ツンデレ彼女×後輩彼氏(仮) 1図書館
今回は純粋な恋愛小説です。
短いですが、その分見やすくなっていると思います!
俺の彼女の小春さんは、一つ上の先輩であり受験生だ。一緒に勉強したいけれど2年生の俺が3年生の範囲を分かるはずがない。二人で、放課後の学校図書館に勉強に来たはいいものの、場所もあいまって話すことができないままお預けを食らっていた。
( そろそろ顔あげてくれないかな……)
適当に棚から取った興味の無い小説を読みつつ、そんな事を考えているから一向にページが進まない。
顔をあげて彼女を見つめても、本人は俺の目線に気づかず、ひたすら問題を見つめていた。彼女は俺よりよほど問題の方が好きみたいだ。
でもしょうがない。彼女は受験生だから。
(しょうがない……よね?)
行き場のないモヤっとした気持ちが俺の頭を悩ませた。
彼女は基本スラスラと問題を解くが、今日はその手が止まり、ペンをクルクルとせわしなく回していた。
そんな様子を、本をシールドにしてじっと見つめていると、彼女は肩に少しかかるくらいの髪を手でぐしゃっと掴んだ。
そして「うーん?」と首をひねった。
(行き詰まってるのかな……?)
思わず、彼女にゆっくりと手を伸ばす。
しかしその時、彼女が不意に顔を上げたので、慌てて手を引っ込めた。
(びっくりした……!)
まだ心臓がばくばくしている。
俺が罪悪感から不自然に笑顔をつくっていると、彼女が俺を不思議そうに見て「あっ」と気がつき、こんなことを小声で耳打ちしてきた。
「裕太、その本逆になってるよ?」
その瞬間、優しい声とともにふわっと彼女の甘い匂いが鼻をくすぐった。もう一度手を伸ばして、さっきの彼女のように耳元でささやく。
「本より、小春さんの方が気になって。」
「っ!?」
彼女が慌てて身を引いたので、昼休みよりも随分静かな放課後の図書館にガタンと椅子を引く音が響いてしまった。
何人かがちらりと振り向いたので、俺たちは2人そろってあわてて多方面にペコペコ頭をさげる。
周りの人たちは幸いにもその事をそれほど気にしていない様子で、怒られることはなかったが、小春さんは自分がした事なのに何故かオレを怒ったのだ。
「もう、裕太が変なこと言うから!」
「小春さん真っ赤だ、可愛い。」
「う、うるさい。邪魔しないでって言ったよね!」
小春さんはムスッとして、「もう知らない」と目も合わせてくれなくなってしまった。
ムスッとした顔も可愛いんだよな……
怒られているのにそんなことばかり考えていたから、またまた怒られた。
「反省してないでしょ。」
「いやいや、してますよ。ごめんなさい。」
「気持ちがこもってない!」
「小春さん可愛い……」
「ほら反省していないじゃん!」
小春さんはリンゴのように顔を赤らめながら、「もう」と頬を膨らませた。
そう言われても俺が彼女を好きになったのは、そうやって照れたのを隠すように怒る姿が可愛いと思ったからだ。
そして怒る彼女を見ると、俺の中に眠っているイタズラ心が刺激される。
俺はガタンと、席を立って彼女にこう言った。
「そんなに俺が邪魔ならもう先に帰ります。」
「えっ、いや、そこまで言って無……」
持っていた本を近くの棚になおして、横の椅子に置いていた自分のスクールバッグを手に持った。
「ではまた明日」
椅子を元の位置になおし、彼女に一礼してその場を立ち去ろうとしたときだった。
「待って。分かった。かまってあげるから、一緒に帰ろう?」
彼女は俺の手をガシっと掴んで、上目遣いでそうつぶやいた。彼女をの赤面は益々ひどくなり、美味しいけれど辛い唐辛子の様に赤くなっていた。
(相変わらずチョロ…)
彼女はそうするだろうと思ったが、やはりこの上目遣いは何回見てもなれるものではない。彼女は背が低いからよく上目遣いをするが、この状況でのそれは心臓を掴まれる。
(ホントこの人可愛すぎ…)
胸にこみ上げるものを、唇を噛んでぐぐっと押し込めた。
「しかし、もう帰るんですか? 勉強は?」
こんな時にもイタズラ心がおさまらないので友達から性格悪いと言われるのかもしれない。
「っと、それは……」
彼女の赤面はもう爆発寸前だった。
「これから……行ってもいい?」
「え?」
「だから! これから裕太の家に行ってもいい!?」
ボンッと爆発した音が、聞こえた気がした。
俺の手を掴んだ彼女の手がかすかに震えている。
「へへ、勿論いいですよ。」
俺は思わず緩んだ顔で、彼女の髪をくしゃくしゃっと撫で回した。
多分今、俺の顔は誰よりも笑顔で幸せに溢れていると思う。
最後までありがとうございました!
こういうカップルに言いたい。末永く爆発しろ。