リフレッシュpartⅡ
お久しぶりです。作者夏は好きです。海やプールが楽しくなるから。でもこの暑さだけは許さない。後アイスがおいしい季節です。
シュウウ・・・。煙が空に昇っていくような軽やかさでグリフォンは急降下した。重力を感じさせないのは特殊能力ゆえなのでしょうか。
そっとフィレンツェの方を見てみる。スーンと余裕のある表情である。少しいたずらをしたくなってしまった。
いえ。この表情は一体何を考えているのでしょう。フィレンツェ。では当ててみましょうか。
ニコニコっと横から顔を覗き込んだ。
*****
{さあ着いたぞ。人の子よ。楽しむが良い。まあお前たちなら無事に(・・・)戻れると思うがな。フッ。}
最後の念話でグリフォンさまはなぜか嘲笑を浮かべていらっしゃいました。
見渡す限り広大なわた雲。
「ここは空の上かしら。ねえフィレンツェ。ここはどこなの?」
「ここは、幻惑のわた雲盆地と言われているところだ。こう視界が悪くてもとても安全だから安心しても良い。」
ふわりと春風のような暖かくかすかに甘い香りのする風が通りすぎた。先ほどのように視界がひらける。
この薄い霧は風に流されひんぱんに移動しているようだった。
「なぜかとっても落ち着ける場所ですわねえ。」
「ああ。そのようだな。実は私も直接来たことはないのだ。良かったら一緒に探検してみないか。」
ニコリと無邪気な笑顔を向けてきた。
「ええ。もちろん!」
「ハハッ。じゃあ決まりだな!」
そっと差し出された手を握り先に進んだ。
「ねえ。たまには公務を忘れてこんな時間も悪くなくてよ。」
「私はいつだって君といるのが楽しいよ。」
「あら。それはどういう意味かしら。ってわあ。」
気が抜けたのかヒールのバランスを崩してしまい後ろむきに転んだ。
「っと危な・・・。」
思いっ切りフィレンツェの手首を変な角度で引っ張ってしまい、彼も思わずバランスを崩し倒れ込んでしまった。
ああ。これはきっと痛いに違いない。すっかり油断していた私は受け身もままならなかった。
衝撃に備えてぎゅっと目をつぶり奥歯に力をこめた。
ポヨヨンッ。予想以上の柔らかさに思わず拍子抜けしてしまった。
「ええ? 地面が柔らかい? なにこれ。最高。あらもしかしてわざとこけましたか。」
「ハハッ。その通りだ。ここは不思議な場所だろう。地面がある場所になにかがある。そのなにかを知る者はまだ誰もいないのだけれど。」
なぞの安心感が地面から伝わってくる。周囲が程よく涼しいのが快適さに拍車をかけているのかもしれない。
水気もなく土や石などとは明らかに別物である感触。あえて言葉にするのならば、”地面”である。そして色はなぜか捉えることができなかった。
「ねえ。ここは全部地面がこんな感じなの?」
「そのはずだ。シルフィ。君が気にいってくれたようで何よりだ。」
「もう少しここで横になっていたいわ。いいかしら。」
「もちろん。私も横で体を伸ばさせてもらうよ。」
穏やかな声で待っていてくれるとフィレンツェは言う。
やっぱり好きだなあ私。
彼のとなりはとても安心する。私に気をつかってそう言ってくれているというよりは彼自身も私の側にいると穏やかな気持ちになっているというのが否が応でも伝わってくる。
そっと息を吐き。そっと空気を吸い込んだ。胸が上下する。いつも彼のとなりだと落ち着いているものだが、この場所でこの時間はやはり特別に感じた。
「フィレンツェ。背中を貸して下さらない?」
「ああ良いとも。」
彼の背中が好きだ。顔をみて話すよりも心をひらける気がする。べ、別に照れくさいってわけじゃない。
「素敵な休暇をありがとう。フィレンツェ。」
「どういたしまして。シルフィ。両親にご挨拶させてしまって気疲れさせてしまったかと心配だったんだ。」
「そんなことなくってよ。あなたのご両親は素敵な方たちだわ。それに、なにかあってもフィレンツェが味方になってくれるじゃない。」
「ハハッ。いつも信じてくれてありがとう。それにまた、疲れたらここに来ようか。」
「ええ。最高のリフレッシュになると思うわ。でも2人で来たいな。」
「もちろんだよ。後ちょっとゆるめて欲しいのだけれど。」
「あら。これくらい我慢しなさい。」
彼の背に顔をうずめて力いっぱい抱きついた。
少しばかりまどろんいたのだろうか。眠気に飲まれつつ何とか意識を呼び戻そうとしていた。
となりでわた雲みたいな植物とでも言えばいいのだろうか。とりあえずそれがかき分けられ、私の目の前になにか生き物が出てきた。
何ですかこれは! 許せませんね! この世にこんなに可愛い生き物がいたなんて! 昨日までの自分が許せませんとも! 知らないとは何て大罪でしょうか!
「こ、これは・・・?」
「おや珍しいね。この土地固有種のフィラメントのヒナじゃないか。」
「フィラメント?」
「ああ。この動物は性格もおとなしいし、人懐っこいことで知られている。チッチッチ。おいでぼうや。」
「キュウウウ・・・?」トテテテテっと走りよってきた。
ズキューンと何か致命傷を与える衝撃が心臓を貫いた。
顔に手足がついたような丸っこいこの小動物。いえ。ヒナということは鳥の仲間かしら?
うさぎさんや子猫ちゃん、そしてキタキツネの赤ちゃん、そしてスライムをたして可愛さだけを残しただけの生物のようだ。
抱っこして欲しいのか一所懸命にお手てをのばして来ていた。
第2の衝撃波が胸を駆け抜けていった。ヘナヘナっと全身の力が抜け去っていってしまった。ポスっと支えてくれたフィレンツェありがとう。好き。
「わあ。お利口さんだねえ。私が抱っこしてあげよう。」
もこもこ目がまんまるで可愛すぎるフィラメントちゃんをあやす聖人のようなひと。
私の一生の推しにしようではないか。
両手いっぱいにひらいて推しに優しくハグをした。
「キュウ~。」
初めてみた動物なのに笑っていると分かるほどの優しいまなざしでフィラちゃんは小さなお手てで私の手の甲をそっと猫パンチしてきていた。
「可愛いねえ。」
「ああ。本当に。ちょっと代わってくれないか。」
「ええ。いらっしゃいフィラちゃん。お姉さんが抱っこして上げますわ。」
「あ、ちょっと。急に何を・・・。」
彼がそっと私の頭をなでたのだ。ヤバいこれは想定外ですわ。
「シルフィ。君も可愛いよ。君と一緒にいられる私は幸せものだなあ。」
私はどうやらポーカーフェイスになる方法を忘れてしまったらしい。急に驚かせておいて、可愛いなんて卑怯だと思いますの。
フィレンツェがちょっと意地悪である。でもそこも好きです。もう大好き。
「フフっ。当然ではないですか。」
なぜか急上昇で自己肯定感が上がった。なぞ現象である。遠くでフィラちゃんの親が呼んでいる声が聞こえた気がした。
読んでくれてありがとう♪ 更新遅くてごめんね。




