25:社交
弟の筆おろしが済んだので次は私に婚約者を用意するんだって。お見合いとかさせられちゃうのかと思ってたら社交デビューだった。お母様に連れられてガーデンパーティー形式のお茶会とか、お父様に連れられて夜会とか。
要するに未婚の女の子は社交界にデビュー=結婚市場に売りに出されたということなんだって。なるほど。
女の子は社交デビューしてだいたい1年以内に婚約者がほぼ決まるらしくて、2年以上決まらないようだと何か問題のある瑕疵物件なのではという疑いを持たれてますます縁遠くなっちゃうらしい。
夜会はようは夕刻以降に開催される軽食ありの舞踏会だけど、最初の夜会に行くときにお父様から婚約者が決まるまでは一度の舞踏会で同じ男の人と3回以上踊らないようにと注意された。夜会も含めて一回の舞踏会で同じ男の人と3回以上踊ると男性も女性も周囲からはそのお相手が本命と見做されちゃうんですって。でもって、最初の夜会は顔見せメインというか知ってもらうことが最重要で、初顔見せの令嬢には多くの方から声をかけていただけるはずだから出来れば一度ずつできるだけたくさんの人と踊るようにですって。
お父様はそうおっしゃったんだけど、当日の出がけにお母様から「なんとなくこの人とは合わないと思う方から2回目のダンスのお誘いを受けたらうまく辞退なさいね。2回踊るのは有力候補に考えてますって周囲に見せることでもあるから後で婚約の打診があったらお断りしにくくなっちゃうから。」ってアドバイスされた。
そう、社交デビューすると婚約者を選ぶ時期の男の子のいる家はデビューした女の子の家の家格とか派閥とか経済力や影響力とか女の子本人の評判とか誰がカヴァネスをしているかとかの情報を集めるんだそうだ。
要するに女の子の実家と縁を結ぶメリットがあるかとか自家の嫁とするに足る器量と教養、素養があるかとか。
加えて交友関係が大丈夫かとか、実はもう予約済みだけども体裁があるから形だけ社交デビューさせたんじゃないかとか、もっと言えば貴族令嬢として人に言えないような悪い遊びをしていないかとかのヤバそうなリスクの調査。
家格はまあ最初から判ってるし経済力なんかも家格と著しく乖離してたら当然噂は出回ってるから最初から知られているみたいなもの。なのでそっち関連でいきなり落第になることはまず無いらしい。やっぱり本人に貞節や純潔を疑われちゃうような噂があるのが一番不味くって、次に不味いのが浪費癖の噂なんだそうだ。
そのへんが合格だったら共通の知り合いの家のお茶会に呼ばれたりして器量や教養をそれとなくチェックされるらしい。すっごい美少女だと余程残念な人でないかぎり採点がかなり甘くなるらしいからやっぱ美人は得だよね。
ただ、本人的に油断できないのはユリだった時の世界と違ってこっちは貴族家の婚姻だと旦那様になる人は上は7歳差、下は4歳差くらいまではごくあたりまえ、家の思惑次第で上20歳ちょっと、下10歳ちょっと差くらいまでは許容範囲扱いなことだ。お父様くらい上とか下手したら自分の子供と間違われそうなほど下とかはちょっとねぇ。
ユリだった時のお友達にはそのくらい離れた人とセフレやってる子もいたからスルこと自体は出来るとは思うけどさすがに配偶者としてはちょっとね。このへんは本人に拒否権無いらしいからせめてお母様に頑張って防波堤になっていただかなくっちゃ。それにいま下10歳も離れた男の子の婚約者にされちゃったら出来るようになるまで7〜8年は待たないとダメなんじゃないかしら?やっぱり花綻ぶ年頃に蜜蜂の訪れを我慢しなきゃいけなくなるのは辛いから勘弁してほしいよ、女の子にだって性欲はあるんだから。
次の投稿まではまた暫く開きます。




