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NONEED(仮)  作者: 冬陽光
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1話

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第一話


ガタガタと馬車の車輪は音をたて、開けた街道を進んでいく。

少年は馬車の窓から過ぎていく外の景色を眺めながら、故郷の村で過ごした日々と、残してきてしまった人達の顔を思い出していた。

黙って家を出てきてしまったので、両親にはきっと、ひどく怒られるだろうが、きちんと話したところで、ただでさえひ弱な少年が一人で王都に行くことを許して貰えたとは考えにくい。


だが、彼にはそこに行かなければならない理由があった。


「黙って置いて行くなんて・・・酷すぎるだろ」


自分のことを思っての行動であることはわかっている。しかし、このまま何も出来ずに村でじっとしているなんて出来ない。

彼女の力になる。あの時そう決めたのだ。


硬い荷馬車の椅子の上で長い時間座っていたので体はあちこち痛かったが、目的地が遠くに見えるに連れて気持ちが高まり、痛みも気にならなくなっていた。


馬車が止まり、御者が声を張り上げて目的地に着いたことを告げる。



馬車を降り、高く登った日差しと馬車の中との明暗差に目を細める


「すごい・・・・」


眼前に広がるのは、都市を覆う身の丈の5倍はあろうかという堅牢な石壁と、そこの門を行き交う大勢の人々。

故郷の祭りでも見たことがないほどの人の往来に気持ちが高まるが、ここに来た目的を忘れたわけではない。

浮かれた気持ちを罰すように、軽く両頬を叩いて気持ちを入れ直す。


「さーて、行くか!」



〜〜~~王都ヴィロード〜〜~~



王都には南北に巨大な門があり、それ以外に入り口はない。

ちょうど行商人達が行き交う時間にぶつかってしまったようで、門には長い列が出来ていた。

商売人の数が集まれば、ただの順番待ちといえど貴重な機会なようでそれぞれに商談や情報交換を始めている。


「北の森への街道にオーガが出たらしい」

「それじゃあしばらくあの道は使えねぇな」


「また魔族の襲撃があったそうだな、、」

「それじゃあ北の蒸留酒は品薄になりそうだな。今の内買い貯めておくか。」

「しかし、また魔族の話をよく聞くようになってきたな、、厄介なことだ。」



しばらく周りの話し声に耳を傾けているうちに、順番が回って来たようだ。

たくましい筋肉に金属鎧を纏った門番が手を突き出す。


「身分証を確認する。こちらに。 名前と歳。それと、来訪の目的は?」


「メーギ村から来ました。ベゼル・ギュフーイ。14歳です。」


名乗りつつ身分証を差し出す。


「メーギか。ずいぶんと遠いな。出稼ぎか?」


「はい、そんなところです。それと、人探しを」


「王都で人探しとは難儀なこった。せいぜい頑張りな。ーーーはい。身分証は返すよ。」


「ありがとうございます!

それじゃあ ーーあ、すみません。

ちょっと教えて頂きたいんですが、王立騎士学校ってここからどう行ったらいいですか?」



「ああ、そんなことか。それならーーー」



見た目に似合わず親切な兵士のおかげで、目的地の場所も分かった。あとは彼女を見つけるだけだ。


王都の街は村とは比べ物にならないほど整っていて、床に敷き詰められた石は整然と並び、真っ直ぐ伸びた道の先にはそびえ立つ城が見える。

経験したことのない人の多さに圧倒されつつ、ベゼルは王立騎士学校を目指す。


騎士学校は想像以上にすぐに見つかったが、その規模も想像を超えていた。


「これが、学校・・・ こんな立派なところに入学したのか」


塀で囲まれた範囲は小さな村ならすっぽり入ってしまいそうなほどの広さで、中にいくつか建物が見える。建物に圧倒されてしまったが、目的は観光ではない。おそらく正門であろう大きな門に近づくと、皮鎧をまとった男に止められた。


