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バツライフ a.k.a【STAY・セント】  作者: The kid 王
第二章:ジケイ大戦編
14/42

EP11:5年間の青春 ①

 

 振り返り、目に入ってきたその子はとても美しかった。

 

 透き通る程に鮮やかな金色の髪、ガラスの様に輝いた瞳。

 そして何より、俺をあの頃の様に……安心させてくれる褐色の肌…。


 初めて出会った時と変わらない彼女がそこにいた。



――



 あれから……というか、クレンと爺さんがステゴロ部から居なくなってから4年が経った。

 つまり俺がステゴロ部に来てから4年と半年程が経った。


 俺はピチピチの14歳になっていた。

 

 「キリコさん、明日から本館に向かうんですよね?」


 「えぇ、そうですよ。ですので先日にも言っていた通り、今日は修行の最終日という事で、本気で戦ってみましょう」


 身長は170くらいになった。

 体重は75そこらだろう。


 「待てーい師匠!…俺様が先にステイとやる!」


 「…良いですよ。ではステイ…リリスの後に私で連戦といきましょう」


 「えぇ…死ぬって」


 あれから色々あったな……。

 キリコさんには体の使い方と勝負の勝ち方を教わり、リリスさんに対武器・魔法の戦い方を教わった。


 ジケイ大戦に向けた準備は万全だ。

 

 「……じゃあルールは『3撃』でいいですか?」


 「おう!」


 「えぇ、私もそれが良いと思います」


 「じゃっ…リリスさん!やりましょう!」


 「ハッ…イキってんなーステイ!ボコボコにしてやるよ!」


 「…………ッ」


 声を張って緊張を和らがそうとしたが、対面した瞬間に冷や汗が頬をなぞり落ちていく。


 「…………ハハッ」


 この試合のルールである『3撃』は単純なものだ。

 先に3回、相手に攻撃を入れる事が出来れば勝ちというものだ。


 そして……深呼吸を3回ほどはさみ、修練場が静まり返る。

 その静寂の中、キリコさんが(パンッ!)手を叩いた。


 始まりの合図が修練場に響いた。


 そして始まりの合図と共にリリスさんは大きく右足を踏み出し、一気に間合いを詰めてきた。


 まばたきすらも躊躇うほどに速いッ!


 リリスさんはフィジカルの化け物だ。

 それはキリコさんにも言える事かもしれない、だが彼女の攻撃はキリコさんより破壊力がある。


 (ビュッ)と空を切る轟音と共に拳が顔面に向かってくる。

 もし、当たれば顔面は砕け吹き飛び、死んでしまうだろう。

 

 そして拳が当たってしまうかどうかというギリギリの所で俺はとある昔の事を思い出していた。

 ……確か…前にキリコさんが言っていたな……


 「ステイ、リリスと本気で戦う時は絶対攻撃に当たってはいけませんよ」

 「なんでです?」

 「どうしようにも防げませんから」


 俺はその時、その言葉の意味がよく理解していなかった。


 だが今!目の前にした今なら分かる!

 ()()はどうしようもない!腕でガード?それとも打撃自体を受け流す?

 いやいやいや…無理でしょ。


 もし、これ(リリスさんの拳)が体に触れでもしたら…それ自体が削がれ無くなってしまうだろう。

 ……故に防げない。


 「クッ!!」


 俺はなんとか首を捻り、鼻頭スレスレでリリスさんの拳を避けた。

 だが、それでも…風圧で鼻血が出てきてしまう程だった。


 「ッー!!えぐっ………殺す気ですか?」


 「ハッ…なわけ……でもまぁ…いちおー本気だからな」


 ヤベェ…想像以上にやばいな……。

 っと言っても俺もこの4年でそれなりに成長した。

 そしてリリスさんとのガチバトルは始まったばかりだ。

 だが理解してしまった。これほどまでの圧倒的実力差を!


