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隠密〜あやかしの警察官〜  作者: 梅雨


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退屈

紹介が遅れました!燦陽の秘書たちです。


千晴ちはる/女性

燦陽の護衛兼秘書。

金鎖は拳銃です!


照久てるひさ/男性

燦陽の護衛兼秘書。

金鎖は大刀です!


 千晴の方が秘書歴が長く、照久はサポートを主にしています!

 護衛は照久がメインで行います。

 翌朝。


「へぇ……本当に、間に朝日が昇るんだな」


 弦は窓辺に座り、“朝陽が登る木”をじっと見つめながら呟いた。

 2股に分かれた幹の隙間から、柔らかな光が差し込んでいる。


「……てか、俺、いつまでここにいればいいんだ?」


 ふと現実的な疑問が湧く。

 その瞬間、控えめに扉が叩かれた。


「はい」

「おはようございます。朝食の準備が整いました。お持ちしてもよろしいでしょうか?」


 若女将が、にこやかに問いかける。


「お願いします。あと……ここ、いつまで居ればいいんですか? 一応、学校もあるんですけど」


(まあ、いつもサボってるから問題ないけど)


 弦は心の中で付け足す。


「……そうでございますね。確認して参ります。朝食をお持ちする際に、お伝えいたします」


 そう言って、若女将は静かに退室した。


 もっとも、彼女が“仮の姿”であることを、この場で知る者はいない。

 その正体は燦陽の直属の部下であり、裏では過酷な任務を幾度も潜り抜けてきた熟練者だ。



 若女将からの報告を受け、燦陽は腕を組んで唸る。


「そうじゃの……。本来は明日の会合の結果次第と考えておったが、どうやら退屈しておるようじゃな」

「確かに、理由もなく部屋に留め置くのは不自然です。今後の説明にも無理が生じます」


 千晴が冷静に意見を述べる。


「父親には警察を装って連絡を入れておりますが、今のところ動きはありません」


 照久も情報を補足した。


「……こちらとしては助かる話じゃ。家族側が騒げば、人間界に戻して監視する手もあったが……家庭環境に問題を抱えている可能性もあるの」


 燦陽は、ほんのわずかに同情を滲ませる。


「それでしたら、勉強を教えるというのはいかがでしょう。高校3年生であれば、進路の話も出ているはずです」

「通学先の教材なら、すぐに手配できます」


 千晴の提案に、照久も頷いた。


「……良いじゃろう。できれば、あの者に関わる人数は増やしたくない。大変じゃが、昇栄と昴に頼むとするかの」

「朝陽には、追加で自宅待機を命じる。念には念を、じゃ」


 昴は年も近く、会話役としては適任だろう。

 燦陽はそう考えつつ、これも“やらかした代償”かと、どこか楽しげでもあった。



「……」


 その依頼を聞いた昴は、言葉を失った。


 昨日あれほど覚悟を決めたというのに、まさか弦の監視兼・教育係とは。がくりと肩を落とす。


 しかも教材は、すでに完璧な状態で揃えられていた。

 天道一族には、人間界とつながる裏の流通網が存在する。あやかしの存在を伏せたまま社会を支える者たちだ。


(難し……マジかよ)


 弦の通う高校は、東大進学者を多数輩出する名門校。内容のレベルも当然ながら高い。


 だが、族長直々の命令を無下にはできない。

 気乗りしないまま、昴は弦の部屋へ向かった。



 弦は朝食を終え、再び窓の外を眺めていた。


(明日までは宿泊、ね……。つまんねぇな。外、出ちまおうかな)


 若女将の言葉を思い出しながら、密かに悪だくみをする。


 その時、扉が叩かれた。


「失礼します。退屈でしょうから……木村さんの高校の教材をお持ちしました」


 かったるそうな声と共に、昴が入室する。


「あ、あの時の……人間離れした人」

「……やっぱ覚えてたか」


 弦にとって昴は、ビルを駆け上がり、空から降ってきた超人だ。

 昴も、記憶されていること自体は想定内で、ため息をつく。


「退屈だろ? 勉強しろよ」


 友人に話すような口調で、どこか上から目線。


「やだよだりぃもん。外、出してくんね?」


 弦も遠慮なく返す。


「おいおい。一応2つ上の先輩だぞ。敬語くらい使え」

「いいじゃん、硬いこと言わなくても。先輩、話しやすいんだもん」


 屈託なく笑う弦に、昴は一瞬たじろぐ。


(人たらしだ)


 そんな印象が、はっきりと胸に残った。


「……まぁいいか。数Ⅲからやるぞ。今どこまで進んでる?」


 昴が強引に話を進めようとした、その時。


「ねえ、先輩」


 弦が、ふと真顔になる。


「この前助けてた……あのコ。好きでしょ?」

次回!

昴 vs 弦 トークバトル!!

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