01 主人公、死す
前から書いてみたかったものを書いてみようと思います!どうか暖かい目で見ていただきたいです!
「よっしゃ来たぁぁぁぁぁ!」
「またなぁにバカ騒ぎしてんの?」
教室に戻るなり大声で叫んだ少年、山口雄輝に須川唯斗は呆れ顔になっている。
「ばっかやろ!これが叫ばずにいられるかよ!とうとうあのゆりちゃんとデートの約束を漕ぎ着けたんだぜ!」
「うそん…まじかよ…」
西ノ宮百合、眉目秀麗スポーツ万能で、オマケに大企業のお嬢様と言った完璧人間で男女問わず人気がある絵に描いたような理想の女の子だ、雄輝は顔も整っていて部活も全国トップレベルの中々の色男…なのだが、すぐに下ネタを言うところと軽い性格なところが災いして、決してすごくモテるとは言えないだろう、そんな雄輝がなぜあの西ノ宮百合とのデートの約束をこぎつけられたのか、唯斗は驚きのあまり目を見開いて口をパクパクしていた。
「確かに百合ちゃん百合ちゃんってずっと言ってはいたけど、お前よくあの西ノ宮を落とせたな」
「友情!努力!勝利!これさえあればなんだって出来るんだよ!」
「お前は少年ジ〇ンプか」
とは言っても唯斗も親友の雄輝が好きな女の子とのデートの約束まで行ったという事はやはり嬉しく、自然と頬が緩んでいた。
「で、いつデートするの?」
「そりゃあもちろん…今日だ!」
「まじすか」
「おう!しかもな!なんとなんと!夕方は映画、夜は花火大会の二段構えよ!そしてそしてぇ!花火の最後の1個が上がった時に、俺はゆりちゃんに!」
「まてまてまて、テンプレ、テンプレの嵐、もうその先わかる、すごくわかる、告白すんのね、そんでもってOKもらって帰りに手繋げちゃったりしたらいいなーなんて考えてんのね」
「な…何故それを…」
お前はエスパーか!とでも言いたげな顔で雄輝は目を真ん丸くして唯斗を見つめる、唯斗と雄輝は幼稚園の頃からの10年来の付き合いであり小中高と今までずっと一緒にいたのだ、わからないわけが無い。
「それでこれから映画?」
「そうそう!今ゆりちゃん待ち!待ち合わせ場所はここ!」
「!お前…俺もいるんだから違う場所にしてくれよ、人のデートの待ち合わせ場所に居あわせるとかやだよ俺」
唯斗が悪態をつきながら机から立とうとした時、教室のドアがガラリと開いて、まるで女神の生き写しのような女子が入ってきた。
「ごめん山口くん、委員会がなかなか終わらなくて、結構待ったよね?」
「ううん!全く!俺も今来たところ!」
「お前元々この教室だろ」
豪快にサムズアップをしてみせる雄輝だが、言ってることはめちゃくちゃなので格好ついていなかった。
「はぁ、じゃあまた明日な、花火大会、頑張れよ雄輝」
「ちょ!そこ誇張すんのはヤバいって!」
心底面白そうに笑うと唯斗は教室のドアから出て行った。
「じゃあ山口くん、そろそろ行こっか!早くしないと[花子VS丸子]見損ねちゃうよ」
「う、やっぱそれ見るのか…」
そう、何を隠そう雄輝が西ノ宮百合をデートに誘えた理由は以前近くのレンタルビデオ店で偶然ホラー映画を根こそぎ借りている百合を目撃し、ホラー映画好きだと知ったからである。
「私このシリーズ大好きなんだよね!前作の[花子3D]も大好きだったから!絶対面白いと思う!」
「そそ、そうだね~絶対面白いよね~」
雄輝は本当はホラーがとても苦手であり、ゆりちゃんと仲良くなるため!と花子3Dを見た時も弟にずっと隣にいてもらい、しまいには怖くて寝れなくなったのだ。
当の百合はそんなことを知るはずもなく、今から出会えるであろう新たな作品にウキウキと心踊らせていた。
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「面白かったねぇ〜花子が丸子に食べられるところとか本当に作り物?てくらいにリアルで思わず息を飲んじゃったよ!」
「あ、あはは、そうだね〜ありえないくらいリアルだったね〜」
(な…なんだよあれ…前のより数倍は怖いじゃないか!!!)
「じゃあいい時間だし、そろそろ花火大会の会場行こっか!」
花子と丸子と言う可愛い名前からは考えられない予想外のグロさと怖さに雄輝の心は折れそうだったが、いや、ゆりちゃんが楽しかったならいっか、とすぐに気を持ち直して今度は花火大会へ期待を膨らませながら百合の後をついて行った。
「わ!もう花火始まっちゃってる!」
「ほんとだ!だけど大丈夫!まだ始まったばっかりだよ!!」
花火大会の会場に着いた雄輝達はたこ焼きや焼きそばなどのお決まりの品を買った後に見えやすい丘の上に移動した、穴場だったのか幸いなことに雄輝達以外に人は来ていない、雄輝が花火が終わるその時を今か今かと待っていた、そして最後の1発、雄輝は満を持して切り出した。
「ゆりちゃん、いや、西ノ宮百合さん、俺は、君のことが………」
突如雄輝の声を打ち消すような悲鳴がいくつも聞こえ始める、ただ事じゃない雰囲気だ。
「え!なに?悲鳴?」
「落ち着いてゆりちゃん、ちょっと様子見てくるから待ってて!」
折角の正念場を邪魔された苛立ちからか小さく舌打ちをしながら下の方を見ると、中年の男が刃物を振り回して暴れていた、既に刺された人が何人も倒れている、しかも男は真っ直ぐに百合に走ってきていた。
「うっそだろおい!ゆりちゃん!!!」
雄輝が全力で何とか男より先にゆりの元へつくと何とか逃がそうと反対側へ押した瞬間、背中に違和感を感じた。
「ん?」
気づくと背中から明らかに致死量の血が流れ出ていた、雄輝はそのまま前のめりに倒れ込み動けなくなった。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」
ゆりちゃん、俺は大丈夫、鍛え方が違うから、何とも………あれ?聞こえてないのか?…違う、俺の声が出てないんだ
「雄輝くん!雄輝くん!そんな!やだよ!さっき、なにか言おうとしてたよね!ちゃんと最後まで言ってくれなきゃわかんないよ!!」
あぁ…結局言いきれなかったな…俺は…ゆりちゃん、君の事が…
後ろの方で複数の警官が男を捕えているのが見える、これでゆりちゃんは刺される心配は無いな、と安堵した雄輝の意識は地面に吸い込まれるように沈んで行った。
次回は異世界に行きます!