退屈
紹介が遅れました!燦陽の秘書たちです。
千晴/女性
燦陽の護衛兼秘書。
金鎖は拳銃です!
照久/男性
燦陽の護衛兼秘書。
金鎖は大刀です!
千晴の方が秘書歴が長く、照久はサポートを主にしています!
護衛は照久がメインで行います。
翌朝。
「へぇ……本当に、間に朝日が昇るんだな」
弦は窓辺に座り、“朝陽が登る木”をじっと見つめながら呟いた。
2股に分かれた幹の隙間から、柔らかな光が差し込んでいる。
「……てか、俺、いつまでここにいればいいんだ?」
ふと現実的な疑問が湧く。
その瞬間、控えめに扉が叩かれた。
「はい」
「おはようございます。朝食の準備が整いました。お持ちしてもよろしいでしょうか?」
若女将が、にこやかに問いかける。
「お願いします。あと……ここ、いつまで居ればいいんですか? 一応、学校もあるんですけど」
(まあ、いつもサボってるから問題ないけど)
弦は心の中で付け足す。
「……そうでございますね。確認して参ります。朝食をお持ちする際に、お伝えいたします」
そう言って、若女将は静かに退室した。
もっとも、彼女が“仮の姿”であることを、この場で知る者はいない。
その正体は燦陽の直属の部下であり、裏では過酷な任務を幾度も潜り抜けてきた熟練者だ。
*
若女将からの報告を受け、燦陽は腕を組んで唸る。
「そうじゃの……。本来は明日の会合の結果次第と考えておったが、どうやら退屈しておるようじゃな」
「確かに、理由もなく部屋に留め置くのは不自然です。今後の説明にも無理が生じます」
千晴が冷静に意見を述べる。
「父親には警察を装って連絡を入れておりますが、今のところ動きはありません」
照久も情報を補足した。
「……こちらとしては助かる話じゃ。家族側が騒げば、人間界に戻して監視する手もあったが……家庭環境に問題を抱えている可能性もあるの」
燦陽は、ほんのわずかに同情を滲ませる。
「それでしたら、勉強を教えるというのはいかがでしょう。高校3年生であれば、進路の話も出ているはずです」
「通学先の教材なら、すぐに手配できます」
千晴の提案に、照久も頷いた。
「……良いじゃろう。できれば、あの者に関わる人数は増やしたくない。大変じゃが、昇栄と昴に頼むとするかの」
「朝陽には、追加で自宅待機を命じる。念には念を、じゃ」
昴は年も近く、会話役としては適任だろう。
燦陽はそう考えつつ、これも“やらかした代償”かと、どこか楽しげでもあった。
*
「……」
その依頼を聞いた昴は、言葉を失った。
昨日あれほど覚悟を決めたというのに、まさか弦の監視兼・教育係とは。がくりと肩を落とす。
しかも教材は、すでに完璧な状態で揃えられていた。
天道一族には、人間界とつながる裏の流通網が存在する。あやかしの存在を伏せたまま社会を支える者たちだ。
(難し……マジかよ)
弦の通う高校は、東大進学者を多数輩出する名門校。内容のレベルも当然ながら高い。
だが、族長直々の命令を無下にはできない。
気乗りしないまま、昴は弦の部屋へ向かった。
*
弦は朝食を終え、再び窓の外を眺めていた。
(明日までは宿泊、ね……。つまんねぇな。外、出ちまおうかな)
若女将の言葉を思い出しながら、密かに悪だくみをする。
その時、扉が叩かれた。
「失礼します。退屈でしょうから……木村さんの高校の教材をお持ちしました」
かったるそうな声と共に、昴が入室する。
「あ、あの時の……人間離れした人」
「……やっぱ覚えてたか」
弦にとって昴は、ビルを駆け上がり、空から降ってきた超人だ。
昴も、記憶されていること自体は想定内で、ため息をつく。
「退屈だろ? 勉強しろよ」
友人に話すような口調で、どこか上から目線。
「やだよだりぃもん。外、出してくんね?」
弦も遠慮なく返す。
「おいおい。一応2つ上の先輩だぞ。敬語くらい使え」
「いいじゃん、硬いこと言わなくても。先輩、話しやすいんだもん」
屈託なく笑う弦に、昴は一瞬たじろぐ。
(人たらしだ)
そんな印象が、はっきりと胸に残った。
「……まぁいいか。数Ⅲからやるぞ。今どこまで進んでる?」
昴が強引に話を進めようとした、その時。
「ねえ、先輩」
弦が、ふと真顔になる。
「この前助けてた……あのコ。好きでしょ?」
次回!
昴 vs 弦 トークバトル!!




