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千夜  作者: たね
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 あれから、彼女と再会することはなかった。



 あの日、彼女から受け取った番号は、彼女のもとへつながることはなく、この番号は現在使われていないという旨の音声がただ、虚しく耳の奥に残った。

 彼女のもとへ繋がることのない番号を教えられたことに対して、自分が拒絶されたようで、一時はがっかりしていたけれど、どこか納得がいくというか、合点がいくというか、このような状況を案外すんなりと受け入れていることに、自分自身気づいていた。




 彼女の存在はあまりにも希薄で、繊細で、この世界には、あまりにも優しすぎた。彼女は傷ついた私の、傷口をそっと包むように、なでるようにただただ寄り添い、私に優しさだけを与えて、自分は何も望むことなくいなくなってしまった。





 そのあとも私は何人かの女性との出会いと別れを繰り返し、毎回同じような理由で別れを告げられ、傷つきながらも、なんだかんだでまた傷も癒えて、歳相応の恋愛を繰り返した挙句、学生時代の友人の紹介で出会った女性と結婚した。

 これは本当に失礼なんだけれど、決して綺麗とは言えないけど、色が白くて笑うと愛嬌たっぷりの可愛らしい女性だった。

 もしかしたら私が今まで手ひどく振られてきた理由はここにあるのかもしれないな、と思わず一人で苦笑いしてしまった。千夜にあの夜似合わないといわれた顔をしてしまっただろうか。自分で自分のことはよく見えない。




 その女性と付き合う頃になっても、まだチヨとの一晩の出来事がまだ心の自分でもわからないくらいの奥底に眠っていたような気がする。

 

 しかしやがて、その女性と結婚し、子どももでき、やがてチヨのことは思い出さなくなっていった。





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