朝陽は反論しようとしたが


 『だが、私の考えは杞憂だったようだ』


 二人はきょとんとする。


 『朝陽は初戦にしてはいい動きをしていたよ。昴くんは朝陽を見守りつつ、彼女が動きやすいようにサポートする器用さを見せていた。二人ともよくやっていたよ』


 昇栄は二人の戦闘での動きを評価した。


 「「ありがとうございます!」」


 二人は声を合わせ、満面の笑みを浮かべた。


 『それじゃあ、捕縛者を回収したいから、合わせ鏡で二人の場所をサーチ班に教えて欲しい』

 

 昇栄の声かけに二人は手鏡を取り出し合わせ鏡を作った。


 天道一族は、全国各地で結界を張り捕縛任務のため戦闘をしているため、任務完了がどこで行われたのか分かりづらい。

 そのため一族では、合わせ鏡を用いて時空を歪ませ、目印としている。

 

 『昴・朝陽。マーク発見しました。今から回収班を向かわせます』


 サーチ班が二人に応答する。


 『ゆっくり休んでね』


 昇栄が挨拶し会話は終了した。

 しばらくすると、合わせ鏡の真ん中の空間が裂け、回収班三人が裂け目から現れた。


 「コイツっすね」

 「今から手枷着けますね〜。金鎖解いていいですよ」

 「お二人とも、回収日時の確認とサインをお願いします」


 カマイタチの男は手際よく手枷をつけられ担架に乗せられた。


 回収班が先程の裂け目から帰ろうとしたその時、左目に眼帯をした大男が裂け目から現れた。


 「おじさん!?」

 「昇栄さん!?」


 二人がそれぞれ驚く。

 深刻な顔をした昇栄は口を開く。


 「どうやらゆっくりできないようだ……」

 

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