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ひどく疲れ果てた主婦が輝きを取り戻すまで  作者: 織花かおり


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12/42

12、ほんの少しの明(やめるまで後2日)(5日目の出勤)

このスーパーは、かなり福祉にも福利厚生にも熱心な職場です。

私は早めに出勤するのを習慣にしていた。

なぜなら、あの事務室に入る時の緊張感。

人が少ない方が、ずっと楽だからだ。

あの独特の雰囲気にすっかりやられてしまっていた。

「おはようございます……」

「おはようございます」

チーフが事務室にいた。

この部屋で初めてチーフを見て、ドキドキした。

周りを見ると、上着を脱いでエプロンを付けている人が2人いて、こくんと頭を下げてくれた。

「佐竹さん、お仕事にも慣れるのが早くて助かっています」

私は、いきなり褒められてどぎまぎした。

「いっいえっ。そういっていただけて嬉しいです」

「本当に覚えるのが早いですよ。ミスも少ないですし」

「いえっ。私なんてまだまだで。どなたかが側にいてくれたらと思うんです」

そういったとたん、エプロンをつけていた一人の女性が私をみて、言った。

「チーフ、多分こういうところだと思います」

「???」

私は頭がはてなマークでいっぱいだった。

何がそういうところなの?

「そうかもしれませんね。佐竹さん、加藤さんに斎藤さんがついているのは知っていますね」

どくん。

加藤さんという言葉を聞いて、私の心臓は嫌な音を立てた。

「いつもなのは存じ上げませんでしたが、斎藤さんと一緒にお仕事をしているのを一度お見掛けしました」

「斎藤さんは、オーナーの娘さんなんです。」

びっくりだ。

道理で加藤さんの対応に割ってはいるわけだ。

一社員としてより。経営者側としての対応だったのだろう。

「そうだったのですか。私はてっきりアルバイトをされている方かと思っておりました」

「斎藤さんは、いずれこのスーパーを継ぐ方です。そのために、今から勉強しているのです。だからと言って、かしこまったり、特別視したりする必要はないですよ。ご自身はスーパーで買い物客と働く人の役に立つのが生きがいだと言うような娘さんですから」

「そうだったのですか。あの……加藤さんはベテランなのに、なぜ斎藤さんと一緒に仕事されていらっしゃるのでしょう?」

「そうですね。今朝はそれを佐竹さんにお話ししようと思って待っていました」

え?私に?加藤さんとのトラブルのことがチーフの耳にも入ったのかしら?

私はちらっと斎藤さんの顔を思いうかべた。

「加藤さんは、〝障害者枠“での採用で、感情障害をお持ちです。ですから、加藤さんの負担を減らすために、斎藤さんがついているのです」

衝撃の事実。

「そうだったのですか」

私は、やっとの思いで言った。

「あの、誰かについていてほしいなんてこと言ってしまって、申し訳ございませんでした。もっと精進してがんばります」

チーフはすこし思案顔をして何か言おうか迷っていたが、すぐ笑顔になって言った。

「そうですね。佐竹さんならきっと大丈夫でしょう。では、今日も宜しくお願いいたします」

???

大丈夫?

何がだろう?

そう思ったが、その時の私は加藤さんの障害のことで頭がいっぱいで確認できなかった。

今までの加藤さんの態度や言動は、すべて感情障害のせいだったのね。

きっと調子が悪かったのだわ。

そう思うと、気が楽になる。

加藤さんにも、無視されても明るく声をかけつづけよう。

そうすることで、加藤さんの心が上向きになるかもしれない。

私はやるべきことが分かり、明るい気持ちでその場を後にした。

その行為が、ものすごく悲惨な結果になるとはしらずに……。


お読みくださり、ありがとうございました。

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