 リリスさんの場合、当たったら終わりのこの戦い。『3撃』とか言ってる場合じゃないな。


 「リリスさん!やっぱルール変えません?」


 「んあ?」


 「先に1回…攻撃を入れれた方の勝ちにしましょう」


 「……あー……まぁいいぜ」


 「……あざす!」


 これで当たったとしても1回で済む。

 ジケイ大戦前に余計な怪我はごめんだからな。


 「いいけど俺様が勝ったらお前の……」


 「っせん!」


 俺はリリスさんのセリフを遮り、飛びかかった。

 非常識……だとは自分でも思う。

 だが…俺が教えてもらった勝ち方というものは、こういうものだ。


 非常識だろうが卑怯だろうがダサかろうが、勝ってしまえば勝ちなのだ。

 

 そして更に、この変更させたルール(一撃当てれば勝ち)の場合なら……攻撃で狙うべき部位は限られてくる。この0.01秒の世界で戦っているのだから狙うなら頭部から最も意識の遠いつま先や指先だ。


 俺は体勢を低くし、薙ぎ払う様にリリスさんの足めがけ蹴りを放った。


 「蹴りがトロいわ!」


 だが軽々とジャンプして避けられてしまった。

 そしてリリスさんはそのまま空中で体を斜めに捻り、そのまま俺の側頭部に左足の甲を叩きつけた。


 (ペギャ!)と嫌な音が脳に響く。

 そこから記憶は曖昧だが、運良く死ななかった事だけは分かる。


 「ッーーーー!!」


 痛ぇ!    喰らった!    終わり!?

   頭部は?       痛い!     死んだ?

   やばい!   血の匂い…   負け!?

 鼓膜が!   痛い痛い!      倒れた!?


 痛みと共に脳が混乱して情報がまとまらない。


 あー……この後キリコさんと戦うとか…ふざけてるよ。


 そして俺は白目をひん剥き床にぶっ倒れた。


〜〜〜


 「……おーい、ステーイ。生きてるかー?」


 意識が戻りかけたその時、リリスさんが床にぶっ倒れている俺をビンタしてきた。

 泣きっ面に蜂……いや、そんな優しい言葉じゃ表せねぇな。


 「……リリスさん……痛いです」


 「おっ起きた!良かった良かった。

 ステイ!俺様の勝ちだ!」


 「……ええ…流石です」


 俺は細い声でなんとか返事をした。


 ハハっ結局……何も出来なかった…。

 リリスさんに対してここまで惨敗だとキリコさんとの結果は見え透いてるな。

 

 まぁ、だけどやらない理由にはならないよな。


 「ではステイ、私とです」 

 

 「………はい」


 「ルールは3撃で構いませんね?」


 「ええ」


 キリコさんは強いがリリスさん程の破壊力は無い…と思う。

 でもそれはキリコさんにとって何の問題でもない。

 リリスさんの破壊力、ある意味では余分過ぎる程に強いのだ。

 あんなに力を込めなくても余裕で俺くらい勝てただろう。

 

 それと違いキリコさんは的確に的確な力で的確に攻撃を当ててくる。

 俺はそっちの方が嫌だ。

 だが、キリコさんはそれ故に急所しか狙ってこないから幾らか防ぎ避けれる自信がある。


 でも、キリコさんとの戦いで最も警戒すべき問題なのはそれらじゃない……。

 

 「では始めましょう。リリス!合図をお願いします」


 「おう!まかせろー」


 リリスさんに蹴られた側頭部は未だに地獄みたいに痛むが脳は正常に機能している。

 大丈夫だ、戦える。


 「………ふぅ」


 キリコさんの後手に回ったらダメだ。

 まずは俺から仕掛ける。


 「………はじめ!」


 リリスさんの掛け声と共に俺はキリコさんへ突っ込んで行った。

 もちろんこのまま真っ直ぐ突っ込むのは愚策だ、そんな事したら笑われてしまう。


 なので突っ込むと言ってもあくまで拡散が目的だ。

 キリコさんの意識を出来るだけ混乱させるのだ。

 そうして俺は第一に床を蹴り、第二に壁を蹴り、第三に天井を蹴り、3Dに修練場を跳び回った。


 キリコさんは未だ最初の場所から動く気配がない。

 油断……ではないな。

 あくまでこの試合は本気だ。

 