「少年。ここは部外者立ち入り禁止だ。  その格好じゃあ入学志願者ってわけでもなさそうだし。何の用だ?」


「人に会いに来たんです。ユリィって女の子。この学校にいるはずなんだけど、知りませんか?」


「そんな奴は知らんな。悪いが子供とは言え不審者が門の周りをうろついてると俺がドヤされる。とっとと消えてくれ。」



「え、、、そんな!」


「何の紹介もない部外者を学内に入れるわけにはいかん。そんなに会いたい奴がいるなら面会状でも持ってこい。

俺も仕事なんでな、あんまりしつこいようなら、、、」


そういって兵士は腰にあった剣に手をかける。

一瞬強硬突破も頭をよぎったが、ここは騎士学校だ。突破できても先にまた兵士がいることは間違いないだろう。ここは引き下がるしか無い。


「わかりました・・・」


去り際にもう一度学校を見渡すが、建物はすべて塀に囲まれていて侵入出来そうなところは無い。


「なんだよ。あの門番、ちょっとくらい入れてくれたって良いのに。

こうなったら入口に張ってユリィが出てくるのを待つしか無いかなぁ。ただ、出入り口を見張るなら準備も要るし・・・仕方ない。もう一個の方に先に行くか」


ユリィを見つけるのは上手くは運ばなかったが、ベゼルの足取りは軽い。

王都ではまだまだ、やりたいことが多くあるのだ。ここで立ち止まってはいられない。



ーー2話ーー

テイムの条件


ベゼルが王都に来た目的は2つある。

一つは自分を村に置いて、王都の騎士学校に入学してしまった友人ユリィを見つけること。

そしてもう一つは、王都でテイマーとしての技能を身に着けることだ。


この世には程度の差はあれど、ほぼ全ての生き物が扱えるマナという力がある。

世界に漂う魔素を体内で変換し様々な現象を引き起こす超常の力。

人族の歴史はまさしくこのマナの活用と共に進歩してきた。

マナは人に限らず、どんな生き物の中にも存在し、生きるために必要なエネルギーの一つだ。

特に人においては、魔法によって火を起こす、水を清潔にするといった生活に必要なものはもちろん、魔物から自分たちの身を守る自衛手段という意味でも重要な役割を担っている。


しかし、ベゼルはこのマナが使えない。


厳密には使えないわけでないのだが、体の中にあるマナがそういったことに使えるレベルに達していないのだ。

原因はマナ障害というもので、生まれた時からのものらしい。周りの人より体のなかで生成できるマナの量が圧倒的に少ないのだ。


ただ生きているだけであればそれほどの問題は無いが、マナを用いて特殊な現象を起こす「魔法」や、冒険者のように身体を強化することができない。


村で静かに農業でも営んでいれば、それほど困るものではなかったのだが

彼には戦えなくてはいけない理由があった。否、戦おうとする者の隣に居たいという願いがあった。


そんな彼が見出した希望の光、それがテイマーだった。


旅の商人から聞いた、魔物を使役し共に戦うもの。

それであれば、自分も彼女の隣に居られるのではないか?

ーーーベゼルはそう考え、時折村に訪れる商人や、冒険者を質問攻めにしてこの王都にテイマーの訓練施設があることを突き止めたのだ。



~~テイマー職業訓練場~~


テイマーの訓練場は町のはずれの通りに面した場所にあり、入口には大きな魔物舎があり、タートル種やリザード種の魔物が停まっている。

魔物がおとなしく餌を食べているのが何とも不思議で思わず近寄ると、リザードの魔物が「「ギシャ!!」」と声を上げて威嚇きた。


「うわぉっ!! ぉーー怖ぁ・・・」


村の外で何度かみかけることはあっても遠巻きでみるだけだったのでこれほど近くに魔物をみるのはそうそう無いのだ。田舎者っぽいかも知れんが、やらずにはいられない。


「あっはっはっ」


建物の入り口の方から笑い声が聞こえてきた。

茶髪の・・・歳は20歳過ぎくらいだろうか。青年が訓練所の入り口からこちらを見ている。


「魔物が珍しいか?少年。テイマー志望で来たのかな?」


「今の見られてましたよね…恥ずかしいな、、、 はい。ここに来ればテイマーになれるって聞いてきたんです。」


「気持ちはわかるよ!僕も最初は似たようなことやったなって、君見てたら懐かしくなっちゃった。君みたいな歳の人はちょっと珍しいけど、魔物の扱いはそれほど難しい技能ではないし、すぐに一人前になれると思うよ!

僕はここで指導官やってるノーバスっていいます。よろしくね。」


「ベゼルです。頑張ります!」


「じゃ、ベゼル君。中で申し込みとかいろいろ済ませよう。あと今日はこれから時間ある?

僕の講義があるんだ。簡単な座学だし、良ければ受けていってよ。」


テイマー職業訓練所の申し込みは身分証の提示さえできれば、ごくごく簡単なものだった。

入学金のようなものが必要なのではと考えていたのだが、どうやらそれは必要無く、

卒業生がテイマーになった後に斡旋される仕事の報酬の一部を天引きすることによって、運営費を賄っているらしい。


登録が終わると座学を行うということで、机の沢山置かれた部屋に通された。すでに他の受講者も席についている。

周りをみると、自分のような子供はあまりおらず、年齢も30~40そこそこのどことなく疲れた表情の男が多いような印象を受ける。


「ちなみにベゼル君。字は読める?このテキスト渡しておくけど、わからないところがあったら言ってね」


ノーバスはそう言って本を手渡すと、教壇の方に歩いて行った。


「それではみなさん。講義を始めたいと思います。これから立派なテイマーになっていただくため、重要な内容が沢山含まれたた講義になってますので、聞き逃しの無いようお願いしますね!」


