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オトナの秘密?

私、ルーディン・ルールーがお仕えしているお嬢様は今朝も天使でめちゃ可愛い。


お肌ツヤツヤ髪もツヤツヤ。

うむ、こないだ魔女っ娘メリーから弟のシャツと引き換えに頂いたオイルがいい仕事をしているようだ。


私はニマニマ頬を緩めながら丁寧にお嬢様の長い髪をブラシで梳いていく。

お嬢様の髪は氷の貴公子様(ぷぷ)とか呼ばれちゃってる兄君と違って蜂蜜みたいな柔らかい金色をしている。

髪質自体も柔らかくて少し広がりやすいのが難点だけど、きちんと手入れして梳かすとーー。


「……ふぁ」


変だな。

今朝は妙に欠伸が出る。

きちんと睡眠はとったはずなんだけど。

夕方は恒例のどんちゃん騒ぎではあったが、あれくらいの酒量で翌朝まで体調不良を引きずるほど私は軟弱ではない。そもそも酒瓶の10本や20本で二日酔いになるようではハルトバレル候爵家の使用人は務まらないのだ。


なのに今朝は奇妙だ。

欠伸はやたらと出るし、何故か身体が心なしダルい。

しかも何故だか下半身がカクカクするんだよね。

筋肉痛?

私は首を傾げつつも手は止めずにお嬢様の豊かな髪を丁寧に丁寧に梳いていく。


早朝から出かけたからだろうか。

でもそれだって別に珍しいことではないんだよね?

なんだか起きたら今行かないといけない気がして、夜明けに邸を抜け出して町の外れにある赫金の魔女メリーの庵に出かけたのだ。

薬をもらいに。

あれって何の薬だっけ?


ーーあ、メリーに代金支払いに行かないと!

今回の代金は確か我がイケ弟の使用済みバスタオルとガウン。

また洗濯メイドに賄賂を用意しないといけない。


ねじねじねじねじ。

サイドの髪をねじねじ捻ってハーフアップに纏めて髪留めで留める。

指先に軽くクリームを付けて毛先を整えたら完成だ。


っし、バッチリ!


少し後ろに下がって出来上がりを最終確認し、私は頷いて前でお嬢様の化粧を施している同胞にグッと親指を立てて合図した。したらまたも鼻がウズいて慌てて口元を手で塞ぐ。

慌てて動いたら何故か全然関係ない部分がピリッと痛んで「……ぅっ」となった。


あれ?私ゆうべ酔っぱらってどこかにぶつけでもしたんだろうか。けどこんなところ、ぶつけるか?

なんか他人に言えないアタリがピリピリムズムズするんだが……はて。

む~んと眉を顰めていると、こちらを振り返ったお嬢様とぱっちり目が合った。



ーー可愛かわええ。

今朝も私の可愛いお嬢様は可愛い。


私のお仕えするハルトバレル候爵家のお嬢様、リスメリア・ハルトバレル様は今年成人の15才でふわふわな蜂蜜色の髪に奥様譲りのオレンジがかった暖色系の金の瞳に白い肌、卵型の輪郭にぷっくりした珊瑚色の唇をした超可愛い可愛い可愛いしつこい?でも可愛いだもん。仕方ないよね。可愛いくて天使でお馬鹿ででもそこがまたチャーミングな美少女だ。

全体的な顔の造作は兄である御曹司と男女の差はあれど似通ってるんだけども、うん。


髪や瞳の色味が父母それぞれからそれぞれ受け継いたから、御曹司な氷の貴公子様(ぷぷ)は寒色系のイメージ。

お嬢様はふんわり暖かな暖色系のイメージ。

お二人の雰囲気は見事に正反対に違う。


まるで北風と太陽。

実際に御曹司様はよくブリザード吹かせてるしね。

お嬢様に近づく令息という虫たちに。


気持ちはよくわかる。

こんだけ可愛い妹がいればそりゃシスコンにもなるよ。

私なんか他人だけどシスコンな気分だし?

学校でお嬢様の周りをパタパタ飛び交う羽虫共を査定して報告書を上げるのはお付きとして同行する私の役目で小遣い稼ぎだし。


なんてことを考えていると。


「ルー、顔色が悪くありません?具合が良くないのではなくて?」


お嬢様が私の顔を覗き込むようにして言った。


「無理をしてはいけないわ。今日は休んでくれてもいいのよ?学校へは別の者に付き添ってもらいましょう」


なんですと!?


「いえいえいえいえいえいえ大丈夫です!何でもありません!!私、元気ですからっ!」


せっかくの登校中のお嬢様を間近に見られるご褒美タイムなのに!

授業中のちょっと気怠気な様子とか、問題がわからなくて困り顔な横顔とか、そういう邸とはまた違うお嬢様を使用人控室の小窓から覗き見るのが私の至福の時間なのに。

え?周りの呆れた視線?あるけどそんなの知るか!

たかがちょっとダルいとか下半身がカクカクカクするとかなんか妙な箇所がピリピリムズムズするとかごときで人に譲るなんてできませんって!!

私はブンブンと両手を振って「何でもない」アピールをしたんだけども……。


何故か化粧係の同胞がニヤッとしておかしなことを言い出した。


「ふふふっ、そうよぅ。今日はと~ってもお疲れでしょうから、ゆっくり休んた方がいいんじゃない?」


ニマニマ。

ニヤニヤ。


何やら含みがあるっぽい物言いに、私が顔を向けるとなんのつもりかウインクが返ってきた。

私は頭の中にハテナマークを山盛り浮かべながら、首を傾げる。


「はい?」


なんだその生暖かい笑みは。


「……や~ね、とぼけちゃって。客室係のケイトがもうあちこち言っちゃってるわよ?あのコ、今朝のベッドメイクの係だったから」


うふふふふ、とか笑ってますが。

いや、ホントに本気でなんのことやらわかんないからね?


「なぁに?」


と、お嬢様がコックリ首を傾げる。

クッソ可愛いな!!


「……いえ、私もなんのことやら」

「やだ、とぼけちゃって。ま、別にいいけど?ーーうふふ、お嬢様には少し早いオトナの秘密なんですのよ」


なんじゃそりゃ、と私も首を傾げつつ、残留をアピールしたものの、ニマニマの止まらない同胞に追い出されて強制的に本日は休みになってしまった。




トボトボと自室に戻るその道中。

なんだろう?

いったい何故どいつもこいつも生暖かい視線を寄越してくるのだ。


たぶん何やら誤解があるんだとは思うけど、今はその視線に妙に心が疲れたよ。

もういいや。

なんか知らんけど後で誤解は解けばいい。


とりあえず部屋に帰って今日は寝よう。



そう決めて、廊下を自分の部屋の方へ曲がり。

その私の、部屋。

その前にいた人を視界に認めた途端ーー。


私は逃げた。

なんでか知らんけど、猛ダッシュで。

とにかく逃げ出して、そしてあっさりと捕まった。

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