表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

行ってきますを君に

更新お待たせしました。ちょい長めです。

予期せぬ敵国の奇襲に我が国の防衛軍は急きょ集められた。


そして私は副将軍として参加することになったのだ。シルフィ。まさか君にひと声をかけることも出来ずに出発になるとはな。


もちろんこの話に異論はない。私は陛下の忠実な駒なのだから。あの(・・)シルフィと一緒になれたのも現国王の力添えあってのものだとも言える。


それに休みもしっかりともらえ、新婚旅行だって行けたのだ。感謝してもしきれないほどだ。


何より、この国ましてシルフィに害を及ぼ悪党どもには、日頃から研ぎ澄ませてきたこの剣を喜び勇んで振るい、地の果てまでも追い詰めとどめをさす。


ああ。何たる暴挙。何たる愚行。私の愛するものたちが住むこの国に手を出すとは。我が公爵家が要する自軍の精鋭と防衛の準備は常にあった。


さあ戦争を終わらせにいこうか。


「・・・。」


「フィレンツェ公爵さまの背中からすごい闘気を感じる。」


「おれもそう思う。」


「やはり見間違えではないようだな。」


「あたぼうよ!」


「なんせおれらの魔力検知・危機感知はあの伝説の魔王直々に日々鍛えてもらっていたんだぜ!」


「ああ。それにこの隊の20人そして別働隊の20人隊も総合力では自身の戦力に匹敵するというお墨付きもいただいていた。」


「それに何より・・・。あの例の方々も来ているのだからな。例のならず者集団。暗殺者、隠密組織、殺人術のプロ。やつらが手をかけた獲物はこの地に肺すらも残らないという。しかも中隊規模と聞くから600もの戦力だ。」


「聞いたことはあるぜ。あのシルフィーナ公爵の飼い犬どもだろ。まったく味方で良かったぜ。」


「王都からの援軍で25万の援軍もくるのだ。」「ゴホンッ。」


おい。みんな静かに・・・! 視線で合図を送り合う。



「いいか。貴様ら。この戦は勝つことはもう決まっている。確かに臨国は近年軍事力が高まっていると噂は名高い。我が王国は平和ボケしているという連中がいる。全く滑稽である。やつらに目に物をみせてやれ! 国境の中に存在することを許すな。徹底的に思い知らせてやれ。やつらが全滅する前に圧倒的な実力差で絶望を与えよ。逃げ回るやつらを追いながら祝杯をあげようではないか! そして天下に示そう! 我らが王国は敵にまわしては死あるのみだということを!」


「ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」「ソウダッ」「目に物を見せてくれるわ!」「やつらをぶちのめせ!」


おのおのが戦闘意思をたぎらせる。ああ。みんな狂っている。当たり前だ。自国が攻め込まれているのだ。怒りがぐつぐつと湧いてくる。


「だがひとつだけ。足をとめるな。敵が我が軍に攻撃をしかけてこようとも、腰抜けども攻撃なんて当たるのが難しいだろう。時間はそう1分。やつらの半数を壊滅させる。良いな!」