ベゼルは同じ年の田舎出身の者としては珍しく、字の読み書きができる。

村でユリィが同年代の子供たちに読み書きを教えてくれていたためだ。


テキストを開くと、王都近郊の地図と道の特性、通行のルールなどが記載されている。

本来、講義に集中しなくてはいけないのだが、ここに来たそもそもの目的は戦う能力を身に着けることだ。出来るだけ早くその情報に触れたい。


「魔物のテイムの仕方とか、戦闘とかの項目はっと・・・・」


ひとしきりテキストを見回したが・・・・無い。

唯一それらしい項目が見つかったが


”魔物の管理の仕方”

騎乗魔物は穏やかに品種改良がされており、滅多に人を襲うなどのことはありませんが

その力自体は非常に危険なもののため、取り扱いには細心の注意が必要です。


基本的にはパスがつながっている魔物は、テイマーからのマナを供給受けそれを栄養源としますが、テイマー自身の体調などで賄い切れないこともあります。

マナが枯渇した魔物はそれを補うために凶暴化することがあります。

防止のため、エサにはマナを多く含んだ高山地域の草や果実を定期的に与えてあげましょう。


「・・・・あれ?」


ここにきて、なんとなく感じていた違和感があふれ出していく。

だめだ、このままではユリィの隣に立つことが遠のいていく・・・


「それでは今回の講義はお終いです。次回は王都周辺の交通網と各街道の通行料について説明していきますので、みなさんきちんと参加してくださいね!」


混乱しているうちに講義も終わってしまったようだ。講義を受けていた生徒たちがぞろぞろと退出していく。


急いで立ち上がり、部屋を出ていくノーバスに駆け寄っていく。


「ノーバスさん!!」


「お、さっそく質問か。勉強熱心でいいね! どこがわからなかった?」


「あの、、、、ここってテイマーの訓練場ですよね?」


「そうだよ?」


「魔物のテイムの仕方って教えて貰えるんですか?」


「テイムを自分でやることはまずないね。ブリーダーが生まれた時からテイムしている魔物から、テイマーとしての契約を移譲する形になることがほとんどだよ。 それに自分で野生の魔物をテイムするのはすごく危ないしね。」


「え、、、じゃあ、魔物と一緒に戦うなんて、、、」


「ベゼル君もしかして、テイマーの仕事を勘違いしてない? 

僕らテイマーの仕事は、普通の馬なんかじゃ長すぎる距離や走れない道を騎乗魔物で移動する。いわば国民の足のような存在だ。騎乗用の魔物は温厚なものに品種改良を受けてるから、道で他の魔物に出会ったら戦うどころか逃げ出すように教えるもんさ。

・・・それに、そもそも魔物がなぜ人間のテイムを受けるのか考えたことあるかい?」



「無い・・・です。」


そんなこと、今まで考えたことも無い。

魔物をテイム出来る人たちがいて、特別な魔法か道具で魔物を使役しているーー程度の認識しかなかった。



「使役される魔物は、契約者のマナを目当てに契約を受ける。

魔物だって、自分たちが生きるためには狩りをしたり、戦ったりしなきゃいけないので、無条件で契約者からマナを受け取り、狩りをしなくても生きていけるのは効率が良い。

それに、魔物の方が人間よりもその場所のマナの濃い薄いの影響を受けやすいので、

どんな場所にいても人間から適量のマナを受け取れれば行動出来る範囲も広がる。


ただ、これは基本的に与える側の人間が魔物よりも多いマナを持ってるときに成立するお話だね。


大抵の人間が持ってるマナは魔物よりも少ないよ。というか、普通の人間より少ないマナの魔物なんて生まれたてのスライムくらいなものだし、、

テイム出来たあとで、成体まで成長してしまったらコントロールも難しいだろうね。


冒険者なんかで時々、戦闘用の魔物を連れている人もいるけど、それはさっき言った、その人のマナが魔物を超えているってことだろうから、そういうことがしたければ、まずは自分の力をつけるのが先になると思うよ。」



ノーバスの話の最後の方はほとんど頭に入って来ておらず、ベゼルは今まで縋っていた希望がの光が絶たれた絶望に頭を埋め尽くされていた。


ノーバスがベゼルの肩を叩きながら言う。


「だから、ベゼル君の希望なら冒険者として経験を積むのが良いんじゃないかな?

