EP19:メイン・ミント
俺はメイン・ミント。今年で15歳だ。
俺の一族は代々、剣術の才に長けている家系だ。
ミント家といえばそれなりに名も通っている。
そして、俺には5つ上にお姉ちゃんがいる。
名前は[サブ・ミント]めちゃくちゃ可愛い。
お姉ちゃんは一族の中でも群を抜いて剣術の才能があった。
12歳の時には既に、剣の全てにおいて父を超えていたと思う。
俺はそんなお姉ちゃんの事をまるで自分自身かの様に誇らしいと思っている。
そしてなにより、俺はそんなお姉ちゃんが大大大好きだった。
この感情は、人として好き…とか、尊敬する好きという浅はかなものでは無い。
俺はお姉ちゃんを愛していたのだ。
♡♡♡♡♡だ。
そして、愛しているという事はつまりはそういう事でもある。
お姉ちゃんと抱き締めたい!
お姉ちゃんとキスしたい!!
お姉ちゃんの体に触れてみたい!!!
お姉ちゃんを犯したい!!!!
だが、そんな劣情を日々、俺は自分の心の奥深くに押し殺していた。
だって兄弟だから……。
でもそんな生活に耐えられる程,俺はまだ大人じゃ無かった。
俺が丁度10歳の誕生日を迎えた頃。
もう我慢の限界だった。
なんでもいい!
なんだっていいからお姉ちゃんに触れたい、揉みたい!挿れたい!!
そんな感情とも言えない欲が自分の内側で溢れ返っていた。
そして俺は、その日の夜、お姉ちゃんの寝込みを襲おう事にした。
お姉ちゃんを犯す……そう決めてしまったら、俺はもう止まる事を知らなかった。
――
その日の事は今でも鮮明に覚えている。
日が落ち…夜になったのに、とにかく蒸し暑かった。服の内に汗が滲み、ベタベタとする皮膚…。
だが俺はその不快感よりこれからの快感に胸躍らせていた。
お姉ちゃんの部屋は部屋を2つ挟んだところにある。
俺はお姉ちゃんに気づかれない様、足音を消しながら一歩一歩進んでいく。
夜は不思議だ、自分の息さえ鮮明に聞こえる程静かになる。
人が寝ていて物音が発生しないのもそうなのだろうが、耳が敏感になっているんだ。
だからなのか……俺はお姉ちゃんの部屋に近づくに連れ、お姉ちゃんの部屋から物音がするのにいち早く気がついた。
お姉ちゃんは真面目だ、堅物とも言える。
今日は夜遅くまで剣の手入れでもしているんだろう。
だから俺は部屋の前で息を殺し、お姉ちゃんが寝静まるまで待つ事にした。
既に我慢の限界だったがここまできたら苦では無かった。むしろこれからお姉ちゃんに好き放題できるというワクワクが勝っていた。
そして、待ち続ける事数分……何故か部屋からお姉ちゃんの声が聞こえてきた。
「……………〜」
良く聴き取れないが、確かにそれはお姉ちゃんの音だった。
なんだ?独り言か?
俺は耳を澄ませお姉ちゃんの部屋の扉に耳をあてた。すると微かに……とても微かにソレは聞こえてきた。
「…………ちょっ、辞めてよ」
『辞めて』?なんだ?独り言にしては意味わからんな。
「おいおい、今更……悲しい事言うなよ……」
ッッ!?!?男の声!?なんで??
「私っ……別にあんたなんかっ」
「……だったらもっと抵抗したら?さっきから口じゃあヤーヤー言うけど………下のまんこはビッショだぜ」
「…あっ!……ちょっ私そういうのやった事ないから……」
「あっそ、じゃあ始めては優しくしないとねー……」
「ンッ……ああっ!」
「うるさい、家に人居るんだろ?」
「そっ、そうだけど……痛ッ………んあっ!あぁんっ!」
それから……扉を1枚挟んだ向こう側では、お姉ちゃんの喘ぎ声が静かに……確かに鳴り続けた。
俺はそんな現実を理解出来ず……いや、今考えると理解したく無かったんだと思う。
俺はただ、大好きなお姉ちゃんが知らない男に汚されていくのをその場で何も出来ず、惨めに…不条理にも勃ってしまった精器を慰めていただけだった。
「はぁっ、はぁっ……イクぞ、ミント」
「うっ……うんっ……きて、マースメロ」
行為も終盤に差し掛かった頃……お姉ちゃんは既に男にすがる様になっていた。
お姉ちゃんと知らない男が交わるいやらしい音。
目の前には色んな感情がぐちゃぐちゃに混じり落ちた汗と自分の精液があった。
「………あ」
そして、父がいた。
いつから居たのかは分からない……が、父はただ黙り、お姉ちゃんの部屋の扉を思いっきり壊した。
扉が壊れる轟音。
父の言葉にならない怒号。
お姉ちゃんの悲鳴。
男の焦る声。
そして、俺の泣き声。
まさに惨状だった。
その日はどう収集したのか覚えていない。
俺は気づいたら自分の部屋で枕を抱き、涙をながしていた。
次の日、朝……母に呼び出された。
母に連れてこられたのは父の部屋だった。
父はまだ怒りがおさまった感じではなく、顔がしわくちゃだった。
そして父の正面に座り、一言。
「お前が次のミント家の当主だ」
と、言われた。
本来ならお姉ちゃんであるサブ・ミントが当主になるはずであったが……まぁ、そういう事なのだ。
父はそれだけ言い残すと部屋を後にした。
父が居なくなり、母と2人になった。
俺は聞きたい事があった。
「姉さんはどうなったの?」
あの後、お姉ちゃんはどうなったのだろう…部屋にでも閉じ込められているのだろうか。
と、考えていたが母の口からはとてもグロテスクな事が告げられた。
「サブはね、あの後すぐ男と家を出ていったわ……何もかも捨てて。家も家族も地位も名誉も何もかも捨てて」
「………うっ……ぷッ」
俺は急に込み上げてきた胃液を飲み込みきれず、床にゲロをぶち撒いた。
だが気持ち悪さはとまらなかった。
トレイに辿り着くまで3回は吐いたと思う。
それからも俺は吐いて吐いて吐き続けた……。
胃液しか出なくなっても、血が胃液と混じって出ても……俺の吐き気は止まらなかった。
俺がトイレで吐き続ける中、母が後ろから俺に言った一言は未だに忘れられない。
「メイン、何をしているの、早く剣を振りなさい」
それから俺は吐きながらも剣を振り続けた。
毎日、毎日、毎日毎日毎日毎日毎日………。
喉が壊れ、肺が潰れ、胃が破れ、歯が溶けても、毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日毎日…………!
