EP15:〈1回戦第一試合〉エンジェル・|K《クリスタ》・パルフェクト対ミロ・マーチ ①
「ジケイ大戦で優勝し、アブリル国王直属の衛兵となるのだ。いいか、これからのパルフェクト家の未来はお前に掛かってるんだからな。長男としての自覚を持ち、死ぬ気で行ってこい」
と、私はジケイ会館に入館する前日、父親にそう言われた。
私が籍をおくパルフェクト家は代々地方を治める貴族として働いており。その歴史も長くそれなりに地方民からは信頼されていたのだが、現在パルフェクト家の当主である私の父親は欲深かった。
時は遡り10年前、父親がパルフェクト家を正式に継ぐようになってから……今までの暮らしがおかしくなっていった。
『おかしくなった』と、言っても私に不利益が生じた訳ではない。むしろ快適になっていった。
だが私は不満だった。
何故なら私達が快適になった分、地方民がパルフェクト家に支払う税金が増えたからだ。
地方民は払う税金が増えたのに対し、私達パルフェクト家が地方民に対し行う事は何も変わらなかった。
地方民は怒った。
当たり前だ、ただ払う金が増えただけなのだから。
では何故、私の父親は長年の信頼を捨てる様な行動をしてまで地方民から徴収する税金を上げたのか……理由はとても下らなかった。
『中央貴族へアピールする為の費用』
情けない、地方の貴族がよくやるミスだ。
その地位で満足しておけばいいものを、欲が溢れて中央貴族にでもなろうってか?
阿呆らしい。
結局、父親は失敗した。
中央貴族へのアピールも虚しく、ただ都合の良い様に使われ、用済みとなったら即さようなら。
残ったのは、地方民の不満とめちゃくちゃになったパルフェクト家だけだった。
そして私が10歳の時、父親は苦し紛れで言ったのだ。
「ジケイ会館に入ってこい」と。
私が優勝して王直属の衛兵にでもなれば、中央貴族はおろか、王との関係が手に入るとでも思っているのだろう。
だが、私は拒否などできなかった。
弟達や母親の生活がかかっていたのだから。
だが幸運にも私には魔法の才能があった。それも特大の。
私はジケイ大戦を優勝する。『父親の尻拭い』という汚い理由ではなく。パルフェクト家の未来の為に、弟達と母親の為に。
そしてなにより………あのステイ・セントとかいう恋人がいながら浮気をするクソチンポ野郎からアイルを奪う為に。
私はジケイ大戦を優勝する。
by エンジェル・K・パルフェクト
―――
ジケイ大戦は年に一回のお祭りである。
と言っても実際にジケイ大戦そのものを楽しむのは出場する選手だけだ。
だから毎年、ジケイ大戦の裏では『誰が優勝するか』という賭け事が行われている。そうして観客達は盛り上がり結果としてジケイ大戦が大いに盛り上がるという仕組みになっている。
そして以下が今年、国民が1位になると思った人をランキングとして集計したものである。
1,ミロ・マーチ…………80529票
2,エンジェル・K・パルフェクト…………53224票
3,ビーニー・スター…………50230票
4,ゴア・ダイアリー…………38637票
5,メイン・ミント…………38452票
6,ザヲォ・マイト…………19338票
7,ヤマタ・アイス…………15200票
8,ヤッチャイナ・ヨウ…………11449票
9,ナイロ・カルロ…………10032票
10,ブロンディスカイヤ・ソン…………10000票
11,トゥオラント・バババ…………9523票
12,ザイード・ザイドJr.…………7952票
13,コバヤシ・タツヤ…………4580票
14,ウィーンズ・B・ダウン…………682票
15,ステイ・セント…………8票
以上だ。
おいおい何だよ8票って、俺なんか悪い事したか?
真面目にショックなんだけど……。
と、まぁ…俺が国民から期待されてない事は置いといて……問題は1回戦のエンジェル・K・パルフェクト対ミロ・マーチだ。
いきなり人気ランキングの1位と2位があたるなんて。しかも票だけ見ればミロ・マーチがぶっちぎりの1位だ。
確かミロ・マーチが使う武器は『片手剣』だったよな。片方に剣、もう片方に盾、攻守がしっかりとでき安定した戦いが出来る。
………にしたってこの票数は多すぎるだろう。
あるのだろうか、ミロ・マーチには俺が想像し得ないナニかが。
まぁなにはともあれ、エンジェル・K・パルフェクトには勝ってもらわないと困る。
俺と決勝で戦う約束だからな……。
――
そして時は来た。
「でわでわー!!これよりー第221回ジケイ大戦を開催しんむぁーす!!!」
ジケイ大戦が行われる会場、通称「ジケイ大戦会場」。ジケイ大戦会場の形状は簡体に言えばコロッセオそのものである。そしてその中央でメガホンを持っているメスの有翼人が開催を宣言した。
「毎年お馴染みの審判および解説を務めさせていただきむぁす![フェア・ジャッチ]ちゃんでーす!!」
フェア・ジャッチ?なんて頼もしそうな審判なんだ。
「でわでわ、ジャッチちゃんの自己紹介も終わったところで!ジケイ大戦のルールを説明するよん!聞き飽きてる人は歯糞でも落としておいてねっ!
………ルールその1!出場者はそれぞれ専門の武器以外の使用禁止!もし使用したら即負けだよっ!
ルールその2!決着は相手の再起不能か降参!………考えたくはないけど絶命をもって決着としまーす!以上!」
………いやルール少なっ!
…………でもそれだけ反則が無いって事だよな。
俺の戦術的にはとてもありがたい。
「じゃあー早速1回戦行っちゃおー!!
一回戦第1試合はコイツ等だ!カモーンぬっ!!」
ジャッチの掛け声と共に会場全体に音楽が鳴り始めた。その音楽は聴く者に打楽器の重低音と緊張感、弦楽器の高音と高揚感、金管楽器の調和と特別感をこれ以上ないくらいに感じさせた。
そして音楽と共にエンジェル・K・パルフェクトとミロ・マーチはそれぞれ反対方向にある入場口から現れた。
普段の様に歩き、距離を縮めていく2人。
2人の間には遠く離れた観客席から見てもわかるくらいバチバチと火花が散っていた。
そして2人はある程度の距離になると、息を合わせたかの様に同時に立ち止まった。
――
〈第三者視点〉
「………ふふーん!!今日は良い天気だねミロ・マーチ君」
パルフェクトは普段の様に気さくに話しかける。
それも日常に溢れたたわいもない内容だった。
「あぁ?どこがだよ。日が出てて暑いだろ、俺ァもうちっと曇ってた方が良いなァ」
ミロ・マーチはそんなどうでもいい会話をめんどくさいと感じつつ適当に返事をする。
「そうか!では少し曇らせようか?」
「あぁ?何言ってんだオメェ。んな事…」
そう言うと、エンジェル・K・パルフェクトは不適な笑みと共に自身が持っている杖を空へと掲げ、魔法を発動する際に詠唱しなければならない呪文を唱え始めた。
「『天を覆う黒き布よ、憎しみ嫌……」
「…………………ッ!……審判!始めろ!早く!!」
ミロ・マーチは何かに気づいたかの様に急いで距離をとった。そしてミロ・マーチは盾を前にし、剣を後ろに構え戦闘体制へと入った。
「えっ?ええっはい!でわでわ!一回戦第1試合、始め!!」
こうして第221回ジケイ大戦は、一回戦第1試合目からはちゃめちゃな開始となった。