正直、君の年齢の子に冒険者を進めるのはどうかと思うけど、、、

戦闘の経験を積むならあれ以上の職業は無いからね。ギルドの場所は教えてあげられるよ?」


ほぼ思考停止状態の頭で、何とか返答をする


「そう、、、ですか、、、どうも、、  でも、今日は一旦帰ります・・・・。」


とぼとぼと訓練所を出たころにはもう日が暮れかかっていた。


行きすがらに道の露店で安物のローブとパンを少し買い、ローブを纏ってまた騎士学校の門の前に来る。

姿が違うので、まだ昼間の門番にはバレていないようだがここでずっと立っていては怪しまれてしまうので、門から少し離れた民家の影から見張ることにする。



日も暮れ、だいぶ暗くなってきた。

徐々に見えるものは学校の建物の明かりだけになっていく。

パンを齧りながらしばらくの間、門を見張っていたが、校門にはそもそもそれほど人の通りが無いようで、ほとんど人が通らない。

夜になれば家に帰る者もいるのでは?と思ったのだが、どうやら明かりの見える建物は敷地内の宿舎のようで、家に帰るために門を通る学生も居ない。


夜も更けてきたので、そろそろ自分の宿を探さなくては。そう思って後ろに振り返ると


「ーーーここで君は何をみていたのかな?」


自分と同じくローブを纏った男が、こちらを笑顔で見つめていた。



ーー第三話ーー


予想外の状況に慌てて、ベゼルは答えに詰まる。


「あの、人を・・・探していて・・」


男は騎士のようだった。ローブの隙間から鎧が見えた鎧が夜の光を反射して

その鎧が質の良いものであることを物語っていた。


「ほう。探し人は騎士学校の生徒なのかな?力になれるかもしれん。名前を聞こう。」


「ユリィ、、ユリィ・エイワズっていう子です。最近ここに来た。」


「ユリィか・・・女の子のような名前だね。して、君の名前は?」


「ベゼルです。ベゼル・ギュフーイ メーギの村出身です。」


「歳は・・・16か?」


「いえ、14歳です。ユリィの方が年上なんです。」


「そうか。私はエイデン・ウィルワイズ。王の近衛兵隊の一員だ。騎士学校には時々剣術指南として来ていてね。ーー立ち話もなんだから、中で話さないか?王都の夜は冷える。」


「ありがとうございます。お願いします。」



~~王国立騎士学校 食堂~~


門を通る際に、先ほどの兵士が少し不審そうな顔をしたがエイデンが話を通してくれたようで、無事に中に入ること出来た。


通されたのは建物内の食堂のような場所で、夜になりもう人の気配も明かりもなくなっていた。


「飲み物はーー酒は飲めるか?いや、ダメか。 ミルクがあったかな・・・」


酒とミルク、それにランプをテーブルに置くと、さっそく一口酒を煽ってエイデンが話し始めた。食堂は暗かったがランプの明かりが二人を照らし、ほのかに温かさも感じる。


「それで、君の探してるーーーユリィ君か。どんな子だったか教えてくれるかい?」


「俺と同じ、たぶん1ヵ月前くらいにメーギ村から来た女の子です。

村に来た兵士からこの学校の推薦状を貰ってたみたいで、、、

剣も強くて、、優しくて、、勇気があって、、えっと。

髪は黒髪で長さは肩くらいで、一つに束ねてました、、、背は俺より少し高くて、、それから、、」


ベゼルは必死に自分の言える情報のありったけをエイデンに伝えようとする。

最初は少し落ち着いていたが、ユリィについて思い出すほどのどんどんと冷静さを失い、あと次から次へととりとめの無い話が出てきてしまう。

しばらくベゼルの話に耳を傾けていたエイデンが静かに口を開く。


「スカウトか。そいつは優秀だな・・・。 しかし、そんなに優秀な、しかもここでは珍しい女子生徒が居たのなら私も気がつくと思うが・・・この学校の推薦状を持っていたことは間違いないんだね?」


「はい。確かに王立騎士学校の推薦状でした・・・」


顎に手を当ててエイデンが考え込む。


「ふーむ、、 これも何かの縁だ。少し調べてみよう、、時にベゼル君。出稼ぎなどではなく人探しに来たということは、君の身元を引き受けてくれる先は決まって無いのかな?」


