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予定以上の明日

更新遅くなりました。

どうしましょう。どうしましょう!


予定外で想定外で準備が出来ておりませんのに! どうしてこうなったのよ!?


帳簿の最終確認と招待状の発行数、そしてぜひ参加したいという人々の飛び入り参加。


「いやはや。やはりシルフィーナ公爵の楽園の晩餐会ガーデンパーティーは壮大なイベントですね。」


「こんなにもたくさんの参加者が。これもやはりシルフィーナ公爵さまの人望がなせる業ですなあ。」

「そんなことはございませんわ。1つだけ。今年のは特に自信がありますの。友人や皆さんもお誘いして頂いて下さいまし!」


「お会いできて光栄でございます。シルフィーナ公爵。」

「来て下さったのね。まあ。大変。粗末でたいへん質素ではありますが、ぜひ楽しんで行って頂きたいですわ。」


「こんにちは。私もお邪魔させてもらうよ。しかし毎年たくさんの商人たちを集めて。本当にあなたは凄い方ですね。」


「いえいえ。夫のフィレンチェ公爵家の御威光あっての賜物ですわ。」


たくさんのあいさつの言葉を頂く。そして私は笑顔でお答えする。


裏でのあなたたちの行いや陰口を知っていてなおだ。


私の隠密部隊を舐めないことだ。その腕と技量には世界で並ぶものがいないだろう。その組織力や精確さは随一。


壁に耳あり障子に目ありである。口は禍の元である。私はグッとはやる気持ちを抑え笑顔を振りましていた。


いつものように社交辞令のあいさつが飛び交う。あなたたちそれは本当の気持ちかしら!? その言葉の裏は? 誰と来て何をしに来たのかしら?


貴族の社交界は文字通りドロドロである。


そんな中領民の子供たちが貴族の群れを突破した後に顔をひょっこり出してくれた。各地から今日のお祭りに参加してくれたおチビちゃんたちだ。


「あのう。公爵さま! 今年もぼくたちを呼んでくれてありがとうございます。向こうでもらったおかしとケーキとっても美味しかったです。後おかしもたくさんあっておもしろかったです。」


「公爵さま! わたしたちみんな公爵さまがだいすきです。良かったらこの花束受け取ってくれませんか。」


「わ、わたしのも!」「ぼくのも!」「手紙かいてきました!」「公爵さまだいすき!」

「あたいのも!」


たくさんの天使たちに囲まれてしまう。毎年かれらは私に会いに来てくれるのだ。


「まあ。嬉しいわ。ありがとう! みんなのお父さんやお母さんは元気にしているかしら? ここに来る途中で怖いことなかった? まあこんなにもたくさん! ありがとう!!」


一人一人に向き合いハグとおでこにキスをしてまわった。この時間のために私って生きていると思うの。本当に今日も生きててよかった。この瞬間が例え1秒だとしてもそれがあった日は最高の一日と言える。


そう思っていた。事実去年まではそうだった。だが私は思い知らされることとなったのだ。


現実は予測不能で上手くいくことばかりではなかったことに。




******



全てが一段落をし、我が領のお抱えの錬金術師たちのショーをお見せしている最中に突然絶望に私は追いつかれた。


「お嬢さま。フィレンチェさまからの伝言でございます。この手紙を会が終わる頃に渡して欲しいと。」


嫌な予感がした。フィレンチェはさっきまで私の側にいたのだ。どうして手紙で伝言なんかを!?


中には、この国は先刻、隣国からの敵襲に合ってしまったらしい。そしてその敵軍を迎え討つ副総司令官にフィレンチェは抜擢されてしまったらしい。


手紙は2部あった。1枚目の最後の一文はこう書かれていた。”もし、私が人生なかばで倒れてしまったならばどうかそのときまで見ないで欲しい・・・”


ねえ。あなたの気持ちを尊重したいの。どうすればいいの? あたしは突然の虚無感に襲われ目頭が熱くなってきた。


「公爵さま!? どうぞこちらへ。」


マリリンにそっと手を引かれ私は幕裏へと退場した。


あなた。取り乱してしまってごめんなさい。でも一呼吸だけ。私は大丈夫。だからあなたも大丈夫。だから私を置いて死ぬなんて私が許さない。


フィレンチェもしあなたの命が尽きてもあなたの想いは死なせない。あなたの夢はとてもすてきだった。


いつもとなりで話をきいていたのだから。


想い念じて自分を奮い立たせる。キツいけど。それでもフィレンチェの側にずっといると決めたのは私なのだから。


大粒の涙が行き場を失い滝のように零れ落ちる。


「お嬢さま大丈夫ですから。きっと。それに私たちもいますから。」


そっと抱きしめてくれるマリリンの温もりが伝わってくる。私は5分ほど彼女に胸をかしてもらい、何とか正気を取り戻した。


「辛いときがあったら何でも頼ってください。もちろんお嬢さまの一番好きな人には及びませんが。みんなお嬢さまのことが本当に大事に思っているのですから。今この場にいられるのは私だけですが、みんあ同じ気持ちですから。」


「うん・・・。ごめんなさい。マリリン。取り乱してしまうなんて私らしくないわよね。」


「いいえ。私こそお嬢さまの側にお仕えできて本当に幸せです。」


「フフッ。ありがとう。もう私は戻らなきゃ。来てくれた貴族たち、領民たちを送り出して・・・。それからは・・・。」


「お嬢さま。とっても大事なお話が。」


「あら。何かしら!?」


「いつもお嬢さまが温かいハグをしているおチビちゃんたちの間でよく話していることだそうです。良いですか?」


「少し気になるわね。聞きたいわ。」


「どうしたらあんなに胸が大きくなれるのかしら。」「それは夫のことが好きすぎる公爵さまだからこそだとお母さんが言っていたわ。」「ぼくもほんとうに好きなひと探してみようかな。」


少しおどけたようにマリリンは一寸劇をしてくれた。


「みんなが公爵さまたちを応援してくれているのですよ!」

「何それ。待ってフフフッ。あの子たちそんなこと話してたのね。おかしすぎるわ。」


シリアスな雰囲気が消し飛んだ。


満面の笑みでそっと背中を押してくれたマリリン。みんなが優しい。


運命に立ち向かう。私の眼力はかつてないほど高まっていた。












読んでくれてありがとう♪

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