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第7回 恋したい

 早かった夏休みが明けると同時に、1つのニュースが飛び込んできた。

「「えええっ!!菅原とつきあうことになったー!?」」

 立花(はるか)と宮崎衣里の声が同時に重なって朝の廊下に響き渡る。

 それとは対照的に、小山亜美が人差し指を立てて慌ててしーっと制している。


「声が大きいよー・・・誰かに聞こえちゃうよー・・・」

「いつから!?」

 わくわくとして尋ねると、亜美は真っ赤になって顔を両手で押さえている。

「ほんとに最近だよ・・・?ハゲシマ行ってから話すようになって、それから・・・私もいいなって思うようになって・・・・・・こないだつきあわないかって言われた・・・」

「よかったじゃーん!おめでとー!」

 衣里も自分のことのように喜んでいる。

「でっでもね・・・・・」


 亜美が何か言いかけたとき、ちょうど廊下の向こうから今登校してきたばかりの男子3人組と目が合った。

 森下和樹と衣里。

 菅原翔太と亜美。

 立花(ゆう)とハルカの視線が絡み合い、


「なんや俺らだけのけもんやんけー!」

「すっごいむなしくなってきた・・・」

 ハルカとユウがぎゃーぎゃー騒いでいると、仲良く話そうとしていた衣里ともりしーがようやく2人の相手をする。

「うるさいなー。今いいとこなんだからちょっと静かにしててよ」


 さすがに何も言い返せなくなってしまい、助け舟を求めて亜美を見たが、そこでは彼女と菅原が初々しくお互いにおはようと言い合っている姿があった。

 おまけに、廊下の向こう側から高橋が同じクラスの女子と仲良く話しているのが見える。


 なんか・・・乗り遅れてる?


            ◇


「あーぁ・・・恋したいなぁ」

 誰に言うでもなくハルカはひとり言を言ってみる。

 しかし、すぐ傍にいた衣里に突っ込まれてしまった。

「何言ってんの。ハルカには立花君がいるじゃん」

「やめてよー。そんなん考えたことないしー、考えられないし」


 窓の外を見れば、バスケ部が活動しているのが見える。今日は外での活動らしい。

 隣ではサッカー部が活動している。そういえばサッカー部にかっこいい人がいると聞いたことがある。


 気がつけば、親友2人はすでに彼氏ができている。

 ハルカはまだ両想いというものを体験したことがなかった。


「もうすぐ文化祭だし、なんかいい出会いがあるかもよ?」

「文化祭〜?」

「ほらほら、この干物女に亜美ちゃんも何か言ってやってよ」

 今まで黙っていた亜美に話を振ると、亜美は今初めて気がついたようなリアクションでえっと驚いた。

「ごっごめん・・・!聞いてなかった」

「どうしたの?亜美ちゃん。せっかく彼氏とラブラブなのにー」

 だけど、衣里の言葉に、亜美はただ笑うだけだった。


            ◇


 その頃、部活の休憩の時間、ユウは水道で顔を洗っていると、隣の蛇口を使う誰かに気づいた。

「あ・・・高橋」

 彼も陸上部の休憩中らしい。肩にかけたタオルで汗を拭いている。


「よっ!もう怪我は治ったか?」

「とっくの昔に治ったで。まっ俺にかかりゃ、あんなもん()でもないわ」

「そーかい。そりゃよかった」

 軽く聞き流して、高橋は顔を洗い始める。

 それを見て、ユウは何か様子がおかしいことに気づいた。


「なー、立花」

「――?なんやねん」

「お前、好きなやついるか?」

「なにっ!お前、俺のこと好きなんか!?」

「違うから」


 ついノリで受け答えしてしまったが、ユウはとにかく質問の内容を頭の中で繰り返した。

 そこでようやく何を言われたのか理解する。

 ユウはあんまりこういう話は得意ではなかったが、高橋になら話してもいいような気がした。

「まぁ、好きなやつっちゅーか、前の学校でつきおうてる人はいた。自然消滅やったけどな」

「へぇ・・・」

「せやけど、もっぺん会ったらきっと好きになるわ」


 少し照れながら答えた言葉は、だんだん色づき始めた秋の空に消えた。

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