 だとしたら今、キリコさんが動かない理由として考えれるのは2つ。

 1つ、カウンター狙い。

 2つ、動くまでもない。

 ……まぁこの場合……圧倒的2つ目だよなー……。


 それでも今の俺にはこれ(拡散)しかない、俺はそのまま修練場を跳び回り拡散し続けた。

 

 そして俺はタイミングを見て、キリコさんの後方にある壁を踏み込み、後頭部めがけて右足刀を突き出した。


 (スッ)


 だが俺の突き出した足刀は虚しい音と共に、何も無い空気を蹴っていた。


 これだ!

 この音のしない超高速移動。

 これをどうにかしない限り、キリコさんにはどうしたって勝てる事が出来ない!


 「ステイ、まずは1です」


 すると蹴りを放ち着地した後方から、キリコさんの落ち着いた声が聞こえてきた。

 

 その声に反射的に振り返ると同時に、激しい苦痛が腹部を襲った。

 視線を下げるとキリコさんは俺の腹部に貫手を突き刺していた。

 俺はその衝撃と痛みで、膝をつき四つん這いに悶え込んでしまった。


 「オエッ……オッ……ゲェオロォ」


 吐瀉物が床に広がる。被害は内臓の1つや2つじゃないだろう。

 鼻から血の臭いがしてきた。


 そして……ゲロを吐いていたせいで立ち上がり警戒するのが数コンマ遅れてしまった。

 

 「2」


 上からまた静かにそう聞こえた……と感じた頃には、俺は吐瀉物と共に顔面から床にめり込んでいた。


 後頭部に感じる重みと痛み。

 キリコさんは四つん這いになっている俺を力いっぱい踏みつけたのだ。


 さすがキリコさん。

 情けも慈悲もない。

 

 「ステイ、後1回です……さn」


 「うぁあ゛あ゛あ゛ぁあ!」


 意識が朦朧とする中、出来る限りの力を振り絞り、俺は立ち上がった。

 それと同時に俺の後頭部を踏みつけているキリコさんの足首を掴んだ。


 よしっ、これでキリコさんの動きを止められる!

 絶対に離さない!


 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ!!」


 (ゴシャ!)


 そして俺はキリコさんを目一杯床に叩きつけた。


 「はぁはぁ……1」


 よしっこれでまずは1発だ、これから……。


 「……………………ぁー……やべ」


 気づいた時にはもう手遅れだった。

 床に叩きつけたはずのキリコさんはもう目の前から消えていた。


 自分で床叩きつけたのに、その衝撃で足首から手を離してしまったのだ。


 「クッソ……しくった」


 「3」


 最後、何をされたのだろう……。


 わからないが、俺は天井を見上げ倒れていた。


 「……はぁはぁ、はぁ」


 乱れた呼吸と共に殴られた箇所が痛む。

 それに時間的にはさほど動いて無いのにめっちゃ疲れた。


 「3−1で師匠の勝利ー!」


 リリスさんがそう言いながら近づいて来た。

 

 「おいおい師匠!1発喰らっちまったなー…ハハッ」


 「ええ。それほどステイが素晴らしかったんですよ」


 「………そ、そうですかー」


 褒められて嬉しい。


 「おいステイ!それより顔洗って来い!ゲロまみれだぞ」


 「あー……はい。ですね」


 一ヶ月後に控えたジケイ大戦、俺はこのままでちゃんと勝てるだろか。

 でもまぁ正直、結構悪く無いとは思ってるよ。


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