2:お着替えと朝のごあいさつ
メイドさん達は私が盛大にベッドを湿らせ(うん、文字通りBedwetだ)ネグリジェの背中側を派手に濡らしてしまってるのに特に何も言わず当たり前のように私を着替えさせる。うーん、プロだ。
あらかじめ盥にお湯まで用意してやってきて濡れタオルできっちり拭かれ、最後にはベビーパウダーまではたかれてしまった。その間にメイドさんの一人は手早く濡れたシーツとベッドパッドを丸め、掛布団も除けてマットレスの拭き掃除を始めた。この用意の良さは何?状況に手慣れすぎてない?
あと、この昼間用の下履きは何だろう、見たことない生地だ。薄手で見た目の稠密さのわりに通気性もいい、それでもって吸水性はほとんど無いみたい。さっきまで穿いていたのはどうみても綿のドロワースとパンタレッツの中間みたいな下着だったのに。
髪を整えてもらっている間に手鏡にうつる自分の顔を見る機会があった。そこそこ美少女だ。見たところ高校生くらい?中学生でもおかしくないか?よかった。女の子である以上、美少女かどうかで人生イージーモードかどうかが全然違っちゃうものね。この社会の美少女の基準がまるで違うものじゃないことを祈ろう。神様、よろしく。
あ、そこ、昨日までの私、今まで神様なんて碌に信じてなかったのに何言ってんのよなんて責めないで!
恥ずかしい事態でのスタートになってしまったのはなんだかなぁとは思うけど状況は受け入れよう。足掻いてどうにかなるようなものではなさそうだし。
この体の本来の持ち主の子にはちょっとどころかかなりごめんなさいって言わなきゃね。一番そういうのが恥ずかしい年頃なのにおねしょっ娘の汚名を着せちゃいそうだし。それどころか、万一もとの私と入れ替わりだったりしたら本当にごめんなさいだ。この世界よりは科学技術文明的には発達していて生活するには便利だけど、人に言えないようなことしてストレス解消してる彼氏なしアラサーOLの残りの人生を歩んでもらうことになっちゃう。
メイドさんに誘われて食堂らしき部屋に行くと両親らしき年頃の男女と、男の子と女の子がひとりずついた。うん、たぶんこの方が母親よね、鏡の中の私とよく似ているし。
母親らしき女性に「リリーさん、よく眠れた?」と言われた。柔らかい感じで娘に対して愛情ある声掛けをしてくださっている声音だ。私、リリーっていう名前なのね。よかった、親子の仲は悪くなさそう。
「はい、お母さま。とても良く眠れました。少し寝坊してしまってごめんなさい。」と答えたけど、言葉使いが元のリリーさんと違いすぎで疑問に思われたりしてないよね?あと、おねしょしちゃったのはあえて触れなかった。食事前の話題ではないと思うし、必要ならメイドさんたちから報告が上がるだろうしね。あとで男の子の方からからかわれちゃったりするのかな。
女の子のほうは「おはようございます、お姉さま。」と挨拶してくれた。名前が判らないので申し訳ないけど「ありがとう。おはようございます。」とだけ答えた。うん、やっぱりこの娘は妹なのね、似ているからそうだろうとは思ったけど。小3か小4くらいの歳かな?男の子の方は小6くらにみえる。
朝食はヨーロッパ風、コンチネンタルではなくて英国式だった。うん、その方が嬉しい。でも夕食はフレンチ寄りだといいな、イギリス料理って美味しくないし。
この世界の教育制度ってどうなっているんだろう。学校とかあるのかな?私の歳も微妙よね。元の世界なら間違いなく女子中学生か女子高生だけど、ここが欧州中世末期と同じような社会だったら成人扱いの可能性もあるし・・・そこまででなくても淑女教育とか言ってダンスとか礼儀作法とか厳しくやられたらどうしよう。そういうの興味はあるんだけど本の知識と体育の授業くらいで本格的なのは基礎も学んでないもんね。ハイレベルなのを要求されたら大変だ。カーテシーだって一見簡単そうでも綺麗なカーテシーにするのって凄く難しいらしいし。
ちょっと踏み込んだ描写で書きたくなってきたので、この回の分から書き直してノクターンの方に投稿しなおすかもしれません。あるいはR15版と2とおり書くか。すこし考えます・・・・。