EP13:あの頃、そして先へ ②
ジケイ大戦……当日。
早朝、実家のシーラン薬局にて。
俺は普段着に戻ったリリスさんに肩車をしてもらい、ぐるぐる回転していた。
「リリスさん!やっと来ましたねこの日が!!」
(ぐるぐる)
「あー!いよいよ今日だなステイ!やってやろうぜ!」
(ぐるぐる)
「えぇ!全員ぶっ殺してやりますよ!!!」
(ぐるぐる)
「「アッハハハハハハハハハハハハー!!!!」」
(ぐるぐるぐるぐるぐるぐる……)
「……朝から元気ですね、モチベーションは良さそうですか?」
「えぇ、もちろん、もちろん!もちろんですよ!キリコさん!あなたの弟子は最強ですッ事を国中に知らしめてやりますよ!」
俺は異様に異常にテンションが上がっていた。
「ちょっと朝からうるっさいわねーあんた達。昨日の夜もあんな盛っといて何でそんな元気なのよ?」
台所から母さんが料理を運びながら顔をだした。
「母さん!……分かってても言わないで!俺だって思春期なのだから!!」
中身は30代だけどねっ!
「………本当に何でそんな元気なのよ?」
それは俺にも分からない、が……俺はなんだかんだ楽しみにしていたのだろう。
今日のジケイ大戦を。
「母さんはジケイ大戦見に来る?」
ジケイ大戦は国民なら自由に観客する事が出来る。
それはジケイ大戦というものが単なる力比べでは無く国民や他国にアピールするものでもあるからだ。
「…………私は行かないわ。今日に限って仕事が腐るほどあるのよ」
「………あぁ、そう………で?本当は?」
「本当よ」
「そっか………」
正直、母さんには何が何でも観に来て欲しかった。
「で……本当は?」
「………………っはぁー……行くわよ」
「やったー!!」
「ではシーランさんは私達と一緒に観ましょうか」
「じゃあ母さん!リリスさん!キリコさん!行きましょう!」
「…でも仕事は少しでも減らしたいから、行く途中でギルドによらせてもらうわよ」
「はいっ!」
と、いうわけで途中、ギルドに寄りつつ俺はジケイ会館に行く事になった。
ギルドに行くまではリリスさんが俺をそのまま肩車して送ってくれた。
お恥ずかしい。
「なーステイ、お前の親父っていねーのか?」
ギルドまでの最中、リリスさんが突然ぶっこんだ質問をしてきた。
「ちょっ……リリスさん。そういうのは母さんの前であんま……」
「…別にいいわ、てか息子が気なんか使ってんじゃないわよ。……そうよ居ないわ。厳密に言えばそもそも結婚してないってだけよ」
「えっーと確か……『マースメロ・シスター』って名前だったよね?」
「はぁ……仮にも息子なんだから名前くらいスッと言いなさいよ」
「マースメロ・シスター………ってあぁ、亀象龍を倒した人ですか」
「知ってるんです?キリコさん」
「えぇ……有名ですから」
「……でも師匠、そーいや亀象龍って何処かの国で神様として信仰されてなかったか?」
「確か『テゥシーナ国』ですね。……確か……それで神同然の亀象龍を殺されたドンイ国民とマースメロを管理しているこの国が今にも戦争しそうだとか……」
「衛兵になったら戦争とか行くんでしょうか?」
「まーそりゃ行くだろ」
「まじかー」
「俺様もついていくぞ」
「リリスさんは戦いたいだけでしょ」
「ハッまぁな!」
「では私もついていきます。一瞬で終わらせてあげれますよ」
「ちょっとー嫌な話しないでよー、いいステイ、戦争に行く事になったら衛兵なんてやんなくていいわよ」
「母さん……大丈夫大丈夫、ジケイ大戦で優勝すれば王直属の衛兵になれるから戦争なんて行かなくて済むと思うから……多分」
「では益々優勝しなきゃですね。ステイ」