「そうですね。一人で黙ってここまで来てしまったので、、」


「そうか、では私は少しそのユリィという子について調べてみることする。

君は今日王都に来たのなら、旅の疲れもたまっていることだろう。今晩はここの寮に泊まると良い。管理人には私から話をつけよう。」


それはベゼルには願ってもない提案だ。旅費もそれほど持って来たわけではないので、最悪、宿や料亭などに住み込みで働かせてもらうことも考えていた。


「本当ですか? 助かります! でも・・・どうして?」


「なに。本来この学校は君のような頼る場所の無い子供が、安心して暮らせるようにと作られた学校だったのさ。これが本来の在り方というものだ。

ただ、治めるものが変われば方針も変わってしまったようだがね。

それに、君のような少年が一人でうろつくには、王都の夜の闇は深すぎる。」


うつむきながらそうこぼしたエイデンの瞳は、ランプの明かりの届かない食堂の影の、更にその先を見つめているようだった。




――――――――――――――

ベゼルが与えられた部屋は質素だがとても快適で、翌日までぐっすりと眠ることができた。

知らないうちにずいぶんと疲れが貯まっていたようで、目が覚めたころにはすでに学校の生徒たちの訓練が始まっているようだった。

寮の窓から広場で稽古をしている生徒たちが見える。

昨日のエイデンの話から、ここにユリィが居ないということはわかっていたが、それでもどこかに居ないかと探してしまう。


コンコンとドアのノックの音が響く。


「おい少年。えーっとベゼル君だっけ?そろそろ起きたかい?ちょっと手伝ってほしいんだが。」


「あ、は-いっ! 起きてます!」


昨日、ただ泊めてもらうのは申し訳ないので何か手伝えることが無いかとベゼルから申し出たところ、エイデンからはこの宿舎の雑用の手伝い依頼されていた。


「それじゃあ、朝の食事の皿洗いと、洗濯したものを干しといてもらえるかな。

他にも何人か最近入った君と歳の近い手伝いもいるから、やり方はその子らに聞いといてくれれば良いから」


そう言って管理人はベゼルを食堂の裏まで案内すると、忙しそうに去っていった。



洗い場に3人ほどの少年たちが作業をしている。歳はベゼルとそれほど変わりなさそうだ。

そのうちの一人の少年がこちらに近寄ってくる。肌は浅黒く、こちらの地域の出自ではなさそうだ。雰囲気としてはこの洗い場の3人の中ではガキ大将のようで、こちらを見る瞳にはベゼルに対する興味が見て取れる。


「よろしくな新入り。俺はモーリス。奥にいる丸いのがフォランと、そこの小さいのがメータ」


「俺はベゼル。よろしくね。モーリス。」


「しっかし、ベゼルは孤児って感じじゃねぇな?どっから来た??」


孤児という言葉にベゼルは一瞬戸惑ったが、

昨日のエイデンとの話を思い出して納得する。


「メーギの村から。人を探してて、、ユリィって女の子。この学校に居たはずなんだけど、知らない?」


「ユリィ・・・知らねぇなぁ、、 おいお前ら!ユリィって女見たことあるか?」


「知らねぇーなぁー」


「オイラもしーらないっ」


モーラスが後ろに声を張り上げて聞くが、芳しい反応はない。


「悪いな。俺らはここの生徒じゃねぇし、来てからそんなに長いわけでもねぇ。お前の力にはなれねぇみたいだ。」


「いや、、ありがとう。その気持ちだけで嬉しいよ。じゃあ、早速だけど何からやればいいのかな?」


ベゼルもそれなりに村で家事はしてきたので自信はあったのだが、彼らはこの作業をかなりやり込んでいるのであろう。

手際の良さは段違いで、テキパキと仕事を片付けて行く。

ベゼルはついて行くので精一杯で、仕事が終わる昼過ぎには意識が朦朧とし始めていた。


「よーし!作業はここまで!俺らの飯にしよう!」


モーリスが声をかけながら、庭に干された大量の洗濯物のよこで、どこからかもって来た包みを広げだした。

包みの中は塩漬けの肉や、切った野菜をパンで挟んだシンプルな料理だったが労働後の食事は格別だ。


「うん。うめぇうめぇ。このために生きてるって感じするぜ」


「うーん。スラムじゃマトモな飯も食えなかったし、ここに拾われて、俺たちはついてたよなぁー」


モーリス達もがっついている。


「ねぇねぇベゼル。そのユリィって子はどんな子なの?オイラすげー気になるなー」


メータが口をもぐもぐさせながら尋ねてきた。他の3人も興味があるようで、一瞬皆の動きが止まる。


「そうだなぁ、、ユリィはすごい強くて、優しくて、、」


それでいて、どこが儚げな少女の話をベゼルは懐かしそうに語った。


初めて会った時の話や、仕掛けたイタズラをことごとく潰された話。森で2人で迷子になった時や、村がオーガに襲われた時のユリィの活躍の話には4人とも身を乗り出して聞いていた。