「イエッサーーーーー!!!!!!!」


大隊規模攻撃陣。遊撃魔法騎士隊とその小隊たちはこぶしを固く握りしめた。


開戦の始まり。単発系と多段系の遠距離攻撃で敵の前線は数秒の後に壊滅した。見切って逃げられないような網目状の攻撃を展開する。


味方が打倒されても一切ひるむことはなく攻撃を展開し、敵の陣形をあらかた崩し終え、近接先頭に持ち込んだ。


「キエエエエエッ!」


酔狂な掛け声とともに遊撃魔法騎士隊のかなめの遊撃隊が1番隊、2番隊、3番隊とともに敵の殲滅へとかかる。


後ろでは魔術師が敵の陣形を見切りながら切り込み隊として遠距離攻撃で打倒されたスペースに4番隊、5番隊、7番隊、8番隊を転移で死角から襲わせた。


音もなく敵兵は打倒されていく。体感では1時間にも感じるものの30秒もたたないうちに敵の半数は打ち砕かれた。


勝ちを確信して元々堂々としていた兵士たちの士気はさらに上がった。


しかし流石は歴戦の強者たち。たった一人の白いフードに包まれた男が最前線へと異様な空気をまとって出てきたことでサッと自陣へと戻り体制を立て直した。


何やら呪文を唱えている。その手に握る異様に光る物体は何なのだ。みんなの視線が釘付けになった。黒い光が衝撃波となって風塵をまき散らす。


「ゲホゲホ。気をゆるめるな!」


「がってんしょうち!」「サーイエッサー!」


歴戦の強者たちもどきもを抜かす。その場には先ほどの不気味な男の影は見るも無残な焼死体になっていた。


脳が不可に耐え切れなかったのだろうか。首から上は爆散しておりあるべき場所におさまっていない。


強力な闇のエネルギー衝撃波が全軍を恐怖でなでつけ、突如空間が割れ始めた。


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・グルルルルッ


裂けめがどんどんと広がっていく。そしてそこには幾千もの人ならざる悪意に満ちた目が私たちをとらえていた。



*****



「諸君、新手だ。敵襲に備えろ! 来るぞ。迎撃型防御陣3展開!」


圧倒的な統率力で戦場はまた変化していく。次なる一手を先へ先へと見据えながら・・・。


総司令官の援軍はまだ来ていない。全軍終結まで時を稼がねばならない。国境警備の常備兵とその周辺の領から集った援軍。そして私の私兵だ。


この国の4分の1もの兵を指揮し戦いに備えている国家の盾の役割を果たさなければ。陛下・・・。そしてシルフィ。何とかふんばらせてもらおうか。


「遠距離攻撃魔法展開! トラップ魔法術は皆の判断に任せる。目標は時間稼ぎだ。やつら一個体の戦力は相当なものだ。直接の戦闘は現段階では避けよ。以上!」


先ずは悪しき存在のみ有効な”聖なる波動”で距離を取った。今の衝撃波で10キロほど向こうに押しやるのに成功したようだ。人間の敵兵からの攻撃は通常の対処で良い。


こちらの方が対処しやすい。相手との兵の練度の差は明確だ。主力は先ほどの戦いであらかた剝がさせてもらった。後は消耗戦あるのみ。


もう夜があけた。戦い続けて1日半。兵にも疲れが見える。遠距離攻撃の魔導士の攻撃も精度が落ちてきた。


「副将軍・・・。」

「ああ。分かっている。嫌な戦局になりつつあるな。向こうは4000体ものデーモンを使役し、やつらは体力が無限大・・・。大分こちらが分が悪い。負け筋は潰したか。」


「性急に対処済みです。転移での奇襲も向こう側も仕掛けて来ているのようですがそうはさせません。こちらとしても手札を潰すのは惜しいですが。」


「引き続き警戒せよ。」


各指揮官たちが息をひそめる。秘策を考えなければ劣勢なのだ。負けられないのはお互いさまなのだから。


「・・・・。」


静寂の間があいた。全員が思考を研ぎ澄まさる。今まで学んできた戦術のどれもが該当しない事態。ただでさえ上級デーモンを数百体、そして下級デーモンを数千体あいてどる状況がそもそも特殊すぎる。


歴史上初の大戦。油断はなかった。だが打開策はいっこうに見当たらない。


ヒタリヒタリと恐怖が絶望が近づいてくる音がする。


「恐れながら、副将軍どのに進言の許可を頂きたく存じます。」


幕がこすれる音は確かにした。だが超重要会議のひと時だ。誰も邪魔が入らないはずだったのに。


その声は・・・。




*****



5時間ほど前に私はお抱えの精霊術師や魔術師、錬金術師選りすぐりのメンバーを総動員し、緊急会議を開いていた。


情報部隊の報告によれば上位デーモンの大群の出現により戦局は壊滅的とのこと。


フィレンチェは任務のため国の盾となり命を今も削って戦っているのだ。


幸いにも最新式の馬車が完成し、戦地までは3時間で行くことができる。


しばらく現世から来て以来止まっていた思考が動きだし始めた気がする。いや確かに動きだした。


「ねえ。何か秘密兵器がないかしら。」


「残念ながら・・・。」「いつもお世話になっているのに。悔しい限りですが・・・。」


ダメだ。こんな短時間で何が出来るというのだ。前線はもって5時間という。ならタイムリミットは2時間。いえ、何か会った時に備えて1時間。


神様お願いします。フィレンチェと殺さないで下さい。どうかお願いします。


目頭が熱くなってくる。彼を失ってしまうと思うと気が狂いそうだ。


思考する。1つ 転生したこの世界はファンタジーで。魔法あり。 2つ 4コマ漫画である。


それ以外には何もなかったか。でも最初読んだときはどう思った? ここが重要なのではないか。


何かが頭をかすめた。じゃあこの4コマ漫画のジャンルは? 確かに面白くはなかった・・・


なぜそう思った? 作者の意図があったのではないか?


