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王宮側との対面

(もっと詳しく聞いておけばよかったな。)

前日のジルバとの会話を思い出しながら、アルはそう思っていた。


アルとニコの2人はジルバに言っていた通り、後日リズの家へと赴いた。はずだった。しかしリズの家にはリズはおらず。いたのは見たことがない黒髪の青年と幼子だった。


数分前

「こんにちは~リズさん~来たよ~。」

意気揚々とリズの家のドアを開けたニコは思ってもいなかった光景を目にする。女の子と青年の2人がご飯を食べている光景。ニコを見て驚く2人。小さい女の子は小さい口で食べていたパンに乗ったジャムをその拍子にボトッと落とし、青年は振り返り人間とは思えない威嚇するような声を放つ。


ニコは困惑し固まってしまう。しかしそれはお互い様だったようで、女の子も同じように口を開けたまま動かない。2人ともお互いを見つめながら何も言えないでいる。


「おい。何突っ立っているんだ。」

ドアの前で突っ立っているニコを小突きながらアルはニコに話しかける。

「いや。」

ニコは動揺しながらも指をさして、部屋の中を見るように言う。

「うん?」

アルは不思議に思いつつも家の中をニコの後ろから覗く。そしてアルも固まってしまう。青年を除いた3人は互いに顔を見つめたまま誰も話さなかった。しばらくシャーという青年の叫ぶ声のみが家を包む。


しかしようやっとその沈黙を破りニコが話す。

「君たちは…誰?」

その声でやっと固まっていたものたちは動き出す。

「こら。マリウス。しずかにおし。」

女の子は青年を注意し、叫ばないように叱る。

「ごめんなさい。主。」

青年は悲しそうな声を出し、すごすごとベッドに引きこもる。まるで逆転だ。小さい子の方が主と呼ばれ、主従関係があるようだ。女の子は意を決したような顔をして、ニコたちの前に歩いてくるとこういった。