「ですねー……あっもうギルド着きましたね」
――
「では鑑定するので少々お待ち下さい」
そう言われ、俺様は近くにあった席に腰をかけた。
「なんか飲み物とか要ります?」
「俺様は麦酒ー」
「朝っぱから酒ですか」
俺だってジケイ大戦がなきゃイッキしたいのに。
「私も同じので」
「キリコさんも?は?……えっ、母さんは?」
「私もー」
「くそっ、お気楽だな」
こいつら、やる気あんのか?←(ないことはないが自分が戦う訳ではないから好きにやってる)
いや、ね、確かにやるのは俺だから問題は無いよ。
無いけどさ、あるじゃん、これから頑張る人間に対しての配慮が。
「………じゃ、じゃあ3人共麦酒ですね」
「「「はーい」」」
「元気よく返事しやがって」
俺は言われた飲み物を買いに行く為、受付嬢がいるカウンターの列に並んだ。
にしても今日は人が多い、やはりジケイ大戦があるからだろうか。
外もお祭りの様だし、これから俺がその中心に立って戦うなんて考えられないな。
「………」
ふと……振り返ってみると、俺は案外面白い人生を送って来たな。
前世は死んだ様にパソコンとディスクに向かうだけの日々だったてのに……今じゃ立派なステイ・セントか…。
「あの……列抜かさないで下さい」
すると、後ろから女性の柔らかい声が聞こえてきた。
どうやら俺は無意識とはいえ順番抜かしをしてしまっていたらしい。
申し訳ない……………って…ん?
なんだろう……だいぶ前にもこんな感じの事があった様な。
「あぁ、すいません直ぐ後ろに……」
と言いながら振り返り………俺の目に写ったその女性はとても美しかった。
透き通る程に鮮やかな金色の髪、ガラスの様に輝いた瞳。
そして何より、俺を昔のあの頃の様に……安心させてくれる褐色の肌…。
初めて出会った時と変わらない彼女がそこにいた。
「あ…………………アイル?」
「やっぱり…ステイくんだ」
目の前の彼女は口を大きく広げて笑った。
「アイル???…………アイル?」
そして目の前にはあの頃から成長しているとはいえ、間違いなくアイルがいた。
「久しぶり、ステイくん。元気だった?」
………あぁ、そうだ、この顔だ。
この眩しくて俺を包み込んでくれる笑顔。
優しく透き通った柔らかい声。
「アイルー!!」
俺は思わずアイルに抱きついてしまった。
「ちょっステイくん!?……こんな人だかりの中で………恥ずかしいよぉ」
「…………っー」
俺は無心でハグをし続けた。
「アイルっ!……アイルっ!……俺っ…アイルッ俺っ……頑張ったんだ」
「うん……知ってるよ」
「ずっと会いたかった……ずっとアイルに触れたかった……あぁ…」
「私も……」
アイルはそう言うと優しく抱き返してくれた。
「……………もう絶対離さない!」
「……………え?」
「アイルっ!…これからはずっと一緒にいよう」
「ん?……えっ!?えっ!?……それってもうプロポー……」
「あぁそうだ結婚しよう!アイルっ」
「えっ!あ……えぅー…………もうステイくん急過ぎだよ…でもわかった。いいよ結婚しよっ」
「っ……ありがとう」
俺は今日、心から愛する人と再会した。
9歳でジケイ会館にアイルと一緒に入館したものの離ればなれになってからの5年間、初めは人に裏切られ、奴隷として売られたりして躓きはしたものの、リリスさんに助けられ、キリコさんと出会い強くなった。
途中、何もかも嫌になって逃げ出したい時だって何回もあった。だけど俺はその都度アイルとの未来を考えて耐えて耐えぬいて成長してきた。
だから、これからは会えなかった分、頑張った分、2人で幸せになろう。
これからが俺のハッピーライフだ。