「すげぇじゃねぇか!そのユリィってやつ!」


「オイラも会ってみたい!!」


「っていうか、ベゼル、お前ユリィに助けられてばっかで情けなくねぇか??」


そう言って3人は笑い転げている。


そうなのだ。間違いなくベゼルはユリィに助けられ続けている。

だから、このままではダメなのだ。

なんとしても、彼女の横に立つ資格を。力を持たなくてはいけない。

例えば、ここで生徒達が学んでいる剣術のような、、、


「そういえば、みんなは何か剣術の訓練はしないの?」


そう聞くと、3人は少しバツの悪そうな顔をして答える。


「オイラ達は生徒さん達と違って、学費を払ってるわけじゃないからね。

たまーに、エイデンさんが稽古をつけてくれることがあるよ!」


「まぁ、スラムから出してもらって、飯が食えてるだけで儲けもんってことだねぇー」


「時々、ここじゃない学校にに連れてって貰えるヤツもいるけどな」


「あぁー。ゼリスはラッキーだったよなぁー学校長からの推薦なんて。あいつ、もしかしたら騎士とかになんのかなぁー。いいなぁー」


フォランがそうこぼすと、3人ともため息を漏らす。ベゼルも自分が騎士になれる可能性が米粒程も無いことに思いを馳せ、同じようにため息をついていた。


「おい。そこのネズミども。僕らが必死に訓練をしている間に、仕事をサボって談笑とはずいぶんいい身分じゃないか。」


「セルバス・・・お前何しに来た」


セルバスと呼ばれた少年は、ここの生徒のようで、騎士学校の制服に手には訓練用の木剣を携えている。金髪に通った鼻筋の整った顔をしているが、その目は侮蔑と嘲笑の色に染まってい歪んだ光を放っているかのようだ。


「なに、暇ならちょっと僕の稽古に付き合って貰おうと思ってね。薄汚い犯罪者を懲らしめるのも、騎士の大事な役目だから。なぁ?みんな。」


セルバスの後ろには遠巻きでこちらを見ている生徒たちが何人かおり、みんな一様にこちらを見てニヤニヤと笑っている。


「オイラたちは犯罪者じゃない・・・」


メータが消え入りそうな声で反論する。


「僕に口答えするなァッ!!」


セルバスが手に持っていた訓練用の木剣を振り回すとヒッと小さく声を上げて、メーターがベゼルの後ろに隠れた。


「お前らみたいな、ネズミ供が犯罪者になるのは、遅いか早いかの違いしか無いんだよ!」


「俺らは犯罪者でもねぇしネズミでもねぇ。お前の稽古に俺らが付き合う理由はねぇよ。一人で勝手にやれ」


モーリスは相手を睨みつけたまま動かない。


「別に僕は初めから一人で稽古するつもりさ。だって、わざわざ木偶人形に叩いていいか聞く奴なんていないだろッ!!」


言いながらセルバスは剣を振りかかると、モーリスが横っ飛びでそれを躱す。

セルバスは一太刀目を避けられても、体勢を立て直し立て続けに何度も斬りかかるが、モーリスはそれをなんとか避け続けている。


過去のスラムの経験が活きているのか、

訓練をしているセルバスはともかく、モーリスが想像以上に動けていることに驚きながら

ベゼルは悩んでいた。


今モーリスに加勢することは出来るが、それを初めてしまえば、ここにいる全員を巻き込む大事になってしまう。

かといって、相手は武器を持っている。このまま続けるのは危険だ。


「はぁっ、、くそっ、、ネズミが、、、」


「はぁ、、はぁ、、皿洗い一人倒せなくて、騎士様が務まるもんかね?」


「こいつ、、よくもッ!」


しびれを切らしたセルバスが剣で地面を切りつける。とんだ礫と土がモーリスの顔にあたり、一瞬動きが止まる。


「貰ったッ!」


モーリスに向けてセルバスが切りかかった瞬間、二人の間に飛び出したベゼルの頭部をセルバスの木剣が打ち抜き、頭を強打されたベゼルは意識を失いその場に倒れた・・・



ーーー


ベゼルの意識が戻ったのは夕方に差し掛かった頃で、貸し与えられた寮のベッドで目を覚ますと横にはエイデンが座っていた。


「ん、、エイデン、、さん」


「おぉ。目が覚めたか。医療係が特段問題は無いと言ってはいたが、よかったよかった。体はどうかね?」


「大丈夫そうです。体の丈夫さは自信あるので、、 看病して頂いてたんですか?

