恋の楽園partⅡ
更新お待たせしました!
「さあ。起きて? シルフィ?」
「・・・。」
聞こえているけど、寝返りをうって彼から逃げた。
「ふむ。君がその気なら仕方がないなあ。早く起きないと、熱烈なキスから抱擁そして、後は分かるね!?」
「!!! 起きます! ほら起きた! とうぶんいちゃいちゃは禁止ですわ!?」
パチパチと瞬きをする私。だが結局ひたいにキスをされた。
「今日はこの間言っていたサプライズをお披露目しようと思っていてね。私は先に朝食の準備をしておいた。準備が出来次第バルコニーで頂くとしよう。私は先に行っておくよ。」
今日はフィレンチェが朝食を作ってくれたのか。なら明日は私が作ろう。新婚そうそう足を引っ張りたくない。
そりゃあダメ夫も無いとは思いますが、ダメ嫁とフィレンチェに思われるのはあたしのプライドが許さない。
”いつでも誇れる自分であるよう”が我が公爵家の家訓である。全くどうしてこんな良家のお嬢さま(私)が悪役令嬢なんて不憫な役なのよ!?
でもそのおかげで殿下と結婚せずに推しの嫁(本望)になれたのだから、数奇な運命もあるのだなあというのが最近ふと思う事である。
「お待たせしたかしら。」
「いいえ。シルフィ。朝から君の笑顔は素敵だね。」
「だって。フィレンチェ。あなたがあたしの仏頂面をみたら怖がるんだもの。」
「それは本当にすまない。」
「そんな。なれてくれると助かるわ。」
「ああ。何て可愛いんだ。シルフィ。」
ぎゅっと熱いハグをしようとしてくるので全力で押し返した。
「ちょ、ちょっと!? 早く朝食を頂きましょう! ねえ!?」 グググッ
「あ、ああ。」
そんな捨てれた子犬のような顔をしてもあたし知りません。でも可愛いな。この人・・・。
あたしは不覚にもきゅんとさせられてご飯の味が分からなかった。
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「ここ足場が急になっている。気を付けて。」
そう言って彼は手を差し出しエスコートしてくれる。
「ありがとう。」
そう言って彼の手を握りしめた。こういうところで感謝を伝えておきたいものだ。
彼の優しさを当たり前と思いたくないのだから。
少し歩いた先に日当たりの良い開けた空間そしてその一体に澄み渡った泉が広がっていた。
「シルフィは水着は着てきたかな?」
「もちろんですわ。」
そっと上着と衣類を木陰の麻のかごに畳んでしまった。
少し肌寒い位の海風がふいてきた。
「ねえ。流石にちょっと寒い気もするわ。」
「良いからおいでよ。シルフィ。君も中に入ってみれば分かる。」
おそるおそる彼の手に引かれてつま先から水に入った。
「あれ、冷たくない!?」
シュワシュワと足元から泡が上がる。
これは炭酸水の天然温泉プールだろうか?
奥に行けば肩まで浸かれる深さだ。じゃぶじゃぶと水をかき分け手足をスッと伸ばした。
「これは凄いわ。それに広さもけっこうあるわね!?」
「ああ。ここは知る人ぞ知る秘境の地。気に入って頂けたようで何よりです。後はしゃいでいるシルフィも可愛い。」
「すっかりあたしの名前がシルフィで定着してしまったようね!?」
「良いではないですか。大好きな相手は愛称で呼びたいではないですか。それとも直した方が良いですか。」
「フフッ。かまいませんよ。フィレンチェ。」耳まで水につかり相づちを打った。
頭皮まで炭酸がシュワシュワと抜けていく感覚。初めての間隔である。
「それはどうも。」
「ちょいと失礼・・・。」
声のトーンがまた切り替わった。彼は何かを企んでいるのだろうか?
