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誕生

「グノ!!!!」

リズはグノの声が聞こえたことが嬉しく思わず叫んでしまう。

「ちっ。気づいたか。」

ジョセフは顔をゆがませると、早々に部屋を出て行こうとする。

「あんたどこに行くつもりだい!まさかグノに何かしようっていうんじゃないだろうね!」

リズは必死になって、ジョセフに言う。

「さあな、でも危機感を覚えるのはお前の方だと思うぜ。」

ジョセフはもうなりふり構っていない様子で、言葉遣いも乱暴になる。そしてジョセフは出て行ったと思うとすぐに戻ってきた。ナイフを手に持った状態で。

「あんた騎士の名が泣くよ。」

リズは何だか悲しくなってしまう。母親が必死になって育ててきた息子が、騎士になるために頑張ってきたはずの息子がまさか刃物まで取り出して人を、一般人を脅迫するなんてと。

「うるさい。俺は母さんのためだったらなんだってする。お前を誘拐すると決めたときから騎士の名は捨てたんだ!」

ジョセフはリズの言葉に敏感に反応する。

「それよりも早く術を使え!さもなくばわかっているだろうな!」

ジョセフは自身の身がこれから捕えられることがわかっているため、それまでに母をと焦る。

「私は術を使えない!あんたの母親を助けることは不可能なんだよ!」

リズはジョセフにわからせようと大声で言葉を吐く。

「いい加減にしろ!いつまでも嘘ばかり!お前は状況を理解していないのか!」

しかしジョセフには言葉が届かない。それどころかジョセフは怒りのボルテージをどんどんとあげていく。

「お前なんてなあ、今のお前なんて俺の動き1つでどうにでもなってしまうんだぞ!」

銀色に光るナイフをリズの前でちらつかせながらジョセフは高笑いをする。その姿からは到底誇り高い騎士だったということを感じられない。

「あんた…。」

リズは目の前にちらつかせられたナイフを横目に見ながら、ジョセフを怒りのこもった目で見る。

「いい加減にしな!母親のためだ何だ言いながらこんなことまでやって。それであんたのお母さんは喜ぶのかい?よくやってくれたと褒めてくれると思うのかい?もっと現実をみな!」

ジョセフはそう言われ、一瞬止まる。しかし。

「うるさい!お前に母さんの何がわかるんだ!」

もはやジョセフには正論は届かなかった。


「リズ!」

その時、バンと寝室の扉は開かれ、グノが入ってくる。手にはどこからか借りてきたのかバールを持って。恐らく扉をこじ開けるのに使ったのだろう。

「グノ!」

グノはリズが椅子に縛られ拘束されている様にそしてベッドで眠っている女性にも驚きながらリズの前に立つジョセフに敵意を向ける。

「リズに何してるんだ!」

グノは大声で叫ぶ。

「うるさい!こいつが俺の母さんを助けないのが悪いんだ!」

そう言って、リズの縛られている椅子の後ろに移動。リズの首に腕を回しリズを拘束する。

「リズ!」

グノは急いでリズの下に向かおうとする。

「おっと、動くなよ。俺の手に握られているものが目に入らないのか?」

ジョセフはにやりと笑いながらグノに話しかける。

「見たところお前1人で来たようだし、お前の出方次第ではこいつを返してやらなくもないぞ?」

「…何が望みだ…。」

グノは緊張した面持ちでリズとジョセフを交互に見る。

「グノ!あんたは逃げな!私のことは大丈夫だから!」

「うるさい!」

ジョセフはグノに向かって叫ぶリズの口をふさぐ。


「こいつに母さんに対して術をかけるように説得しろ。」

ジョセフはナイフをリズの首元にあてながら、ベッドで眠る母親を見て言う。

「お前何を言っているんだ。リズは王宮専属魔女だぞ。魔法なんて使えるわけがないだろう!」

グノはリズが危険な手前、ジョセフを刺激しないようにしたかったがこれには思わず激怒する。

「そんな不可能なことをさせようとして誘拐したっていうのか!ふざけるな!」

グノはそう叫ぶと、ベッドで眠るジョセフの母親に近づく。

「母さんに何するんだ!」

いきなり自分の母親に近づいたグノにジョセフは慌て、ナイフの先端をさらにリズに近づける。

「お前こそリズに何するんだ!お前がリズを解放するまで俺はこの女性のそばを離れないぞ!」

グノは脅しとして、手に持つバールを見せつけながら言う。


「お前ら…。母さんを助けないどころか、母さんに危害まで加えようっていうのか…!」

ジョセフはもう正気を保っていなかった。

「うわあああああああああああああ!」

ジョセフは急に叫び声をあげると、リズの座っている椅子をけり倒し、椅子ごとリズを倒す。そしてリズに向かって大声をあげながら、ナイフを振りかざした。そして振りかぶる。

(やられるっ…!)