すみません。ご迷惑をおかけして・・・」


「いやいや、こちらこそ迷惑をかけた。この寮のことは私から申し出たにも関わらず、君にケガをさせてしまうとは。本当に申し訳ない。」


「みんなは、、あの後モーリスはどうなったんですか?」


「君が倒れた時にちょうど教師が来たようでね。生徒たちも引っ込んだらしい。そのあとモーリスが君を医務室まで連れて行ったそうだ。」


「そうですか、みんなが無事で良かった、、あの、、セルバスという生徒のことは?」


「一応、教師から指導をしておくとは聴いたが・・・全く情けないことだが、ほとんどお咎めなしというのが現実だろう。」


「そんな・・・なんでですか? あっちからけしかけてきた揉め事ですよ?」


「それもわかっている。たが、彼もあれで名家の出でな。今のこの学校はそれを優先する。残念ながら門外漢である私に出来ることは少ない。長の方針一つでこうも変わってしまうとはな・・・」


「そう、、ですか、、」


セルバスとモーリスのやり取りから、今日のような出来事は度々起きている事のように見えた。3人の日々の生活を思うと、ベゼルはやり場の無い怒りが湧いてくる。


「ところで、君の言っていたユリィという女の子なんだが。」


ーーーー


「何かわかったんですか!?」


ベゼルは身を乗り出してエイデンに詰め寄る。


「あぁ、その子だが。確かにこの学校へ招待していたようだ。入学手続きも済ませている。しかし、どうやら入学初日から学校にきておらず、行方不明になっているようだ。」


「初日から行方不明・・・ですか。」


通りで誰もユリィのことを知らなかったわけだ。しかし、彼女はどこに向かったのか。


「そこから先は何も情報が無いんだ。なにせ王都は広い。ここから手がかり無しで少女一人を探すのは至難の技だ。

どこか彼女の行きそうなところに心当たりは無いか?君にはケガをさせてしまったこともある。せめて、その女の子が見つかるまでは協力させて欲しい。」


「行きそうな場所・・・ユリィはいつも、どうしたら強くなれるかを考えてました。この学校に来たのもそれが目的だと思うし・・」


エイデンは俯きながら顎に触れ呟く。


「確かに王国中探しても、子供がここ以上に剣術を学べる場所はそう無いだろうな。

しかし、ここ以上に力をつけるとなると、、、ん?いや、まさか、16の女の子がな・・・」


「エイデンさん、何か心当たりがあるんですか?」


「いや・・まさかとは思うが、冒険者ギルドに行ったのではと思ってな。

技術はともかく、経験であればあそこで依頼を受けるのが最も早い。だが、仮にそれを考えたとしても若い女の子が実行に移すとは到底・・・」


「そこです! ユリィはそういうヤツなんです!!

俺、ちょっと言って来ます。エイデンさんありがとうございます!!」


そう言うが早いか、ベゼルはベットから飛び起きて走り出す。新しい光が見えた以上、少しでも早くユリィに会いたいという気持ちがはやって身体を突き動かす。


冒険者ギルドの大まかな場所は、以前テイマー訓練所でノーバスから聞いていたので、なんとか迷わずに着くことが出来た。



ついた頃にはすっかり日も暮れていて、

ギルド会館の周りは所々の店から酒場のあかりと人の喧騒が漏れていた。



〜〜ヴィローダ 冒険者ギルド会館 〜〜



冒険者はベゼルの村にも何度か訪れていたので、その風貌や性質はなんとなく知っている。ギルドからの依頼を受け魔物を倒したり、その素材を売ることで生計を立てている者達だ。


ただ、依頼の内容はかなり幅広く、郊外の山から薬草を取ってくる雑用のようなものから、危険地域での要人の警護まで様々だ。


ただ、どんな冒険者にも共通して言えることは、相手は様々だが冒険者である以上、依頼遂行中の戦闘は避けて通ることが出来ず、(生き残っているものは)全員が何かしらの武器や魔法といった戦闘技術の扱いに長けている。ということだ。


当然中には喧嘩っ早い者もいたりするわけで、非冒険者から見ると、話は通じるが、ものによっては魔物のように危険な存在でもある。



ギルドのドアを押し開けて中に入ると、

ギルド会館は酒場の機能も持っているようで、中で食事をとっている者も多い。

皆がそれぞれに自分の狩った獲物や武勇伝の自慢をしている。


「いやー見せてやりたかったよ俺の勇姿を!」

「何が勇姿だよ!ゴブリンメイジ追い回してただけじゃないか」

「うるせぇ!お前だってオークに不意打ちバレて反撃されて泣きべそだったじゃねぇか!

