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隠密〜あやかしの警察官〜  作者: 梅雨


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12/15

記憶

 燦陽たちは、眠る弦のもとへと辿り着いた。


 畳敷きの客間。窓から差し込む柔らかな光の中、弦は静かに横たわっている。

 その首元へと近づき、燦陽はそっと視線を落とした。


 「……これが、例のネックレスじゃな」


 指先を触れさせることなく、間近で観察する。

 確かに、ほんの僅か意識を澄ませなければ掬い取れぬほどの霊力が漂っていた。


 「ごく微弱じゃが、霊力を帯びておる」

 「「……」」


 初めて接触した千晴と照久は、首を傾げたまま言葉を失っていた。

 どれほど意識を集中させても、彼らには何も感じ取れない。


 「やはり、私には感知できません」

 「天狗は、相当な感知能力の持ち主ということでしょうか?」


 昇栄の問いに、燦陽は静かに頷いた。


 「そうじゃな。あれほどの精度を持つ者は稀じゃ。……私も、この距離まで近づいて、ようやく感じ取れたほどじゃ」


 一拍の沈黙の後、燦陽は決断する。


 「明後日の会合で、天狗の長と桂の長へ、至急会談を申し入れよ」

 「承知しました」


 照久は一礼すると、足早に部屋を後にした。


 その時、


 「……ん、ぁ……」


 かすかな声とともに、弦が身じろぎをする。


 「目を覚ますようじゃな」

 「日和は私と外で様子を伺う。昇栄、この者から出来る限り情報を引き出せ。念のため、通信は繋いでおけ」

 「承知しました」


 小声で指示を交わし、燦陽と日和、千晴は部屋を後にする。


 やがて、弦はゆっくりと目を開けた。


 「……なんか、首いてぇ……あ、さっきの特殊部隊の……」


 首元を押さえ、記憶を辿るように呟く弦に、昇栄はすぐさま柔らかな声を向けた。


 「すまなかったね。少し急いでいて、運び方が乱暴になってしまった」

 「いや……色々ありすぎて、夢なんじゃないかって思ってて」


 弦も苦笑いをしながら返事をする。


 「ははは。隊員は日々訓練しているからね。一般の人には、少し刺激が強かったかもしれない」

 「念のため、名前をもう一度確認してもいいかな?」


 「木村弦、です」

 「ありがとう。木村くん、と呼ばせてもらうよ」

 「はい。それで……ここは?」


 弦が恐る恐る質問した。


 「ここは、とある旅館でね。特殊部隊に遭遇した人は、体調確認のためにここで休んでもらうんだよ」


 昇栄は終始穏やかな口調で、弦の警戒を少しずつ解いていく。


 「へぇ……」


 弦は部屋を見回し、ふと何かを見つけて笑顔になる。


 「あ!ここ、泊まったことあります!!」

 「……え?」


 思わぬ言葉に、昇栄の声がわずかに裏返る。


 「いや、それは……ないと思うけどな。この旅館は、特殊部隊の管轄でね」

 「でも、間違いないっすよ」


 弦は立ち上がり、窓の外を指差した。


 「あの変な形の木。朝日が昇る木ですよね?」


 「……!」

 「ああ……確かに、あの二股に分かれたところから朝日が昇る。宿の名物でね」

 「よく知っているね。以前来たのは、いつ頃かな?」


 話を合わせつつ昇栄は尋ねた。


 「うーん……あんまり覚えてないんすけど……5歳くらい?」


 『5歳……』


 昇栄の耳に、通信が入る。


 『昇栄。その者の年齢を確認せよ』


 「かなり前かな?木村くんは今何歳?」

 「18っす!」


 『18……そのまま続けよ。こちらは外す』


 通信が切れ、同時に外廊下を急ぐ足音が遠ざかる。


 「長、どうなさいましたか?」


 千晴の問いに、燦陽は歩みを止めずに答えた。


 「あの者が言った“朝日が昇る木”は、一族の御神木じゃ。そんな名前ついておらん」


 日和が、はっと息を呑む。


 「……まさか」


 「そうじゃ。きっと“朝陽が登る木”と言う意味じゃろう。」

 「御神木に登った馬鹿は朝陽しかおらん!!」


 燦陽は振り返り、2人に言い切った。


 「今すぐ、朝陽のもとへ向かうぞ」

今頃、朝陽は昴と焼肉食べてます⭐︎

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