推しキャラの想い
激甘展開ですよ~!
「ふむ。お変わりないようで何よりだ。」
「国王陛下にご挨拶申し上げます。我が国のこれまで以上の発展は殿下の御威光の為と愚考致します。これからも殿下の下で手となり足となりお使い下さいませ。」
「良い。ところで、お変わりないようで安心しておる。」
「ええ。皇后殿下が最近病に伏せていると私どもの耳にも風の便りでお伺いいたしまして。どうかご自愛くださいませ。私でもに出来る事なら何なりとお申し付けください。」
「いや。マリアが床に伏せているのは事実だが、まだそなたに対して申し訳ないと思っているようだ。」
そう。皇后とはヒロイン。私の代わりに殿下と結婚して下さった、とっても良い人である。
「いえ。けっしてそのような。」
「実は、そなたとの婚約を破棄したのには他にも理由があったのだが・・・。まあ10年後にでも話そうぞ。」
「はい・・・。」
「ところで、最近またフィレンツェがそなたのところに何度か顔を出していると思うのだが・・・。」
「はい。おっしゃる通りでございますわ。」
「二言、三言しか話さないだとか。しかし全国の巡礼を我が直接行うわけにもいかないので、彼を使っている次第だが・・・。ご要望とあれば、別の者に代えよう。何か不満点でもあるのなら。」
「とんでもございません。彼の事は以前から信頼しておりますし、大変優秀ですので、用件が直ぐ終わるだけでございますわ。」
推しの顔を見れなくなるのは辛すぎる! でもそんな彼にあたし嫌われているんだよなあ。(涙)
「ふむ。なら良い。ドックハット公爵そなたの領地は大変栄えておるので、国への報告は豆にせねばならない。これからも彼を週一で遣わそうと思うのだが・・・。その返事によると異論はなさそうだな。」
「ハハッ。」
「では下がれ。私は公務に戻る。」
「ハハア。」
*****
ふう。やっと終わりました。皇后さまにはいつかちゃんとお礼を言いたいのです。でも、私が以前心から感謝の言葉を述べた時にはお化けを見たみたいな顔をしており、それからあまり顔を見せて下さらないのです。
私は本当に全然恨んでおりませんのに。ああ。あたしってばドンマイ(涙)
シュナリシュナリ。あたしは優雅に歩く。そう。この身体に産まれたからには努力は欠かせない。
美女を作るって大変だわ。この容姿に対しての責任感というか。
「おい。見ろよ。あの美しさ。」
「ウエハース公爵に知らせてくるか。あの方もドックハット女公爵さまにご厚意だからなあ。8歳年下でいらっしゃるが。」
「その言葉聞かせてもらったよ。」
「ウエハース公爵さま!?」
「ああ。彼女は何て美しいんだ!君たちもそう思わないか?」
「雲の上の存在のお方ですが、正直そう思います。だよな相棒!?」
「はい!」
「今日こそ口説いてみせ・・・。ハッ!?」
後ろからドス黒い殺気がした。
戦場も未経験である私でさえも感じる事のできるほどの強さである。
「確かに・・・。彼女は美しい・・・。周りを惑わすほどにな・・・。」
「ヒイイイイ。失礼しましたああああ!」
あまりの怖さに逃亡した。
謎の威圧感。そして彼女の周りから悪い虫(?)は飛んで行くようにいなくなった。
「出会いが欲しい。この世には神も仏もいないのだわ。この美しさでもてないなんて。ヨヨヨ・・・。あれ。当然涙が・・・。」
馬車の中で女公爵は一人涙した。
「どうか。私と恋仲になってくれないだろうか。いや。あの害虫を見る目で”お断りですわ”なんて言われたら。いやもういっそ玉砕するべきである。」
とうとう重い腰を上げて恋する乙女は駆け馬に乗った。
「公爵さま~! 少しお待ちなすって下さい。御身が危険でございます!」
「良い。今日は私一人で結構だ!」
「せめて、護衛10人はつけときませんと! って早!? もう見えねえ。」
ガタガタ揺れ動く馬車。そこに一直線に迫るのは愛の言葉を告げる使命に駆られた男!
時は今動きそうだった!