「どうぞ。きたないところですが、おはいりください。」


「あ、ああ。」

またしても驚きで固まってしまったアルとニコ。しかし、そのままでもらちが明かない。固まっていた体をなんとか動かし、家の中へと入る。


「そこにすわって、おまちくださいな。」

女の子は急いで食べていたものを片付け台所へと入っていく。どうやらお茶の用意をしてくれるようだ。


「おい。あの子のこと知っているかアル。」

ニコはその間にこそこそとアルに耳元で尋ねる。

「いや。俺も知らない。だがあの子、この家になれたようだ。もしかしたら2人ともリズさんの親戚なのかもしれない。」

「じゃあジルバが言っていたのってもしかしてあの子?」

「確信はないが恐らく。」

そんな会話をしていたところに女の子は帰ってくる。


「すみません。おまたせしました。」

どこかぎこちなく笑いながら女の子は、お盆に3つのカップと1つのポットを乗せてきた。

「あ、ありがとう。」

重たそうに運ぶ様子を見て2人はテーブルに乗せるのを手伝いつつ、お礼を言う。

「ありがとございます。」

女の子も丁寧にお礼を言い、お茶ができるように準備する。そしてお茶ができる状態になると3人は再び見つめあうこととなった。しかし今回はアルがすぐに口火をきる。

「それで君はどうしてリズさんの家にいるのかな?」

優し気ながらもどこか問答するような口ぶりになってしまうアルに変わり、ニコが明るい声で言う。

「リズさんは今出かけているのかな?」

2人は女の子の回答を待つ。目の前の子は、小さい手で温かいカップに手を回しぎゅっと握っている。何か重要なことを話すつもりらしい。

「そんなに緊張しないで。僕らは怪しい者じゃなく王宮に勤めている王宮…」

「おうきゅうまじょ。」

はっきりした声で女の子は2人の職業を言う。知っているはずがない2人の職業を。

「君は…。」

何故それを知っているのかと聞きたかった。しかしそれよりも早く女の子は話しだす。


「わたしがリズです。」

女の子はそう言ったのだった。


2人は耳を疑ってしまう。

「えーと?どういうことかな?」

ニコは戸惑いつつも、子供のたわごとかと思い聞き直す。しかし女の子はまたもこう言う。「わたしがそのリズだよ。」

「あなたがリズさん?だと?」

アルはあまりの発言にいつもの冷静さを崩しそう問い直す。

「ああ。」

リズだという女の子はきっぱりと言い切った。どうやらからかっているわけでも遊んでいるわけでもなさそうだ。

「本当にリズさん?」

ニコにはどうも信じられない。

「そうなんだよ。」

相変わらずそう頷く女の子に、ニコとアルの2人は顔を見合わせてしまう。女の子の真剣な様子から、からかっているわけではないようだがどうにも信じられない。彼女は魔法が使える魔女様ではない。それは王宮での魔力判定の時の結果で明らかだった。しかしこんなことが起こせるのは…。

「あなたは魔女様だったのですか?」

狐に化かされているように感じながらも、アルはリズに聞く。

「いいや。ちがうよ。」

首を振り、きっぱりと否定する。

「でも急にそんな小さくなるなんて……。」

「わたしもびっくりしたよ。」

リズは首をかしげながら、頬に手を当ててふーっと息を吐く。その幼い姿とはかけ離れた言葉遣い、行動になんだかリズを感じた。が。

「うーん。信じられないな~。」

ニコは首をひねりながら、唇を尖らせそう言う。

「まあ、わたしもしんじられなかったからねえ。」

リズは相変わらずふっと息を吐きつつそんなことをいいカップに口をつける。

「そうだよねえ。」

ニコも同調し、カップに口をつけお茶を飲む。和やかに「ねえ。」と言い合う2人にアルはあきれながら釘をさす。

「何を和やかになっているんですか。」

「だってねえ。こんな予想外のこともう受け入れたほうが楽だよ。」

ニコはそんな風に言い、また優雅にお茶を飲む。

「まったく。リズさんももっと深刻に考えてください。」

アルは敬意を払いつつも幼女のリズを叱る。

「しかしねえ。もうあなたたちがきたからには、ねんぐのおさめどきでしょ。」

はーっとお茶を飲みほしたリズは、観念しましたよと2人に言う。

「どのみち、あなたたちにごまかしてもバレるのは、じかんのもんだい。そしておうきゅうにいかないといけないのも…。そうだろ?」

「まあ、それは…。」

「そうだね~。王宮から逃れるのは難しいね~。」

アルとニコも嫌な顔をしながら王宮のことを考える。確かに2人が気付かなくても、この家の異変に気付いた別の王宮側の人間が調査しないとは限らないし、バレない保証もない。だとしたら今正直に申告したほうが心証は良くなるだろう。

「かくごはとうにきめたよ。」

リズはそう言い、2人に笑いかける。

「ごめんね~私たちが来たばっかりに。」

ニコは手を合わせ謝るポーズをとる。リズと良くおしゃべりしていて親交があったニコにとって、王宮よりもリズの方に寄るのは当然だった。

「いいや。ひさしぶりにあえてよかったよ。」

リズは「ほれ。」といいお菓子をニコとアルに進める。


「ところであの青年は?」

アルは2人のやり取りを聞き終わるとずっと不思議に思っていたことを尋ねる。

「ああ。」

リズは目を棒にしてベッドで眠る青年を見る。

「まあ。もうすこししたらわかるよ。」

そうしてあと数分かねなんてぼそっと言う。


「何なに。もうびっくりするのはごめんだよ。」

ニコはお菓子をポリポリ食べながら、リズに楽し気に話す。

「すまないね。でもまだあるんだよ。」

リズの発言が終わるか否か。その時に、時間が来た。ピカッとまばゆい光が部屋を包む。その光源にアルとニコは目をやる。すると、2人はまたしても驚きの光景を目にすることになる。青年がネコになるという驚愕の瞬間を2人は目にしてしまうのだった。


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