「リズ!」

グノの声とリズの心の声が出た。そしてリズの腹部にナイフが刺さるその瞬間だった。疾風が駆け抜け、狙ったようにジョセフのみを吹き飛ばした。

「ぐっ。」

ジョセフは壁に勢い良く叩きつけられ、気絶してしまう。グノは一瞬何が起きたのかわからず唖然とするが、リズのことを思い出しすぐに駆ける。


「リズ!」

グノは椅子ごと倒れているリズに近づく。すると、リズの服にちょうどナイフが刺さっているではないか。

「リズ!」

グノはリズの腹部からナイフを取り、名を泣きながら呼ぶ。すると。

「…グノ。あたしゃ無事だよ。」

ゆっくりとリズが声を出した。

「リズ!」

グノはおろおろしながらリズに言う。

「でもナイフが…!」

「私も不思議なんだが痛みも苦しみも全くないんだよ。だから安心しな大丈夫だ。」

リズはグノを安心させるように言う。

「どういうことだ…?」

グノは不思議でたまらない。すると


「それはたぶん、アリサがリズさんに魔法をかけたからだね。」

「セーヌさん!」

王宮の人々が遅れてリズを解放するためにやってきたのだ。王宮から遣わされた人々はどやどやと大勢入ってきて、気絶しているジョセフを早々に捕える。

「まったくグノ。君1人で行くなんて無謀なことを。王宮の我々をもっと信用してくれよ。」

セーヌは人々に指示を出しながら呆れたような声ででも安心した顔でグノに言う。

「すみません。そんなことより本当にリズは無事なんですか?」

グノはリズの服が裂けていることが不安で仕方ないのだ。

「ああ、我々が出発する前、アリサが教えてくれたんだ。リズちゃんに防御術かけときましたから~。って。」

セーヌはちょっと失礼するよと言って、リズの服をずらしお腹を見る。そこには傷もない綺麗な肌が見えているだけだった。

「やっぱり。アリサの魔法が聞いたようだね。」

セーヌはリズに良かったです。と言いながら服を元に戻す。グノはその一連の動作を見てやっと落ち着きを取り戻す。

「よかった…。」

「グノ…。」

リズはグノが泣きながら言うその様子に胸を打たれて何も言えない。

「俺、俺…。」

「グノ…。」

縄を解かれたリズはグノに駆け寄り思い切りグノを抱きしめる。

「リズ…!」

グノも思い切りリズのことを抱きしめ返す。セーヌはそんな2人に温かいまなざしを向けるとベッドに眠るジョセフの母親のもとに向かう。

「相当深く眠らされているね。こんな騒ぎにも起きないなんて。」

(それとも起き上がる気力すらないのか。)

セーヌはそんなことを思いながら、ジョセフの母親の顔を見る。すると。ジョセフの母の瞼から一筋の涙が顔を伝っているのを発見する。

「…あなたもつらい思いをしていたんですね。」

セーヌはそっと涙を拭きながら、眠り続ける女性を労わるのだった。


「ジョセフが壁に打ち付けられた件、あれはやはり魔術だとしか考えられないんだけど…。」

セーヌはその後、王宮に戻り牢へと向かう。そしてジョセフの身体を検査しながら魔力の残り香がないか確かめているブルーに尋ねる。ブルーは一通りジョセフの身体を持ち上げて検査するとにやりと笑ってこう答えた。

「魔力が残っている。しかもこれは新しい。」

「え?本当に?いったい誰の?アリサか?」

セーヌは驚きながらブルーに尋ねる。

「いや、これは新しい魔女様誕生の記念すべき最所の一撃だ。」

ブルーは嬉しそうに笑いながら、掴んでいたジョセフの身体をぞんざいに落とすのだった。


老女幼女は今日も平穏に暮らしたい

このお話はここでいったん終わりです。

ここまで読んでくださり本当にありがとうございました!

これからも頑張りたいと思いますので、もしよろしければ応援いただけますと励みになります!



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