そう 確実に言えることは 3つ この作品せかいはギャグていすとを含んでいる、ということだとしたら。


ギャグはハッピーエンドで終える方が多い。


ならばそう。すべきことが分かった。


「みんなの力を下さい。フィレンチェ公爵をこの国を救いたいのです。」


「なんなりと。」「力の限りを尽くします。」


「この際だから言っておくけれど。前線の精鋭たちは大変屈強でデーモン大軍あいてでも3割ほどは勝率があるそうです。けっして0ではない。ところでものは相談なのですが。恐らく世界で初となるパフ魔法の開発は出来まして?」


「それはまあ、可能でしょうなあ。」

「ただ、新規開発となると呪文短縮系を使うしかない。あれは大変強力だが難易度は死ぬまで高いですぞ。」


「そして条件がいくつか求められるのです。その条件とは・・・。」


1.術をかけるあいては全軍の命を背負うものでなければならない。


2.感情を大きく揺さぶることが出来なければ術は十分に効果を発揮しない。


3.呪文の文字数は固定3文字ランダム4文字


「確認しました。それではパフ効果は誰もが勇敢に立ち向かえる強いマインドを得るということ。これをサブ効果にして。メインは敵に自身の力を増大して視認させる効果。つまり認識疎外効果よ。」


「シルフィーマ公爵それくらいでしたら可能です。あまりにも基本的な効果なので。ですが認識疎外で敵に己の力を強大だと錯覚させる効果というのは、ようはつまりこけおどしなのでは?」


「そう。それで十分なはずよ。私の読みが正しければ。もう一つ条件の追加よ。デーモン特化にしてちょうだい。より効果が期待できるものを作って欲しいの。」


「ハハッ。」(一同)


50分ほどで術式は完成した。だが誰も呪文のランダム4文字を作ることができなかった。つまりは失敗した。


どうしよう。これしか思いつかなかったのだけれど。しかしギャグ思考でおどけておちゃらけて考えてみる。


あまりにも戦場に似つかわしくないもの。そしてフィレンチェが最も心を動かすもの。それは・・・。


期待のあまり私はその場でうずくまってしまった。


「こ、公爵さま!?」


「できたわ。これは専門用語でなくともいいのよね!?」


「そうですが。」


「行くわよ!@〇□◇×△!」


羊皮紙に記述された術式が黄金色にそまり宙へと浮き文字が躍り出した。次第に空中へと溶け出している。


「成功かしら? ねえ。どうなのよ? ねえ?」


「何てことだ。成功ですぜ。公爵さま。」


「世界の理に抗う力だ(適当)」


結果は成功だった。だが誰もこの術式で今後どれだけ活躍するか分かってなかったのだ。


そして現在に至る。





「どうして君がここにシルフィーナ公爵。」


一人この戦争の勝ちを確信していた私はただ一言言い切った。


「戦争を終わらせにきました。全軍にかける頂パフ術式をどうかお納めくださいませ。事態は一刻を争います。」


「ああ、ではこちらへ。”私は全軍の命を預かるものである”」


手の平を私にかかげ彼は儀式を遂行する。


「”汝に告げる 全軍に幸あらんことを 次いで術をさずける 汝 我の言葉に耳を傾けよ。”」


ここまでは証人として居合わせた皆はここで退出となる。


この誓いは誰にも見られてはならない。術師と洗礼者の2人だけだ。


お願いフィレンチェ。この言葉で心を大きく動かして!


私は彼の目を見つめる。彼は落ち着いてと優しいまなざしをくれた。


そっと息を吸込み私は呪文の最後の一文を読み上げた。


「”世界よ神よ我に力を 術を施行する 汝に向ける言葉じゅもん・・・萌恵守廻もえもえきゅん♡”」


私はなんてことを。これはひどい。やっぱりやめとけば良かったプシュ~と頭から恥ずかしさのあまり湯気が上がっているのを感じる。ちゃんとハートマークは上手に作っていた。


馬車の中でめちゃ練習してきたのだ。マリリンの前だと上手にできてたのに。愛嬌ある笑顔で可愛くできてたのに。


フィレンチェの前だと恥ずかしいよ。死にたくなるくらいの羞恥に涙が出てきた。グスンッ。


おそるおそるフィレンチェの顔を見る。


うん!? どういう表情これ。我ながら破壊力が強かったかな。だって何を隠そう誰もが認める世界一美しい悪役令嬢なのである。


それになんかシルフィって声も可愛いからさらに破壊力が増していたはずだ。


フィレンツェの感情は突然の衝撃に限界値リミッターが多いにゲージを突破してしまっていた。


彼の脳内が絶叫まみれであったことはシルフィのあずかり知らぬとこなのだ。


とにもかくにも術は成功したようで、時間制限つきの全軍強化パフが発動した。


























読んでくれてありがとう♪ *マリリンは馬車の中で練習に付き合いつつも大歓喜だったそうです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