普段のプライベートとは変わった雰囲気を察知してあたしは上体を起こした。
思わずあたしはこの天然のプールに夢中になっていたが、見ると彼はまだ衣服を羽織っていた。
上着のボタンをはずしてたくましい腹筋が顔を覗かせていた。
まあまあまあ。思わず赤面してしまう。フィレンチェ。カッコイイ。
彼は目を閉じながら小声でブツブツと魔術の呪文を唱えていた。
突如あたしの肩はばくらいの至近距離の水面に魔法陣が浮かびあがる。
エメラルドグリーンからドンドンと白さをましていき、周囲が眩い光に包まれた。
微弱な衝撃波が発生し、天から光が注ぎだした。ひとつひとつふがまるで柱のような線を描き幾重にも入り乱れ幻想的な美しさをさらに発展させていく。
「なんてことなの・・・。」
ふわりとまるで重力を感じさせないような動きで3対の翼が舞い降りた。
彼女たちは皆目をつぶっており、柔らかな淡い光のオーラに包まれていた。
とてつもなく美しい天使が3体降臨していた。
「召喚に応えて頂き誠に光栄でございます。ハッシュさま、ポーレオさま、ティトさま。」
彼の存在は美と癒しの女神に使える大天使であり、我が国の守護神の使いであった。
「ええ。女神グランフィルテさまから指令があったわ。」
「そう。私たち姉妹に任させたの。」
「ええ。では進めさせてもらいましょうか。」
まだ何も話していない。
私の思考を予知して天使たちは喋っていた。
「私たちがお伝え出来るのはあくまでに人間でも実現可能なことよ。」
「ぜひ女神さまの教えを信じることね。」
「さあ。ありがたく教えを請いなさい。」
「横になりなさい。シルフィーナ。」
あたしは言われたまま水面に浮かぶ魔力で作れた浮くブロックに横になった。
いや。水面との段差はない。これは水面が魔力で固定されている?
身体の凹凸に合わせてリラックスした姿勢を取ることができる。しかし濡れるわけでもなく。
「側に来なさい。」
大天使たちがあたしを取り囲み、フィレンチェをよびよせ、側にいるよう命じた。
いったい何が始まるのかしら。神々しいオーラが漏れている彼女たちの存在にあてあられてあたしの身体は恐怖で萎縮していた。
「優しくするからね♪」
人間離れした白く透き通った手であたしの身体を揉んで下さった。
萎縮しているせいかより凝り固まった筋肉がほぐされていく。
「この手つきと角度と要領よ。フィレンチェ。お分かりいただけたかしら?」
ふっと微笑んだ。大天使さま。あまりにも美しいのその笑顔は尊さのあまり周囲に蛍の光のような波動を放った。
「コツはねえ。愛情を込めて優しくほぐしていくの。凝った部分も徐々にね・・・。痛かったりしたらそっとさすってあげるだけでも精神がほぐされるわ。ラインを添うようにね。筋肉を緩やかに、ツボを抑えて・・・。」
一つ一つのセリフがまるで大森林の中の木陰の涼しき春風のように説明してくれる大天使さま。
「なかなか夫婦は長い時間一緒にいると相手へのお気遣いが減る・・・。例え愛していたとしても・・・。疲れているのにお互いに気付きあうのが一番の方法だわ・・・。でも、きっとあなたたち2人なら大丈夫・・・。」
「女神さまと私たち大天使3姉妹は2人に結婚祝いの祝福を授ける・・・。」
そう言って彼女たちはひとしきり術を施した後、天へと戻って行った。
心の中に声が聞こえた。
”ねえ。この召喚に応じたのは彼の信仰心とあなたへの愛がとってもホットだったからよ? あなたを癒してあげたいと心から思っていたの。だからこれは女神さまと私たちからのプレゼント♡ フフフッ いつまでも仲良くしなさい。応援しているわ。”
彼女たちは正真正銘の本物の大天使たちだった。
彼の術は少し不格好で完璧とはとても言えなかったけれど。その優しい手つきからあたしへの愛情と温もりが伝わってくる。
「ありがとう。もう良いわ。ねえ。今度はあたしがしてあげる。照れないで!? ねえったら。」
彼はとっても嬉しそうだった。たまにこうやってお互いに術を施しあるのも良いかもしれませんね!
あたしに身を任せ、横になり力を抜き切って安心した呆けた顔をしていた。
風でシルクのようなシルバーブロンドの髪が揺れ動いた。対照的に耳は恥ずかしかったのか赤くなっていた。
読んでくれてありがとう♪