剣を振り続けたんだ。
全てはお姉ちゃんを取り戻す為に!
あの男より強くなれば必ずお姉ちゃんは帰ってくる!
俺が当主になれば必ずお姉ちゃん振り返ってくれるんだ!
――
と、10歳になったばかりの俺は幼いながら考えていた。
今考えれば、俺が強くなったからって姉さんが帰ってくるとは限らない。むしろそんな事、姉さんにとっては知ったこっちゃないだろう。
俺が強くなり、ミント家の当主になって喜ぶのは両親だけ。
俺はそんな事の為に頑張るのが嫌だから家を離れたくわざわざ「色々な剣を学びたい」なんて適当な嘘をついてまで無理矢理ジケイ会館に入館したんだ。
でも入館してみるとジケイ会館は案外悪くなかった。
実際、色々な剣を学べたし、為になった。
俺にはなかった技術や発想があり………楽しかった。
この5年間、一切無駄では無かったと胸をはって言える。
だがやはり、俺の剣を持つ意味は姉さんだった。
姉さんが剣を振っていたから俺も振った。
姉さんが凄いから俺も凄くなろうとした。
姉さんが強いから俺も強くなろうとした。
『じゃあ姉さんがいなかったら?』
俺は何をしてるんだろう?
俺のする物事の全てには『姉さん』という理由がいる。
だが姉さんはいない。
だから、今の俺には俺の意思で剣を振る理由が無い。
ジケイ大戦に出場したのも、予選で優勝して先生に言われたから出てるだけ。実際、勝とうが負けようがどうだっていい。
姉さんが関係無いから……。
そして俺は勝つ理由も無く試合場に立っている。
相手はステイ・セントとかいう奴で素手のまま戦うふざけた野郎だ。
相手は素手だ、テキトーに剣を振ってるだけでも勝てるだろう。
と、思ってたのに……普通に強ぇー。
油断してたらいつの間にか顔面にもろ受けてしまった。
あー……ヤバい、意識が飛びそう……まともに動けないし、視界がもうグニャんグニャんだ。
負け………るのはやっぱ嫌だけど………もう………いいか、姉さん関係無いし。
それよりもう……寝たいから、この技だけ最後に捧げよう。
「…………お前、もう負けた気になってんのか?」
するとステイ・セントは俺にそう言った。
俺は表面上では否定したが、内心ではどこかそう思っていたのかもしれない。
「何、阿呆みたいな顔してんだよ。
そりゃそうだろ、戦ってる相手に対して『捧げる』なんて……お前、なんの為にジケイ会館入ったんだよ。
本当に勝つ気があるならよぉ……足が折れても、腕が千切れても噛み付いてこいよ!メイン・ミント!!」
(パンッ)
何の為にジケイ会館に入ったか……?
…………そりゃ最初は両親から逃げたくて。
いや、違うな。本気で両親が嫌だったら剣なんか握っていない。
……じゃあ何で俺は?
…………あぁそうか。
「ッー………!!」
ステイ・セントに言われ、俺の中で何かが弾ける音がした。
そうだ……………。
そうだ…そうだ…………。
そうだ、そうだった、忘れていた、イヤ!忘れようとしていた!
俺がジケイ会館に入った本当の理由!
色んな剣を学びたいなんて真っ赤な嘘!
本当は!本当の自分は!
俺は……俺は!
「お姉ちゃんを殺す為にジケイ会館に入ったんだァアアアアアア!!!!」
そうだ!俺は姉さんを殺せるくらい強くなる為に!
もう誰にも姉さんを奪われない為に!
俺だけの姉さんにする為に!
「強く、強く、誰よりも強くなる為にィィィイイイ!!」
もう何もかも吹っ切れた。
そして、今はその全てを目の前の男に…捧げよう。
15年間、秘めてきた本当の自分を!!




