第一話 入学式と出合い(2)
私が突発的なことに驚きその場で立ち尽くして数秒、カズハに抱きすくめられていた相手が言葉を発する。
「いい加減に離してもらえないかしら?」
「え? あれ、 あ!? す、すいません!? いま離します。」
親友のカズハから今まで聞いたことのない狼狽した声が発せられ、私は驚愕してしまい周りの目線を憚らず声を上げてしまう。
「カズハ、大丈夫?! 頭を打てないわよね?」
「オリビア? 大丈夫だけどなんで?」
「だ、だって。」
「ちょっとあなた達、わたしを無視するとはいい度胸ね。」
様子がおかしい親友のことが心配だが、まず謝罪をしないといけないと思い、私はカズハとぶつかりしそうになった相手に向き直る。
「申し訳ありませんケイト様、私たちがよそ見をしておりました。」
「あらあなた、確かカートライト商会の。」
「オリビア・カートライトと申します、お見知りおきいただき光栄です、ほらシンあなたも。」
「カ、カズハ・ハイランドです! 先ほどはご無礼を働き申し訳ございません。」
王国の中でも有数の財力を持つ侯爵家の一人娘ケイト・アップルヤード 、正直言って彼女の評判は芳しくない、礼節を欠く相手にはかなり厳しい態度で接するために、私の様な成り上がり者からは狂犬と怖がられており、私も表に出さないが今この瞬間もなにを言われるか戦々恐々していた。
「先ほどのことはわたしも気が立っていて周りへの注意が散漫になってしまったから、謝罪は要らないわ。」
「え? ですが。」
「なに? オリビアさん、わたしが良いと言っているのよ、そのことに何か不満でもあるのかしら?」
「す、すいません、ご配慮いただきありがとうございます。」
「よろしい、さあ、お二人とも早く教室に入らないと担任の先生が来てしまいわすわよ。」
「は、はい!」
……
担任の先生と生徒の自己紹介が終わり、カズハと私は帰路につく。
「ケイト様と会ってから何か様子がおかしいかったど、本当に大丈夫?」
「え? だ、大丈夫だよ?! オリビア。」
「中々に分かりやすい反応をするわね。」
「うぅ。」
「相談くらい乗ってあげるけど?」
「……え、えっとね?」
数秒の沈黙の後、顔を赤くしながら、カズハが喋り出す。
「私ね、ケイト様に一目惚れしてしまったみたい。」
今日、混乱するのは幾度目だろうか、……え? どういうこと? !
「そ、それはどういう意味で?」
「え? あ?! 勿論それは憧れとか、お側にお仕えしたいとか、そういう意味でだよ。」
……カズハの受け答えに何か釈然としないが今はそれよりも大切なことがある、カズハが他人にここまで興味を持ったり感情を表に出すを私は今日初めて見た、もしかしたらケイト様はカズハのこれからにおいて重要な存在になるかもしれない。
「まぁ、応援ぐらいはしてあげる。」
「うん、ありがとう。」
「それにお側にお仕えしたいて願いは案外直ぐに叶うかもよ。」
「え?」
「え、てカズハはこれからメイドとして勤めする先を紹介してもらいに行くんでしょう?」
「あ、そう言えばそうだったね。」
「もしかしたらアップルヤード家を紹介してもらえるかもよ。」
基本的に学園内は教員と生徒以外は立ち入り禁止である、とっいても貴族階級の生徒はその身柄故に誰かがそばに仕えていないとトラブルの元なりやすい、その為、一般生徒を従者として雇い学園内での身の回りの世話をさせることが多いのだ、なのでケイト様つきのメイドに成れる可能性はあることはあるが。
「さすがにそんな偶然があるかな?」
「まぁ、さすがにね。」
………
二日後。
「とゆことでケイトお嬢様の専属メイドに成りました。」
「……え?」