だがこの2人安定だったのである。
「ドックハット女公爵! いや。シルフィーナ! 君に話がしたい! 少し時間を頂けないだろうか!」
「スピ~。Zzzzz・・・。ホゲッ!? だ、誰かしら?」
「公爵さま! フィレンツェさまですよ? 何やら急用のようでございます!(小声)」
「ななななんで!? はわわ。あたし今の今まで涎たらして寝てたんですけど!?(小声)」
「都合が悪かったら出直させて頂く。すまなかったな。」
「だ、大丈夫ですわ。(ふう。落ち着け。あたし。大丈夫いつものポーカーフェイス!)お待たせ致しました。」
獲物を呪い殺すような鋭いルビーの瞳が男を貫く。
なんて、目つきの悪さだ。今にも心を折にかかって来ている!?
だが私は今夜見事に砕け散って見せよう! 時間は何も解決してくれない! 時を動かすのは一時の勇気だ!
昨日怪しげな占い師のおばさまがおっしゃっていた!
「今の今まで素直ななれなかったが! この気持ちを今夜君に伝えさせてもらおう!」
「はい・・・。はい!?」
「私は君の事ぶっちゃけ愛している! 君の側近から砕けた表現の方が響きますとか言われたから、このまま行かせてもらおうか!」
「え!? いやちょっと待ってくださ、え!?」
あの鋭い目つきが点になっている。これはいけるかもしれない。
「君と恋愛結婚とかもぶっちゃけしたいと考えている! (ぶっちゃけって使い方あっているか心配になってきた)」
「あの〜そのう。え~とこれは何と言いますか・・・。そのう〜。」
あの鋭い目つきがめちゃくちゃ(?)泳いでいる? これは脈ありではなかろうか?
「君が最近恋人探しをしていると聞いた! 私を選んで欲しい。君が好きだ。この世界の誰よりも。」
「聞こえないー。あたしってば妄想が幻覚になって喋っている・・・。ああああ!」
突然馬車の車体に頭を打ち付けはじめた。
「そ、そんなに嫌だったのか? すまない。だからもうやめてくれ!」
急いで駆け寄り抱きとめた。
「え!?」
いや。そんなに珍獣が出たみたいな目で見られましても。私の声はそんなにも届いていなかったというのか。
でもいつもの私を見るあの害虫を見るような視線がない今はチャンスだ。
「もしかして私とそうなる妄想をしていたのか? デレデレ(?)とでも庶民は言うのだろうか・・・。そういう事をして欲しいと?」
「はい・・・。とてもしたいです。ハッ。本物? ごめん夢だと思ってた。ちょ、今のなし!」
「そうか。では手始めに・・・。」
そっと手をとり口付けを落とす。
「ずっと長い間、君を愛していた。愛のない政略結婚をした日には身が割かれる思いだった。」
「いや。なんであたしが好き? え? 嫌ってたと思ってたから。まだ実感がないというか。」
「ほう!? この程度では伝わらないと? では何が望みだ? いや好きにさせていただこうか。」
「ちょっと? 勝手にお姫様だっこしようとするな! このイケメン! すぐに下せ! いやもったいない気もす、いや何でもない! はよ降ろさんかーい!」
「君は私の容姿に好感をもってくれるのか。とても嬉しい。今夜は君を頂こうか。一夜限りではない。生涯の愛を誓おう。」
「(シュワ~と頭から湯気)だ、大事に・・・。優しくして下さい・・・。」
白旗を振った悪役令嬢。
あの虫を見る目の彼女が私だけを見て、潤んだ瞳で上目遣いで顔を真っ赤にして・・・。私と一緒になりたいだと・・・!?
あまりのギャップ萌えに彼の脳は思考を放棄した。だって元々は振られる予定だったのだ。
「と、尊すぎる・・・。我が人生は激甘バラ色になってしまった。(意味があってるか私は知らない。でも庶民の間では最上級の表現)」
ガクリッ。私は力つき地面にそっと彼女を立たせ、後ろにぶっ倒れた。
*****
目を覚ますと、彼女の姿は見えなかった。使用人を使って私がなにやら精神錯乱の呪いが掛けられてしまったと急いで聖職者を呼び集めているらしい。
どうやったら信じてもらえるのだ? 誰か彼女の目を覚まして欲しい。
読んでくれてありがとう♪