わははははっ」


「やっぱ勝利の美酒はギルドワインに限るよなぁ。」

「たまにはギルドの安物じゃなくて、もっといい酒を飲みたいもんだが、舌の貧しい俺らにはこれがお似合いか。がっはっはっ」



ここで夜に酒を飲めているということが、ある種依頼を成功した(死なずに帰った)ステータスであるのだが、ベゼルがそんなことに考えが及ぶはずもなく冒険者達の喧騒に少し居心地の悪さを感じながら、そそくさと受付らしき場所を目指した。


冒険者ギルドのカウンターには若い女性の受付が立っており、並んだ冒険者達が依頼の報告などを行なっている。


「こんばんはー!あら、珍しくとっても若いお客さんですね。登録ですか?」


「いえ、登録では無くて人を探してるんです、、」


「人探しのご依頼ですね!依頼料は小銀貨8枚から状況に合わせてご相談となりますが・・・」


「あ、いえ、多分、冒険者の人を探してまして・・・ここにユリィって女の子来てませんか?」


「冒険者のユリィ、、さんですか。ちょっと確認しますね!

ーーーはい!登録ございますね。比較的最近ご登録頂いた方みたいですね。」


「本当ですか!!」


やった!やっと見つけた!ユリィに会える!

少し泣きそうになりそうな感情を抑えて、ベゼルは次の言葉を吐き出す。


「そ、、それで、ユリィはどこに?」


「現在、依頼対応中みたいですね。

こちらの依頼ですが、想定対応期間が1ヵ月ほどなので、おそらく戻ってくるのはあと2週間前後かかると思われます。」


「2週間・・・か」


手がかりを見つけた喜びの反動で、2週間日という期間がとてつも長く感じる。


「戻られましたら、ユリィさんに何かご伝言をお伝えすることも出来ますよ?どうされますか?」


「あ、それじゃあベゼルが王立騎士学校に居るって・・・伝えて貰えますか?」


「畏まりました。きちんとお伝えさせて頂きます!ちなみに、騎士学校の生徒さんなんですか?

うちのギルドは武術系の学校の生徒さんにはその学校ランクによって、ギルドの登録料を免除と冒険者位階のボーナスがありますので。良ければ是非、登録していってくださいね!」


なんだか勘違いをされてしまったようで申し訳なく、訂正しておく。


「すみません。俺、学校の生徒では無いんです。居候みたいな感じで、、」


「あら。それは失礼しました。一般の登録料は銀貨3枚。位階は野兎級からのスタートですね。もし、今後ご興味があればお願いします!」


ベゼルが騎士学校の生徒では無いと知り、受付のお姉さんは少しだけ残念そうな表情を見せたが、そこはプロらしく満面の笑みで締めくくる。



「わかりました。ありがとうございます。」


家から持ち出して来た所持金は

銀貨4枚に小銀貨が6枚と銅貨が15枚ほど。


王都までの馬車で銀貨1枚と小銀貨4枚。

あと門に張り込んだ時に銅貨10枚でローブとパンを買ってしまったので、登録料はギリギリだ。そもそも、戦闘力の無いベゼルが冒険者ギルドに登録するメリットが無い。


しかし、だからといって憧れる気持ちがないわけでは無いのだ。


「どんな依頼があるのかなぁー・・・」


興味本位で依頼の掲示板を覗いて見ると、

様々な位階に別れた依頼が所狭しと貼られている。


位階は全部で6つ。


野兎級

狐級

雄鹿級

狼級

獅子級

竜級


ただ、掲示板には獅子の依頼はおろか、狼級の依頼もほとんどない。

そんな中、狐級の依頼の1つに目が止まる。


ーーーーーー

"薬草 ハーカイスの採取"

位階:狐級

条件:ティアフォール山の山頂付近に生える薬草ハーカイス10株の採集

報酬:金貨1枚 銀貨5枚

期間:緑晶の月の末まで

依頼者: 薬師 アルベル


備考:自分では取りに行けないハーカイスの採集をお願いしたい。マナ障害で苦しんでいる患者の治療のために使用する。状態の良いものについては別途報酬あり。

ーーーーーー


依頼内容に衝撃を受ける。

村では唯一の発症者でまともな情報もなかったマナ障害。一生付き合っていかなければならないと思っていたこの病に、治療法が存在したとは。

なんとしても、このアルベルという人に会いたい。テイマーの希望が断たれた今、ベゼルにとってはこの薬師が唯一の希望となった。


どうすればいい?どうすれば会える?

そう考えて俯いているうちに、顔を上げると目の前の依頼書が消えていた。


「あ、 あれ? あれっ??」


あたりを回すと、先ほどの依頼書を持った男がカウンターに近づいている。なんとかこの糸口を失いたく無い。そう思ったベゼルが男がカウンターに依頼書を出した時、自分でも全く想像していなかった言葉が思わず口から飛び出していた。


「あ、あのっ! その依頼、一緒に受けさせてくださいっ!!」


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