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書く書くとき書けれ書け

作者: ゆきパパ

目を開けるとそこは異世界。

CGのような魔物たちが空を飛んでいる

横を見ればなんだか四つ足の猪のような魔物、だな?


待て待て!〆切〆切!

ガバッと起き上がるが、コロンと前転してしまう。コロコロと回って止まって確認する。


視界に入った足も手も小さすぎないか?

ま、まさか……。

ネタ帳もペンもない、タブレットもパソコンもない。

すごい話しを思いついたのに書く手段がない……。


呆然としていたらガラガラと馬車の音。タラリと血が額から口元に垂れた。


あの飛び竜がなんか落っことしたと見に来てみたらチビがいた


後に養い親のトサークが、酒を飲む度にそう話し始める。

わたし推定四歳、多分、中身は33歳。


バリバリイベントに向けて薄い本を制作していたと思う。徹夜の御伴のドリンク剤をかっこみながら。〆切は明後日、もちろん新刊はできていた。できていたのに新たな燃料が公式にぶっこまれ、作るしかない!と燃えたのだ。燃えて心臓が燃えつきたのか萌えつきたのか。タブレット画面のじんわりとした冷たさを感じて意識を失った。


トサーク親父の娘になって12年。

六三三で十二年♪

干支も一回り致しました。

16才キュートでございます。

栄養失調なのか初潮もありません!

友達もいません!

出るとこでないし性別不詳です!

親父とまだ親子してます。


名前をもらったキュート16才、前世とかわらず〆切に苦しませて頂いております!


キュー!あと何枚だ!?

親父!あと三冊だから15枚!!

終わりが見えたな!あとちょっと!


頑張れる!頑張れる!


やれる!やれる!やるゼー!


何をしているかと言うと行商先のご主人に売り込むための王都案内帳だ。


小さなわたしに文字を教えてくれた親父。地面に小枝で教えてくれていたが行商の道程では、復習ができなかった。考えたのは夜営の時に出た炭を使って薪用の木に練習すること。

小さな板をたくさん作ってもらって字とか覚えた。

そこから親父に恩を返そうと寄る先々で似顔絵を板に書いたり家の玄関口に書いたりして小銭を稼いでいた。

木炭から樹液、果汁とかで炙り出しとかで布にも書いてみた。


そうしたらちょっとした町の偉いさんの結婚式があった。

お祝いのお菓子をもらったので包んでいた和紙のような紙にお二人の似顔絵をささっと書いてお祝いの品です。と言って差し上げた。

木炭だからホントにささっと。

にこやかな優しいお二方だったから小さなわたしからもらったそれを大変喜んでくれた。

この時、親父は幸せそうな方に両手で似顔絵を恥ずかしそうに差し出しているわたしを天使だ!天使がいる!と親バカ全開だったらしい。あれうちの子です、うちの子なんです!って騒いでいたらしい。やめて………。

俺も欲しい私も欲しいとなり、なんだか慕われている新婚さん…。

簡単で大量にとなればガリ版である。

板をもらって絵を描く。なるべくシンプルにお二方の顔を大きく。親父に線を残してそれ以外を彫ってもらった。

お祝いだから篝火もある。

炭をつけて包み紙の余りをもらいのせて、庭の丸い石をハンカチに包む。

シュッとこすればほら一枚。

あとは親父や欲しい大人がやってくれとお腹空いた~とごはんをねだる。


新婦さんのお姉さんがやってきて炭だらけのわたしの顔をふいてくれてチュッとされた。なんて素敵な天使でしょう!ギュッと抱き締められて新郎さんにはフカフカなパンを口まで運んでくれて。

刷った紙はお二方のご両親と祖父祖母たちに送られたという。仲人的なおっちゃんからお金をもらってハイさようならだ。よそ者は2日以上町には居られぬのだ。


町を出て親父が包みをあけたら銀貨が三枚入ってた。宿屋で三泊できるぐらいだ!やはりこの地でもお祝いごとには奇数のようだ。割れない、別れないってね。

その日の親父はずっとわたしを膝にのせ俺の天使俺の天使とチュッチュッとうざかった。


親父のアイデアと知識で王都案内図ってのを一枚作ってみた。

わたしがお城とかレストランとかの絵を描いた。町の観光案内でもらうようなペラペラのやつ。

刷るときに反転するから絵にするのに苦労した。大工の親方の似顔絵を書いて知り合いになりゴム板のような木の皮を貰ったのが発端だ。消しゴムはんこのよう。

インクもどきは生地屋さんで染料購入。試行錯誤の上完成させた。

そして案内図の左隅っこにはキスマークを親父はわたしにつけさせた。

もうすぐ六歳ぐらいになるわたしでもわかる。色町だ。


ここ、この当たりに坂の下の四つ角ふうに道書いてくれ。色っぽいねーちゃんがいるってわかるよ、う、にだな。


じとーっと親父を見る。


いや、キュー、俺はだな酒を飲めるところをだな、その、な?わかってくれよ~。コレあるのとないのじゃちがうのよ~。ね~?お願い~?


それ、わたしがお菓子ねだるときのものまね?


俺の腕枕3日!


うぬぬ、4日!


馬車の操作があるから滅多にしてくれない技を出したな!くそっ!


よし!4日分な!


あ、ひどい!わけた!


親父の腕枕はふかふか筋肉まくら。

夜営の時は緊張してるのかいらないけど(子供の体温は高いのでだっこされるのだ)、宿屋ではふかふか。熟睡中はふかふかなのだ。


しかし、王都のことは知らないけど実に細部にこだわったなぁ。都会でなんかしでかして行商してんのかなぁ。


で、売れるもんだから金ができる。

金があるから試作してみる。

色を変えてみる。板を増やして二色刷から三色刷り、とふえていく。

するとまた売れる。

売れるもんだからまた試作する。

大きな紙はないので枚数が増える。

値段が上がる。金ができる。また試作する。

そして〆切に追われるようになったのである。

転生しても〆切が、やってくるのだ。


合掌。



















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