8:今日の授業はダンス
今日の後半の授業はダンスだった、ユリのときには中学高校の体育でワルツくらいは習ったからそこそこ形にはなるかなって思ってたけど、そんなに甘くはなかった。淑女教育をなめちゃいけないって思い知らされたよ。ここでもリリーの体に条件反射レベルで叩き込まれている基礎があって助かった。それがなければベニーズとかクイックステップは途中でステップを間違えるくらいじゃ済まなくて転んじゃったりしてたかも。
普通のワルツはまだまし。傍目に綺麗に見えたかはともかく、なんとかスムースに動けた。だけどだけど、一見難しくなさそうなスローフォックスとかがめちゃくちゃ難度高いよ。ゆっくりした動きを滑らかに流れるように続けて綺麗に見せるのってめちゃくちゃ難しい。細心の注意と集中力が必要で神経も体力も容赦なく削られちゃう。それでも何度も何度も指摘されてやり直しさせられた。
授業の後半には少しずつおしっこしたくなってきたので、ゆっくりした動きのときに踊りながらお漏らししちゃおうかと思ったけど、もっと上達しないと無理だ。おしっこに意識が向いたらゆっくりかつ流れるような動きは維持できないや。
若い未婚の女の子はいつでもどこでもお漏らししてもかまわないとはいえ、私達くらいの歳の女の子はいかにもいまその最中ですっていうような表情や素振りを見せることなく何事もないかのように済ませるのがのある種のお約束事らしい。
今の私の技量だとダンスパーティーのときは壁の花になれるタイミングで庭先に出るのが現実的だね。
そういえば、こっちの世界じゃダンスパーティーで女の子を酔わせてお持ち帰りとか絶対無理だね。来る子はだいたい従者とか専属メイドとかが一緒に来てるから下手に撒いたら誘拐騒ぎになっちゃう。主催家の関係者がお屋敷のどこかの部屋に連れ込んで押し倒すのが関の山かな。むしろ主催家のお嬢様が狙ってる殿方を自室に“ご招待”して既成事実を狙う方が余程ありそうだ。